ブリッツ部マネージャーユウナ、ブリッツ部マネージャールールー、カモメ団生徒会リュック、ブリッツ部ティーダ、が出てくる学園パラレルなティユウ。
バレンタインのユウナ視点。
バレンタインのユウナ視点。
バレンタイン
三時間目の体育。体育館でバレーボールをリュックへレシーブで打ち返して気づいた。見慣れない山吹色の生地に白い花のレースがあしらわれていたシュシュで髪をまとめていた。
昼休み。ブリッツ部のみんなにバレンタインデーのチョコレートを渡しに行っている時に気づいた。見慣れない紫苑色の生地に白い花のレースがあしらわれていたシュシュを手首にはめている。おそらくリュックのものとは色違いだろう。
ブリッツ部員がいる次の教室へ向かう途中、ユウナは何気なしにルールーに訊ねた。
「そのシュシュどうしたの?」
「これ?」
ルールーは、シュシュをはめた腕を上げた。
「うん」
「これね、今朝ティーダからもらったよ」
「えっ」
前触れなしに挙がった名にどきりとする。
「ザナルカンドではバレンタインに男性から女性へ贈り物をするんだって」
「そう、なんだ……」
じゃあ、リュックもティーダからシュシュもらったんだよね。そんなこと一言も言ってなかった。
元気を失くすユウナにルールーは声をかける。
「いつもお世話になってるからって、玄関でリュックもいる時にひょいってくれたわよ。そうそう、なぜだか知らないけどユウナには内緒なって言ってた。おかしいわね、同じクラスなのに、渡す機会なんていくらでもあるはずなのに……」
ユウナ、リュック、ティーダのクラス前にやってくるとルールーはユウナにチョコレートを渡した。マネージャーから部員全員に渡しているうちの一つだ。同じクラスに部員はティーダの他にもいる。
「あの子のところに行ってきなさい」
ルールーに背中を押されて教室に入る。振り返ったルールーは黙って頷き、ユウナも頷き返した。
ルールーはなんでもお見通しっすね。やっぱり、お姉さんだな。
ユウナはクラスの男子と話しているティーダの側へ行き、チョコレートの包みをティーダに差し出した。
「俺?」
男子たちの会話は途切れ、ティーダは少し照れる。
「うん」
「おおーっ、いいなーユウナちゃんからのチョコレート!」
「ブリッツ部マネージャー一同から部員のみなさんへ」
と、言葉を添えてティーダに手渡す。
「どもッス」
「義理かよぉ。じゃあ、本命は?」
クラスの男子たちは目を輝かせている。ユウナはにっこり笑った。
「ありませーん」
「なんだよぉ、まぁ、そーだよな。いくらエイブス・ユースだったからって、ユウナちゃんのチョコまでもティーダのもんになっちまったらバレンタインが面白くなるもんなぁ。ったく、おまえどんだけもらってんだよ」
「あ、じゃあ、来年は俺にちょうだい、ユウナちゃん」
「うーん……来年も同じクラスだったら、ね」
微笑むユウナに「なんだよやっぱ義理かよ」「でもユウナちゃんから義理でもチョコもらえるならいいじゃん。来年も同じクラスになりてー」などと話す男子たちを余所にティーダは自分の鞄を漁っていた。探し物が見つかったらしいティーダはユウナにストラップキーホルダーの包みを差し出す。
「あげる」
ぶっきら棒に言われ、戸惑うユウナの手にティーダはストラップを握らせた。
「ああ!それ、ティーダのスマホについてるのと同じやつ!」
「ホントだ、いいなー欲しいなー、ザナルカンドもエイブスのホームスタジアムじゃないと売ってないっていうレアもんだもんなーユウナちゃんいいなー」
握らされたストラップを見ると、ザナルカンド・エイブスのマークがシルバーの素材で模されていた。とは言え、量産された気軽に帰るお土産品であろう。手の平に重みは感じない。
「えっと、それじゃあ……」
「あー、ダメダメ、欲しい奴にあげちゃうとかダメ。つうか、ユウナは欲しくない?」
聞かれて首を横に振る。
「だろぉ?はい、君たちにはあげません。俺がユウナにあげて、ユウナもあげたくないってさ」
ティーダは手首を振り、男子たちを払いのける。
「あと、これ」
と、ティーダは制服のポケットから可愛らしい包みを取り出した。
「ありがとう、開けていい?」
笑顔で頷くティーダに嬉しくなる。受け取った包みの中身は、ルールーとリュックと色違いのシュシュだった。濃い青色のサテン地にポイントで白いレースの花が咲いている。
「ルールーとリュックと色違いでお揃いの髪くくるやつ」
「大人っぽい色だね」
「うん。俺のユウナのイメージは大人。あ、ダメだった?気に入らない?」
「ううん、そんなことない。ありがとう、嬉しい」
キミにとってわたしって大人なのか……。老けてるってこと?
「そっか、よかった。な、つけてみてもいい?」
「えっ?」
ユウナの手の平からシュシュを取ったティーダはユウナの髪を指で梳き、束ねて耳より上でまとめた。
「ポニーテールもいいけど、お姉さんっぽく片側の下のほうでくくってるのもいいなって、こないだのユウナ見て思って……」
髪を耳に掛ける優しい手つきにどきりとする。ティーダとの距離は近く、いつもより近い声が低い。意識するユウナを余所にティーダは、彼女の右耳の下で髪を束ねて贈ったシュシュでまとめた。
「うん、後れ毛、いいよなって……」
頬も耳も赤くしているユウナに気づき、ティーダもユウナを真似るように動きを止めた。あっとだけ呟き、頭を掻く。
「あの、その、変なことするつもりは全然なくて……ごく普通に、ユウナのうなじが、綺麗でっ……」
顔の赤いユウナに見上げられ、ティーダの泳いでいた視線が止まった。
「えっと、綺麗で……」
と、繰り返しながら視線を逸らす。
「綺麗で……だけど、やましい気持ちはホントなくて……その、ごめん」
「ううん……」
互いに向かい合ったままではあるが、一度落としてしまった視線は戻せない。
やがて教室の一角だけに流れるその甘酸っぱい空気は毒気となり、教室にいたクラスメイトはもちろん、食堂や他のクラスから帰ってくるクラスメイトや、ユウナとティーダを見守っていたルールーまでもが当てられることとなった。
昼休み。ブリッツ部のみんなにバレンタインデーのチョコレートを渡しに行っている時に気づいた。見慣れない紫苑色の生地に白い花のレースがあしらわれていたシュシュを手首にはめている。おそらくリュックのものとは色違いだろう。
ブリッツ部員がいる次の教室へ向かう途中、ユウナは何気なしにルールーに訊ねた。
「そのシュシュどうしたの?」
「これ?」
ルールーは、シュシュをはめた腕を上げた。
「うん」
「これね、今朝ティーダからもらったよ」
「えっ」
前触れなしに挙がった名にどきりとする。
「ザナルカンドではバレンタインに男性から女性へ贈り物をするんだって」
「そう、なんだ……」
じゃあ、リュックもティーダからシュシュもらったんだよね。そんなこと一言も言ってなかった。
元気を失くすユウナにルールーは声をかける。
「いつもお世話になってるからって、玄関でリュックもいる時にひょいってくれたわよ。そうそう、なぜだか知らないけどユウナには内緒なって言ってた。おかしいわね、同じクラスなのに、渡す機会なんていくらでもあるはずなのに……」
ユウナ、リュック、ティーダのクラス前にやってくるとルールーはユウナにチョコレートを渡した。マネージャーから部員全員に渡しているうちの一つだ。同じクラスに部員はティーダの他にもいる。
「あの子のところに行ってきなさい」
ルールーに背中を押されて教室に入る。振り返ったルールーは黙って頷き、ユウナも頷き返した。
ルールーはなんでもお見通しっすね。やっぱり、お姉さんだな。
ユウナはクラスの男子と話しているティーダの側へ行き、チョコレートの包みをティーダに差し出した。
「俺?」
男子たちの会話は途切れ、ティーダは少し照れる。
「うん」
「おおーっ、いいなーユウナちゃんからのチョコレート!」
「ブリッツ部マネージャー一同から部員のみなさんへ」
と、言葉を添えてティーダに手渡す。
「どもッス」
「義理かよぉ。じゃあ、本命は?」
クラスの男子たちは目を輝かせている。ユウナはにっこり笑った。
「ありませーん」
「なんだよぉ、まぁ、そーだよな。いくらエイブス・ユースだったからって、ユウナちゃんのチョコまでもティーダのもんになっちまったらバレンタインが面白くなるもんなぁ。ったく、おまえどんだけもらってんだよ」
「あ、じゃあ、来年は俺にちょうだい、ユウナちゃん」
「うーん……来年も同じクラスだったら、ね」
微笑むユウナに「なんだよやっぱ義理かよ」「でもユウナちゃんから義理でもチョコもらえるならいいじゃん。来年も同じクラスになりてー」などと話す男子たちを余所にティーダは自分の鞄を漁っていた。探し物が見つかったらしいティーダはユウナにストラップキーホルダーの包みを差し出す。
「あげる」
ぶっきら棒に言われ、戸惑うユウナの手にティーダはストラップを握らせた。
「ああ!それ、ティーダのスマホについてるのと同じやつ!」
「ホントだ、いいなー欲しいなー、ザナルカンドもエイブスのホームスタジアムじゃないと売ってないっていうレアもんだもんなーユウナちゃんいいなー」
握らされたストラップを見ると、ザナルカンド・エイブスのマークがシルバーの素材で模されていた。とは言え、量産された気軽に帰るお土産品であろう。手の平に重みは感じない。
「えっと、それじゃあ……」
「あー、ダメダメ、欲しい奴にあげちゃうとかダメ。つうか、ユウナは欲しくない?」
聞かれて首を横に振る。
「だろぉ?はい、君たちにはあげません。俺がユウナにあげて、ユウナもあげたくないってさ」
ティーダは手首を振り、男子たちを払いのける。
「あと、これ」
と、ティーダは制服のポケットから可愛らしい包みを取り出した。
「ありがとう、開けていい?」
笑顔で頷くティーダに嬉しくなる。受け取った包みの中身は、ルールーとリュックと色違いのシュシュだった。濃い青色のサテン地にポイントで白いレースの花が咲いている。
「ルールーとリュックと色違いでお揃いの髪くくるやつ」
「大人っぽい色だね」
「うん。俺のユウナのイメージは大人。あ、ダメだった?気に入らない?」
「ううん、そんなことない。ありがとう、嬉しい」
キミにとってわたしって大人なのか……。老けてるってこと?
「そっか、よかった。な、つけてみてもいい?」
「えっ?」
ユウナの手の平からシュシュを取ったティーダはユウナの髪を指で梳き、束ねて耳より上でまとめた。
「ポニーテールもいいけど、お姉さんっぽく片側の下のほうでくくってるのもいいなって、こないだのユウナ見て思って……」
髪を耳に掛ける優しい手つきにどきりとする。ティーダとの距離は近く、いつもより近い声が低い。意識するユウナを余所にティーダは、彼女の右耳の下で髪を束ねて贈ったシュシュでまとめた。
「うん、後れ毛、いいよなって……」
頬も耳も赤くしているユウナに気づき、ティーダもユウナを真似るように動きを止めた。あっとだけ呟き、頭を掻く。
「あの、その、変なことするつもりは全然なくて……ごく普通に、ユウナのうなじが、綺麗でっ……」
顔の赤いユウナに見上げられ、ティーダの泳いでいた視線が止まった。
「えっと、綺麗で……」
と、繰り返しながら視線を逸らす。
「綺麗で……だけど、やましい気持ちはホントなくて……その、ごめん」
「ううん……」
互いに向かい合ったままではあるが、一度落としてしまった視線は戻せない。
やがて教室の一角だけに流れるその甘酸っぱい空気は毒気となり、教室にいたクラスメイトはもちろん、食堂や他のクラスから帰ってくるクラスメイトや、ユウナとティーダを見守っていたルールーまでもが当てられることとなった。
バレンタイン
Text by mimiko.
2014/02/18