FFX-2.5以降FFX-2 LAST MISSION未満。徒歩ザナルカンド旅行後です。
FFX2.5の独自解釈(老召喚士ジョイト(美の神イファーナル)が召喚する島上陸前、ティーダ談でっかいオヤジ(高濃度幻光体)に接触したことにより)ユウナ本人無自覚死人設定です。
2.5のユウナ不安満載とLMのユウナの惚気っぷりとユリパちぐはぐを穴埋め補完したいがためのやつです。ティユウえろです。
ティーダがアホです。子供です。ウンコとか言ってます。スケベ野郎です。ユウナに搾られたいとかモノローグってます。真剣モードは誰だお前wwwです。いろいろすみません。17歳ってむずかしい…。
FFX2.5の独自解釈(老召喚士ジョイト(美の神イファーナル)が召喚する島上陸前、ティーダ談でっかいオヤジ(高濃度幻光体)に接触したことにより)ユウナ本人無自覚死人設定です。
2.5のユウナ不安満載とLMのユウナの惚気っぷりとユリパちぐはぐを穴埋め補完したいがためのやつです。ティユウえろです。
ティーダがアホです。子供です。ウンコとか言ってます。スケベ野郎です。ユウナに搾られたいとかモノローグってます。真剣モードは誰だお前wwwです。いろいろすみません。17歳ってむずかしい…。
秘密
ティーダが帰還し、スピラでの二年の空白を埋める旅からビサイドへ帰るとユウナは村の年配者たちと新しいお祈りを考えるために寺院に籠った。たまにオーラカの練習を覗いたり、イナミの子守りをしたり、島内を散歩したりと適度な気分転換は忘れていない。
ブリッツの練習を終え、チームメイトたちは村へ戻る中、ティーダはひとり砂浜に居残っていた。未だ思い通りに動いてくれない体は、スピラで過ごす度にかつての俊敏さを取り戻しつつあるが、まだ完全とはいかなかった。
暮れる夕日とビサイドの海を正面にし、後ろ手に手の平をついて座るティーダの両肘が同時に後方へと引っ張られた。崩れる上半を肘で支えると、ユウナが前かがみになってティーダの顔を覗き込む。小さな悪巧みを成功させて嬉しそうに笑っている。
「痛いッス~」
冗談交じりに抗議するティーダの隣にユウナは座った。あまり痛そうでない声にユウナは笑いながら謝る。
「ごめんごめん」
「あ。全然悪いと思ってないしー」
「ごめんね。痛かった?」
腕を撫でながら小首を傾げるユウナに癒されたティーダは、顔を綻ばせた。その締りのない表情といったらかわいらしく、ユウナは思わず笑みをこぼした。自然なユウナの笑顔に安心したティーダは切り出す。
「どしたの?」
不意に落ち着いた声に訊ねられたユウナは、夕焼けに染まるティーダの横顔から夕日へと視線をやった。日はまもなく沈む。
「ひとりでまだ練習してるだろうって聞いて」
「それだけ?」
念を押されて内心びくりとした。気づかれないようにユウナは、うんと答える。ユウナの気がかりとはティーダの存在の危うさである。
「そっか。それなら……っと」
ティーダはユウナの背中を抱き、砂浜へと押し倒した。前触れのない出来事にユウナの鼓動が跳ねる。ティーダの瞳に自分の驚いた顔が映るのを見てユウナの頬が熱くなる。
「あの、えっと、そういうつもりで来たんじゃなくてっ」
早口で言うユウナの慌てぶりが愛おしくなり、ティーダはユウナの唇に人差し指で触れた。しーっと動くティーダの唇にユウナの視線が捕らえられる。このままその唇に口づけられたいと思ったユウナの頬はますます熱くなった。
「そういうつもりじゃなくてもしようよ、キス……」
先程のかわいらしいティーダとは打って変わってのその大人っぽい表情にユウナの鼓動が高鳴る。返事をするようにユウナは目を伏せた。ザナルカンド・エイブスのチームシンボルを模したピアスが近づいてくる。待っている僅かな時でさえも心が擽られる。初めて口づけるわけでもないのに落ち着かない。触れたらもっと深い所が擽られてしまうだろう。豹変する自分を認めたくないのに、ティーダを受け入れたい。そして、受け入れることで彼を繋ぎ止めたい。いつもでもユウナの心を波打たせるティーダの口づけはいつでも甘かった。が、重なった唇はすぐに離された。拍子抜けたユウナは、顔を上げたティーダをまじまじと見つめる。
「ん?足りない?もっとえっちなの、する?」
「えっ、う、ううんっ!そういうつもりじゃなっ」
「りょーかいッス」
「んんっ……!」
無遠慮に差し込まれた熱い舌に、ユウナの言葉がかき消される。
「んっ、あっ、んぅっ、やっ」
口内で加減しながら暴れるティーダにユウナの瞳が濡れ、口端をも濡らす。合わさった唾液は粘度を増し、ユウナの舌は甘く痺れた。
「んぅ、んっ、ぁんっ」
舌が触れ合うたびにユウナの甘えた声が洩れる。涙で緩むユウナの瞳にティーダが優しく微笑む。唇が微かに触れる距離で囁いた。
「大丈夫だよ、ユウナ。ユウナがいる限り、俺は消えたりしない。だから、ユウナも不安にならないで欲しい。俺は、ユウナのほうが心配」
切なげな声で言われ、ユウナは瞼を上げる。ティーダの肩越しに見える空は星が瞬き始めていた。
「え?どういうこと……?」
「どういうことって……。俺が戻ってきたのって、ユウナに呼ばれたからだろ?俺に助けて欲しいって思ったからだよな?」
「助けてって、何から?」
ユウナの色違いの瞳が戸惑いで揺れた。
各寺院の祈り子像と結びついた影も、シューインだった人の影も異界へ行けた。ブライアとクシュ、ジョイト――彼らの千年分の想いも異界へ行けた。異界の奥深くにあるヴェグナガンはもう起動されたりしないし、スピラの平和を脅かすものは何もない。エボン=ジュが乗り移る召喚獣が今のスピラにはいないのだ。シンはもう復活などしない。スピラはようやく真の永遠のナギ節を迎えられた。
――永遠なんて……ないのにね――
ふと召喚士の旅の時に聞いた少年の声がユウナの耳に響いた。バハムートの祈り子の声だ。
うん、でもそれは永遠の生ってことだよね。人は永遠じゃない。人は生まれて、人は死ぬ。覚めない夢はないし、夢は覚める。だから、わたしはあの時、ティーダを召喚し直して……。
再びバハムートの祈り子の声が聞こえる。
――エボン=ジュはね、昔、召喚士だった。あれほどの召喚士はいない。でも今は、ただ召喚を続けているだけの存在。悪意も善意もなく、永遠の夢を願っているだけの存在。永遠なんて……ないのにね――
違う、わたしはそんなつもりじゃない。わたしは、エボン=ジュにもクシュにもなったりしない。でも、今、決めないとダメなの?答えを出すのはもっと先でもいいでしょう?だって、ティーダは戻ってきたばかりなんだよ?わたしたちの物語はこれからなんだよ?なんで?キミはなんでそんなことを今、言うの?わたしはただ、キミと一緒にいたいだけなのに。あの森の泉でキミが話した夢のような物語を現実にしたいだけなのに。
ユウナの動揺に合わせるように幻光虫が舞った。
「あっ、ダメっ!」
ユウナは、正面のティーダを抱き寄せた。
わたしが心を乱しちゃダメ。心を乱したら、ティーダが消えちゃう。そんなのダメ!
「大丈夫だよ、ユウナ。俺じゃない。だって、ユウナの俺への愛は永遠だもん。俺じゃなくてユウナだよ、この幻光」
「え?!」
「教えて。俺がユウナを召喚する。あの時みたいにすればいいんだよな。でもよくわからないんだ。だから、召喚の仕方、俺に教えて」
ティーダの言っていることを理解できなかった。ユウナの混乱は幻光虫を更に飛び交わせる。
「え、うそ?わたし?え……?」
「ユウナ」
ティーダはユウナに口づけ、反応するようにユウナの全身が発光する。
「ダメだよ、ユウナ。これくらいで逝っちゃったらダメだ。もっとすごいことするんだから、俺のこと信じて。俺のこと強く想って。俺も、ユウナのこと想うから。俺しか知らないユウナのこと想うから。ユウナも、ユウナしか知らない俺のこと想って」
優しい声が近づくと今度は深く口づけられた。熱くなった胸が震え、ユウナの胸元から幻光虫がこぼれた。ティーダの手の平がユウナの乳房を覆うと、先程こぼれた幻光虫が居場所を思い出したように戻った。
「ユウナ、こぼしちゃダメだよ。こぼすんなら繋がるところにして」
微笑むティーダに悪気はない。辱めようとしているわけではなく、純粋にそうして欲しいと思っている。
「そんなの、恥ずかしいよ……」
抗議するとティーダが困ったように笑った。
「でも、俺がユウナのあちこち触ったりすると、だいたいそうなってるよな」
「そう、だけど……でも……」
「なぁ、ユウナ。今は、俺のことだけ考えて」
その真剣な目にユウナは頷いた。髪、額、頬、耳、首――ティーダに触れられたところが熱くなり、夢見心地だった快感が現実味を増していく。
砂浜に敷かれたティーダのパーカーにユウナの尻が沈んだ。両太腿を抱えられたまま身を捩ると更に尻が沈む。
「あ、キミのパーカー、汚れちゃう」
「そんなの気にしなくていいよ」
「でも……はぁん」
「んっ、もうすでにユウナが濡らしてるからさ。この際、もっと濡らしていいよ。いっぱいこぼして、ん」
潤い過ぎている秘裂に熱い唇と舌が這う。いやらしい音を立てるように啜られ、色違いの瞳から涙がこぼれた。こんなところでこんなはしたないことをされて悦んでいる自分が疎ましい。なのに、すっかり現実となった快感に酔いしれている。そして、ティーダに愛されているこの時はかけがいのない幸せな時だと心から思う。
蜜を絡めた指が差し込まれ、ユウナの足が揺れる。優しく探し当てられると全身が強張った。優しかったはずの指に追い詰められ、快感の渦を漂う。ユウナの意識にかかった靄が晴れてくる頃、ティーダはユウナの身なりを整え始めたが、ユウナはその手を止めた。
「これじゃ、ダメ。もっと強く召喚して」
「え?」
「今のでも確かに同じ精神状態だったと思うけど、それじゃダメなの。浅い召喚になっちゃう。もっと深いのじゃないと。もっと深く同調しないとダメ」
「え……」
と、呟いたきりのティーダの顔は瞬く間に赤くなった。月明かりでも認識できるほどだ。
「え?」
ティーダの反応を不思議に思ったユウナは小首を傾げた。
「ユウナは、そんなつもりじゃないんだろうけど、その……」
言いにくそうなティーダは、ユウナの胸のピンク色から視線を逸らせた。
「これ以上するってなると、入れるってことになるけど、いいの?」
声に詰まったユウナの顔にティーダはばつが悪そうに頭を掻いた。
「あの、これでも俺、さすがに浜辺えっちとかマズくないかって、さ……。それに、スピラじゃ、避妊とかしない感じっつーか文化みたいで……。けど、俺がいたザナルカンドでは未成年のセックスって推奨されてないし、避妊しないってのも、そのなんつーか、ほんとにいいのかなって。ザナルカンド遺跡ふたり旅で散々やりまくってた奴が今さらかよって感じだけど、ユウナはその辺どう考えてるのかなって、気になって……」
ああ、やっぱり、キミは普通の男の子なんだ。違う世界から来た普通の男の子。だから、強く魅かれた。
「うん、いいの」
ティーダの手の平を自分の頬に当てる。
「キミだから、いいの。キミじゃなきゃダメなの」
キミは、本当にすごいね。千年もスピラに居続けた人たちが少なくないことも、新しいお祈りのことも、キミが帰ってきた理由も、わたしがこんな状態でいる理由も、考えなくちゃいけないことは沢山あるのに、わたしをただの女の子にしてしまう。それに、召喚の仕方なんて知らないはずなのに、こうしてわたしを召喚しちゃった。
「キミが帰ってきて、もう絶対離れないって思った。その証明が欲しくて、今すぐ、ティーダのお嫁さんにしてもらうって、オーラカ・エース号を借りたの。だから……ぅんっ」
顔を上げたユウナの唇をティーダの唇が塞ぐ。
「ぁん、ティ…ダぁ、んっ」
舌を愛撫される度にユウナの肩がびくりと震える。
「うん、俺も、好きだ、ユウナ。ん……すっげー、好きだよ」
ちゅっと音を鳴らせて唇を離したティーダは、はにかんだ。
「よかった。意気地なしだって嫌われちゃったかなってちょっと思ってたから」
「ふふ、嫌わないよ。ていうか、キミ全然、遠慮しないし、そんなこと思ってたなんて知らなかった。これっぽっちも予想してなかったです」
ユウナのおどけた仕草にティーダの口端が上がる。かわいらしいユウナの顔の下にはかわいらしい乳首が揺れ、ティーダを誘う。
「そっかー。じゃあ余計なこと言っちゃったな。言わなきゃよかった」
平静を装うが、その胸に触れたくて右手が疼く。その視線と気配を感じユウナは両腕で胸を隠した。
「あれ?そういうことするんだ」
ユウナの牽制が出ようとしたそのタイミングでティーダに先を越され、ユウナはおしとどまる。
「もっと深い召喚、するんじゃなかったの?」
「あ、それは……」
「するんだろ?じゃあ、隠したらダメだよ」
「それとこれは別だよ。話してる最中に、いやらしい視線を感じるのはあまりいい気分じゃないです」
いやらしいと斬られ、ティーダは怯みそうになったが反撃に出る。
「でも、そういうことだよ。ユウナは俺を興奮させないとダメなんだ。じゃないとユウナの一番深いところまで届かない。ねぇ、ユウナ。俺を誘惑してよ」
ユウナの顎にティーダの指が添えられ、視線を合される。射るような目にユウナの動きが止まる。
「深く繋がって一緒に気持ちよくなりたい」
酷く落ち着いた声が耳に残る。男の目に捕えられたユウナは脇腹を撫でられ、びくんと体を揺らした。
「む、無理だよ。そんな目で見られたら、緊張しちゃって何もできなくなっちゃうもん」
目をぎゅっと瞑って抗議する。
「え。マジでなんかしてくれるの?」
いつものティーダの声音にユウナの目が開かれる。にこりと笑うティーダが恨めしい。してやられた。こちらを乗せようとする手段だとしてもやり過ぎではないか。もっと手加減するべきだろう。むっとしたユウナはティーダの右手首を両手で鷲掴み、その人差し指と中指を口に含んだ。丁寧に指に舌を這わせ、指先をちろちろと舐める。指の腹が微かに舌を撫で、ユウナの声が洩れた。
「ん、ふぅっ」
揺れた胸をティーダの手が撫で上げる。両方の親指の腹が頂を転がし、勃たせる。くびれた腰が前後すると、甘い声が上がる。
「あっ、んぁ、や、ごめんなさっ」
盛り上がっていた柔らかい地面がユウナのそこをティーダのパーカー越しに撫でた。先程、ティーダに吸い勃たされた小さな突起は刺激を欲しがり、ユウナの腰は無意識に揺れる。
「あぁ、また、ごめっ、んぅ」
と、ユウナは涙目でティーダの指を咥える。つい先程まで憎まれ口を叩いていたユウナの淫らな様にティーダは喉を鳴らした。
「ううん、あやまらなくていい」
ティーダはユウナの唇から二本の指を引き抜いた。砂地に両膝をついてファスナーを下ろすと分身を取り出し、ユウナをその膝に座らせる。
「俺のこと欲しがってくれて嬉しいよ」
と、分身の裏でユウナの粘膜を撫でる。潤いきったそこはティーダのものを呑みこみたそうに涎を流す。ぬちぬちと鳴る水音がふたりを興奮させる。
「や、えっちな音、してるぅ、んんっ」
「しょうがないよ、ユウナがいっぱい感じてるから」
小さな突起を裏の雁首で捕えると切なげな声が上がる。
「だって、キミがいやらしいこと、いっぱい、んぁ、するんだもん、そこダメ、はぁっ」
「ここ、いいの?」
「ん、うん、ぁあっ」
「入れなくてもいいの?」
「うん、でも、入れなくちゃダメ、ふぅ、ティーダの、わたしの奥まで、はぁっ、入れて」
ユウナは、肩で息をしながら、腰を浮かせる。自然と開閉する粘膜へティーダを誘導する。
「なぁ、ユウナ、俺と繋がりたいから、奥まで欲しいの?召喚しなきゃだから、奥まで欲しいの?」
ユウナは腰を下ろそうとしたが、尻をティーダに持ち上げられ、先端だけが口にあてがわれている。おあずけをくらったユウナは、身震いした。最奥はティーダの熱い塊に突き上げられたいと疼いている。
「そんなの、わからないよ、でも、奥、されたいの、わたしの奥まで、はぁ、キミに、して欲しいの」
浮かされていた尻がティーダの手により下げられる。ゆっくりと広げるように下ろされ、最奥に到達するまでにユウナは達してしまった。声にならない嬌声を上げ、白く細い腕は、日焼けした肩にしがみつく。強烈な圧迫と収縮がティーダの腰の力を吸い上げるが、強い快感から逃れたティーダは、ふっと笑った。
「ダメだよ、ユウナ、一番奥まで行ってないのに、これくらいでいっちゃったらダメだよ」
「だって、いつもよりおっきぃ、んっはぁん、あっ、そんなおっきのに、いっぱいひろげちゃぁ、ん、ぁ、ティ、ダぁ、あっ」
ユウナを支える大きな膨らみをティーダはいたずらに揉み広げる。腰を動かすことなく、高さと角度を変えられているだけだというのに、その微かな擦れが堪らない。ユウナは弄ばれ、悦びの声を上げる。
「ティーダ、気持ち、い?」
潤みきった瞳と甘えた声は、完全に雌に堕ちた証だった。
「うん、いいよ。ユウナがいいと、俺もいいから……」
ねっとりと口づけ、離した唇に透明の糸を引かせる。ようやく全部が包まれると、その熱に視界をぼやかされた。このまま放ってしまいたい。硬さを増したそれがユウナの奥へと揺れる。
「ぁん、深いよぅ、んっ、これ以上、奥、したら、またすぐいっちゃっ、ふぁっ、あん」
ユウナの声に正気を戻され、彼女の細い腰を掴む。
「ダメだよ、ユウナ。召喚するから、俺のこと想って、んっ」
突き上げたままユウナの腰を揺らすと、ユウナの口端から涎が流れた。嬌声を上げるだけで、唇は閉じることを忘れたらしい。
ごめんな、ユウナ。召喚士のユウナも、カモメ団のユウナも、ビサイドで育った女の子のユウナもかわいくて好きだけど、俺が一番好きなユウナって、このユウナなんだ。すべての柵から解き放たれた、ただの女になったユウナが、俺のことしか考えてないユウナが、たまらなく愛しい。
「はぁっ、んん、くっ、ユウナっ」
こうしてると俺が何者であるかなんてマジでどうでもよくなる。俺は男で、女であるユウナに、こんなに愛されてるって、実感できる。一瞬でいい。この時が、永遠じゃなくていい。俺を認めてくれるユウナがいる。それが俺の現実なんだ。現実に立ち向かおうとするユウナのかけがえのない男になれたら、この物語は、誰かの夢のティーダじゃないただのティーダという男のものになる。邪魔をするならとことんやってやる。相手が誰であろうが何であろうが、完全に叩きのめしてやる。俺は愛する彼女と平凡な毎日を暮らしていきたいだけだ。時々、こうやって性愛に溺れたいだけのどこにでもいるようなただの男だ。
「はぁ、ユウナ、もう、いい?奥で出すな」
「ぅんっ、ティーダの、いっぱい、ぁあっ、欲しぃ」
「俺の、いっぱいユウナにあげるよ、く、あっ、ユウナ……!!」
より深い召喚のための同調はできなかった。一足先に意識を手放したのはユウナのほうだった。
まだまだ修行足りないんじゃないの?
ティーダはユウナの身なりを整え、眠るユウナを膝に乗せて抱き締める。
はぁー。やっちゃったな。やっぱり罪悪感。なんで毎回後ろめたい感じになるんだろ。俺はただユウナと愛し合ってるだけなのに。あーあ、また次の日に怒られたりすんのかな。だいたい怒られるもんな。ユウナだって気持ちいいんだから怒る必要なんてないだろ。あんま怒ってばっかだと、もうえっちしてやんないぞー。
腕の中のユウナの鼻をきゅっと摘まんで放した。もぞっと動いたユウナがかわいらしい。
て、そんなの俺のほうが無理に決まってる。毎日毎日ちょっかい出してるけど、これでもセーブしてるんだ。これ以上セーブするなんて考えられない。あ、そうだ。なかったことにしてみるとか?ユウナに切り出されたら、俺はとぼける。んで、知らないふりを貫く。……ていうのもなぁ。なかったことになんてしたくない。ユウナと一緒にすごす時間は、ただの一秒も忘れたくない。忘れるのは、辛い思い出だけでいい。けど、ユウナなら辛い思い出も大切な思い出って言うんだろうな。真面目だよな。そういう曲がらないところも俺は好きだけど、もうちょっと好き勝手に生きてもいいと思うんだけどなー……。
「ん……」
身じろぐユウナの髪が頬を掠め、くすぐったくなる。
「ユウナ、完全に寝ちゃってる?」
すっかり寝入ってしまっているユウナは気持ちよさそうな寝息を立てている。ティーダは村へ帰ろうとユウナを背負った。村までの道中、千年前には稼働していたであろう機械を眺め、ひと月前の出来事を思い出した。あの幻の島に上陸した時のことを。
千年前の記憶をなくした死人。千年前の死人の召喚士と召喚獣。それと、カモメ団が異界へ送り届けた千年前の恋人たち。なんでみんな未練タラタラで千年もさまよってんだ?ああ、それだけ酷い戦争だったってことか。……うーん、なんか他にもウヨウヨいそうだよな、千年前の亡霊。あ、俺もその仲間か。千年前の夢だったもんな。あのザナルカンドに戻らずにスピラに戻ってきたっつても、やっぱ俺って普通の人間じゃないんだろな。普通の人間なら頭で思い描いた場所に飛んで行けるとか、ないもんな。ま、いっか。多分、それはユウナを助ける強みになる。他にもなんかないかな、ユウナの助けになるようなこと。あっ、魔法。クシュがやってた魔法、あれって俺にもできないかな。でも、あれって……。
『魔法をかけた。行きたいところへ行ける魔法。でも、気をつけて。あまり時間をかけてはダメ。あなたはあなたではなくなってしまう。最初は些細なこと、でもそのうち大事なものまで無くしてしまう。あなたのことを知っている人を大事にしてね。さあ、早く。魔法が解けないうちに』
て、クシュが言ってた。
『悪いな。あちこち飛びすぎて、いろんなものを無くしてしまったようだ。どうして最初にここだと気づかなかったのか』
クシュがいた部屋に飛んできたブライアは嵐の前に会話した俺のことを忘れていた。同じ村に住んでたユウナのことも忘れていた。
『イファーナルの魔法は、強力だったね』
て、ユウナが言ってて、魔法をかけられたことがあるブライアはあの時、全部を思い出してた。魔法がかかっていると、飛べたり、記憶をなくしたりする。魔法が解ければ記憶は戻るけど、些細な出来事の記憶はなくしたりする。で、幻光に敏感な召喚士だと魔法は強力ってこと?あ、でもクシュも召喚士だったんだよな。……うーん、かける人や場合によって効力が変わってくる?
「あー!わっかんねーや!」
ティーダがユウナを背負って入村し、夜空を仰ぐと馴染のある声がした。
「なーにがわかんねーんだ」
不機嫌なワッカの声だ。
「あ。」
「あ。っじゃねーよ、遅くまでユウナを連れまわしてんじゃねえ。ユウナはおまえとの時間を作るために、昼間頑張ってんだからよ。少しは労わってやれ」
「了解ッス」
ワッカはティーダの背中にいるユウナの顔を覗き込む。
「おうおう、よーく寝てんなぁ」
「あ、うん……」
ティーダのばつの悪そうな顔にワッカの片眉が上がった。
「おまえ、さてはやってきたな」
ぎくりとしたティーダはワッカの顔を見れなかった。
「な、何を?」
「あぁん?ナニだろ」
「え。なんでわかんの」
「そんなの見りゃわかんだろ。男が半裸で服を小脇に抱えてたら、ああ……ってなんだろが。お外で致しましたって丸わかりだ。昼間にそんなナリして帰ってくんじゃねーぞ。また年寄りたちに疎まれる」
「以後気をつけるッス」
軽く下がったティーダの頭をワッカは鷲掴んだ。
「おまえたちが無事なら俺はなんでもいいんだ。ま、仲良くやれよ」
無事なら――心配させてしまったことを悔いる。頭上のワッカの手が離れ、自宅に向かうワッカの背中に礼を言う。
「ごめん。ありがとう、ワッカ!」
ワッカは振り返らずに手を振り、自宅である天幕へと入っていった。ふと近所の天幕の中からこちらを窺っている気配がする。
ああ、みんな、ごめんなさい。心配かけてすみませんでした。ユウナとティーダは無事にただいま帰りました。そうだよな、みんな、心配になるよな。村の宝であるユウナの行方不明事件からまだ一か月しか経ってない。そのうち半分はザナルカンド遺跡旅行。みんなのユウナを俺が独占した。建前じゃ俺のこと認めないって云ってるけど、本音じゃ俺のこと認めてくれてんだよな。ありがとう。はは、なんか泣きそう。俺がいたザナルカンドでは、たまに近所の人と挨拶程度の会話はしても、こうじゃなかったもんな。ここは、みんなが関わり合う。近所の他人じゃなくて、近所の家族。ビサイドの人は、なんだかんだでみんなあったかくて優しいんだ。こんなの知っちゃったら、大切にしたくなるよな。守りたくなる。俺に、その力があるならの話だけど。
寺院へ向かい、ユウナの部屋のベッドに彼女を寝かせて毛布を掛ける。
「ユウナ」
眠る彼女の名を呼ぶ。が、返事は寝息だ。
ごめんな、ユウナ。気づいてなかったのに、俺が変なこと言ったりしたからユウナの体が綻んだ。本当にごめん。今のユウナが、俺と同じ感じでスピラに存在してるなら、大丈夫だよ。消えるかもしれないなんて、怖がらなくていい。俺たちは、消えない。俺がユウナのことを、ユウナが俺ことを、大事に想ってるから。たとえ男女の絆が途絶えても、どんなに離れていようとも、万が一、俺がまたバラバラになろうとも、このスピラからユウナを消したりなんかしない。ユウナの地味な暮らしは俺が守ってやる。何がなんでもだ。
ティーダは鼻を啜った。あふれそうになる涙を堪えきれず、頬に伝わせる。
「はは、ごめん。地味はなかったな、普通の暮らしだったな……っく」
ダメだな、俺。さっきあんなにユウナを抱いたのに、今、目の前で寝てるっていうのに、また恋しくなってる。俺、女でダメになるタイプの男だったのかよ、くそっ。
ティーダは、膝の上の手の甲に落ちた涙を振り切るように自分の膝をその拳で打った。
「泣いてるの……?」
いつの間にか寝返りを打っていたらしいユウナは、ティーダに背を向けたまま訊ねた。
「ああ、えっと。スピラに戻って来れた喜びを噛み締めてたところ」
雑に涙を拭ったティーダはベッドに上がる。ユウナの背後にぴたりと体を寄せる。ユウナの腰に腕を回し、ユウナの胸の前の手をティーダが握る。
「うそ」
「うそじゃないよ」
「ううん、うそだよ」
「うん、うそ」
否定していたはずのティーダの軽い口調の肯定にユウナの気が揺れる。
「何それ」
「怒った?」
「ううん」
無愛想な否定にティーダは思わず笑みをこぼす。
「なんか急に寂しくなった。ユウナがすぐそばにいるのに、遠い。みたいな?」
「どうしてそんなふうに思ったの?」
「どうしてだろう、自分でもよくわからない」
「うん」
「え?それだけ?ないの?ブリッツしてる時のキミはかっこいいからわたしもそんなこと感じたことあるよ、とか」
「自分で言っちゃうんだ」
くすくす笑うユウナの髪がティーダの鼻を擽る。
「ユウナ、そういうのあんま言ってくれないからさ。俺ばっかり村のじいさんばあさんに嫉妬してるっつーかさ」
「ふふ、わたしもそんなふうに思ったことあるよ。キミの言う通り、いつもブリッツに嫉妬してる。けど、今は大丈夫。キミがこんなに近いから、すごく安心する」
弾んだ声にティーダの心が安らぐ。
「うん……」
ああ、守りたい。ユウナを巻き込もうとするすべてのことから守りたい。辛いこと、悲しいことで泣かせたり、傷つけたりしたくない。
「あのさ、ユウナ、俺に魔法かけて」
『魔法』の言葉にユウナの瞳が動きを止める。
「クシュとかイファーナル?とかがやってたやつじゃなくて、愛の魔法。不安を吹き飛ばすようなキス。……ダメ?」
「それって、愛の魔法っていうより、ただキスがしたいだけとか?」
「あ、バレた?」
「キスならさっきいっぱいしました」
「そう言わずにさぁ」
情けない声が同情を誘う。同情をしてもらってのそれでも愛の魔法となるのかは怪しいが、ユウナはティーダの腕の中で体を回転させた。ティーダの肩を押し倒すと、髪を耳にかけ、口づける。浅い口づけは次第に深くなり、互いの口端を濡らす。唇を離したユウナは自分の濡れた唇を拭った。恥ずかしくなったのか、視線を逸らせながら顔を赤くするユウナがとてもかわいらしい。にこりと笑ったティーダはユウナを抱いて寝かせる。
「今度は俺が魔法をかけるよ」
真剣な眼差しでユウナの両手を握り、ベッドへ軽く縫いつける。
「え、なに」
構えるユウナの唇は塞がれ、その口づけは急速に深くなる。
この『魔法』が本当に効くのかわからない。俺に高度なことはできない。多分、感覚的にできてるだけ。だから、想うだけ。自分がどういう状態だったからあの幻の島に上陸できたとか、俺とユウナが噛みあわなかったのは二年のブランクだけじゃなくて『些細なこと』を忘れていたからだとか、ソレと、ソレに繋がることだけを思い出さないで欲しい。まだダメなんだ。俺たちの絆はまだ浅い。もっと深い絆になるまででいい。その時までどうかこの『魔法』を解かないで欲しい。
ティーダは願い、ユウナに唾液を注いだ。
「んっ……」
とろりとした色違いの瞳が膝を摺合せ、物欲しそうにティーダを見上げる。ティーダはそれを知らぬ顔でユウナに毛布を掛け直した。面白くなさそうなユウナの顔に堪えきれず笑みをこぼす。
「ごめん。ユウナがすごくかわいいけど、もう一回は無理。時間も遅いし、多分、加減ができない」
「でも……」
拗ねるユウナの額を撫でる。
「俺もすごく好きだよ。ありがとう」
額に口づけ、体を起こすとユウナの両手に右手が掴まれた。
「待って。どこ行くの?」
不安気な表情に言葉の選択を間違えたことを後悔する。
「ああ、大丈夫。便所に消えるだけだから。俺自体は消えない。便所行って、すっきりして寝るッス。だから、消えるのは俺から出たウンコ……」
品のないティーダの返答にユウナは掴んでいた右手を振り放した。
「あはは、ごめん。また明日。おやすみ!」
ティーダは笑顔で手を上げ、ドアを開ける。ユウナが返事するのを待っているとベッドの毛布からおやすみなさいと声がした。静かにドアを閉め、一息つく。
うーん。魔法、効いてんのかなぁ。感じてはいたけどな。やっばいなー。ユウナ、どんどん感じやすくなっていってない?単に俺がエロいだけかな。それはさて置き。効いてたとしたら魔法が解けた時、こってり絞られるんだろうな。けど、どうせならなら絞られるんじゃなくて、ユウナのあったかいところに搾られたいよな。
――なんて、バカなことを考えていたバカな俺のことを搾りはしなかったけど、しっかり絞ってくれた。あんなに泣かれるなら、怒鳴られたり殴られたりしたほうがましだった。反省してます、エボナー導師ユウナ様――
ブリッツの練習を終え、チームメイトたちは村へ戻る中、ティーダはひとり砂浜に居残っていた。未だ思い通りに動いてくれない体は、スピラで過ごす度にかつての俊敏さを取り戻しつつあるが、まだ完全とはいかなかった。
暮れる夕日とビサイドの海を正面にし、後ろ手に手の平をついて座るティーダの両肘が同時に後方へと引っ張られた。崩れる上半を肘で支えると、ユウナが前かがみになってティーダの顔を覗き込む。小さな悪巧みを成功させて嬉しそうに笑っている。
「痛いッス~」
冗談交じりに抗議するティーダの隣にユウナは座った。あまり痛そうでない声にユウナは笑いながら謝る。
「ごめんごめん」
「あ。全然悪いと思ってないしー」
「ごめんね。痛かった?」
腕を撫でながら小首を傾げるユウナに癒されたティーダは、顔を綻ばせた。その締りのない表情といったらかわいらしく、ユウナは思わず笑みをこぼした。自然なユウナの笑顔に安心したティーダは切り出す。
「どしたの?」
不意に落ち着いた声に訊ねられたユウナは、夕焼けに染まるティーダの横顔から夕日へと視線をやった。日はまもなく沈む。
「ひとりでまだ練習してるだろうって聞いて」
「それだけ?」
念を押されて内心びくりとした。気づかれないようにユウナは、うんと答える。ユウナの気がかりとはティーダの存在の危うさである。
「そっか。それなら……っと」
ティーダはユウナの背中を抱き、砂浜へと押し倒した。前触れのない出来事にユウナの鼓動が跳ねる。ティーダの瞳に自分の驚いた顔が映るのを見てユウナの頬が熱くなる。
「あの、えっと、そういうつもりで来たんじゃなくてっ」
早口で言うユウナの慌てぶりが愛おしくなり、ティーダはユウナの唇に人差し指で触れた。しーっと動くティーダの唇にユウナの視線が捕らえられる。このままその唇に口づけられたいと思ったユウナの頬はますます熱くなった。
「そういうつもりじゃなくてもしようよ、キス……」
先程のかわいらしいティーダとは打って変わってのその大人っぽい表情にユウナの鼓動が高鳴る。返事をするようにユウナは目を伏せた。ザナルカンド・エイブスのチームシンボルを模したピアスが近づいてくる。待っている僅かな時でさえも心が擽られる。初めて口づけるわけでもないのに落ち着かない。触れたらもっと深い所が擽られてしまうだろう。豹変する自分を認めたくないのに、ティーダを受け入れたい。そして、受け入れることで彼を繋ぎ止めたい。いつもでもユウナの心を波打たせるティーダの口づけはいつでも甘かった。が、重なった唇はすぐに離された。拍子抜けたユウナは、顔を上げたティーダをまじまじと見つめる。
「ん?足りない?もっとえっちなの、する?」
「えっ、う、ううんっ!そういうつもりじゃなっ」
「りょーかいッス」
「んんっ……!」
無遠慮に差し込まれた熱い舌に、ユウナの言葉がかき消される。
「んっ、あっ、んぅっ、やっ」
口内で加減しながら暴れるティーダにユウナの瞳が濡れ、口端をも濡らす。合わさった唾液は粘度を増し、ユウナの舌は甘く痺れた。
「んぅ、んっ、ぁんっ」
舌が触れ合うたびにユウナの甘えた声が洩れる。涙で緩むユウナの瞳にティーダが優しく微笑む。唇が微かに触れる距離で囁いた。
「大丈夫だよ、ユウナ。ユウナがいる限り、俺は消えたりしない。だから、ユウナも不安にならないで欲しい。俺は、ユウナのほうが心配」
切なげな声で言われ、ユウナは瞼を上げる。ティーダの肩越しに見える空は星が瞬き始めていた。
「え?どういうこと……?」
「どういうことって……。俺が戻ってきたのって、ユウナに呼ばれたからだろ?俺に助けて欲しいって思ったからだよな?」
「助けてって、何から?」
ユウナの色違いの瞳が戸惑いで揺れた。
各寺院の祈り子像と結びついた影も、シューインだった人の影も異界へ行けた。ブライアとクシュ、ジョイト――彼らの千年分の想いも異界へ行けた。異界の奥深くにあるヴェグナガンはもう起動されたりしないし、スピラの平和を脅かすものは何もない。エボン=ジュが乗り移る召喚獣が今のスピラにはいないのだ。シンはもう復活などしない。スピラはようやく真の永遠のナギ節を迎えられた。
――永遠なんて……ないのにね――
ふと召喚士の旅の時に聞いた少年の声がユウナの耳に響いた。バハムートの祈り子の声だ。
うん、でもそれは永遠の生ってことだよね。人は永遠じゃない。人は生まれて、人は死ぬ。覚めない夢はないし、夢は覚める。だから、わたしはあの時、ティーダを召喚し直して……。
再びバハムートの祈り子の声が聞こえる。
――エボン=ジュはね、昔、召喚士だった。あれほどの召喚士はいない。でも今は、ただ召喚を続けているだけの存在。悪意も善意もなく、永遠の夢を願っているだけの存在。永遠なんて……ないのにね――
違う、わたしはそんなつもりじゃない。わたしは、エボン=ジュにもクシュにもなったりしない。でも、今、決めないとダメなの?答えを出すのはもっと先でもいいでしょう?だって、ティーダは戻ってきたばかりなんだよ?わたしたちの物語はこれからなんだよ?なんで?キミはなんでそんなことを今、言うの?わたしはただ、キミと一緒にいたいだけなのに。あの森の泉でキミが話した夢のような物語を現実にしたいだけなのに。
ユウナの動揺に合わせるように幻光虫が舞った。
「あっ、ダメっ!」
ユウナは、正面のティーダを抱き寄せた。
わたしが心を乱しちゃダメ。心を乱したら、ティーダが消えちゃう。そんなのダメ!
「大丈夫だよ、ユウナ。俺じゃない。だって、ユウナの俺への愛は永遠だもん。俺じゃなくてユウナだよ、この幻光」
「え?!」
「教えて。俺がユウナを召喚する。あの時みたいにすればいいんだよな。でもよくわからないんだ。だから、召喚の仕方、俺に教えて」
ティーダの言っていることを理解できなかった。ユウナの混乱は幻光虫を更に飛び交わせる。
「え、うそ?わたし?え……?」
「ユウナ」
ティーダはユウナに口づけ、反応するようにユウナの全身が発光する。
「ダメだよ、ユウナ。これくらいで逝っちゃったらダメだ。もっとすごいことするんだから、俺のこと信じて。俺のこと強く想って。俺も、ユウナのこと想うから。俺しか知らないユウナのこと想うから。ユウナも、ユウナしか知らない俺のこと想って」
優しい声が近づくと今度は深く口づけられた。熱くなった胸が震え、ユウナの胸元から幻光虫がこぼれた。ティーダの手の平がユウナの乳房を覆うと、先程こぼれた幻光虫が居場所を思い出したように戻った。
「ユウナ、こぼしちゃダメだよ。こぼすんなら繋がるところにして」
微笑むティーダに悪気はない。辱めようとしているわけではなく、純粋にそうして欲しいと思っている。
「そんなの、恥ずかしいよ……」
抗議するとティーダが困ったように笑った。
「でも、俺がユウナのあちこち触ったりすると、だいたいそうなってるよな」
「そう、だけど……でも……」
「なぁ、ユウナ。今は、俺のことだけ考えて」
その真剣な目にユウナは頷いた。髪、額、頬、耳、首――ティーダに触れられたところが熱くなり、夢見心地だった快感が現実味を増していく。
砂浜に敷かれたティーダのパーカーにユウナの尻が沈んだ。両太腿を抱えられたまま身を捩ると更に尻が沈む。
「あ、キミのパーカー、汚れちゃう」
「そんなの気にしなくていいよ」
「でも……はぁん」
「んっ、もうすでにユウナが濡らしてるからさ。この際、もっと濡らしていいよ。いっぱいこぼして、ん」
潤い過ぎている秘裂に熱い唇と舌が這う。いやらしい音を立てるように啜られ、色違いの瞳から涙がこぼれた。こんなところでこんなはしたないことをされて悦んでいる自分が疎ましい。なのに、すっかり現実となった快感に酔いしれている。そして、ティーダに愛されているこの時はかけがいのない幸せな時だと心から思う。
蜜を絡めた指が差し込まれ、ユウナの足が揺れる。優しく探し当てられると全身が強張った。優しかったはずの指に追い詰められ、快感の渦を漂う。ユウナの意識にかかった靄が晴れてくる頃、ティーダはユウナの身なりを整え始めたが、ユウナはその手を止めた。
「これじゃ、ダメ。もっと強く召喚して」
「え?」
「今のでも確かに同じ精神状態だったと思うけど、それじゃダメなの。浅い召喚になっちゃう。もっと深いのじゃないと。もっと深く同調しないとダメ」
「え……」
と、呟いたきりのティーダの顔は瞬く間に赤くなった。月明かりでも認識できるほどだ。
「え?」
ティーダの反応を不思議に思ったユウナは小首を傾げた。
「ユウナは、そんなつもりじゃないんだろうけど、その……」
言いにくそうなティーダは、ユウナの胸のピンク色から視線を逸らせた。
「これ以上するってなると、入れるってことになるけど、いいの?」
声に詰まったユウナの顔にティーダはばつが悪そうに頭を掻いた。
「あの、これでも俺、さすがに浜辺えっちとかマズくないかって、さ……。それに、スピラじゃ、避妊とかしない感じっつーか文化みたいで……。けど、俺がいたザナルカンドでは未成年のセックスって推奨されてないし、避妊しないってのも、そのなんつーか、ほんとにいいのかなって。ザナルカンド遺跡ふたり旅で散々やりまくってた奴が今さらかよって感じだけど、ユウナはその辺どう考えてるのかなって、気になって……」
ああ、やっぱり、キミは普通の男の子なんだ。違う世界から来た普通の男の子。だから、強く魅かれた。
「うん、いいの」
ティーダの手の平を自分の頬に当てる。
「キミだから、いいの。キミじゃなきゃダメなの」
キミは、本当にすごいね。千年もスピラに居続けた人たちが少なくないことも、新しいお祈りのことも、キミが帰ってきた理由も、わたしがこんな状態でいる理由も、考えなくちゃいけないことは沢山あるのに、わたしをただの女の子にしてしまう。それに、召喚の仕方なんて知らないはずなのに、こうしてわたしを召喚しちゃった。
「キミが帰ってきて、もう絶対離れないって思った。その証明が欲しくて、今すぐ、ティーダのお嫁さんにしてもらうって、オーラカ・エース号を借りたの。だから……ぅんっ」
顔を上げたユウナの唇をティーダの唇が塞ぐ。
「ぁん、ティ…ダぁ、んっ」
舌を愛撫される度にユウナの肩がびくりと震える。
「うん、俺も、好きだ、ユウナ。ん……すっげー、好きだよ」
ちゅっと音を鳴らせて唇を離したティーダは、はにかんだ。
「よかった。意気地なしだって嫌われちゃったかなってちょっと思ってたから」
「ふふ、嫌わないよ。ていうか、キミ全然、遠慮しないし、そんなこと思ってたなんて知らなかった。これっぽっちも予想してなかったです」
ユウナのおどけた仕草にティーダの口端が上がる。かわいらしいユウナの顔の下にはかわいらしい乳首が揺れ、ティーダを誘う。
「そっかー。じゃあ余計なこと言っちゃったな。言わなきゃよかった」
平静を装うが、その胸に触れたくて右手が疼く。その視線と気配を感じユウナは両腕で胸を隠した。
「あれ?そういうことするんだ」
ユウナの牽制が出ようとしたそのタイミングでティーダに先を越され、ユウナはおしとどまる。
「もっと深い召喚、するんじゃなかったの?」
「あ、それは……」
「するんだろ?じゃあ、隠したらダメだよ」
「それとこれは別だよ。話してる最中に、いやらしい視線を感じるのはあまりいい気分じゃないです」
いやらしいと斬られ、ティーダは怯みそうになったが反撃に出る。
「でも、そういうことだよ。ユウナは俺を興奮させないとダメなんだ。じゃないとユウナの一番深いところまで届かない。ねぇ、ユウナ。俺を誘惑してよ」
ユウナの顎にティーダの指が添えられ、視線を合される。射るような目にユウナの動きが止まる。
「深く繋がって一緒に気持ちよくなりたい」
酷く落ち着いた声が耳に残る。男の目に捕えられたユウナは脇腹を撫でられ、びくんと体を揺らした。
「む、無理だよ。そんな目で見られたら、緊張しちゃって何もできなくなっちゃうもん」
目をぎゅっと瞑って抗議する。
「え。マジでなんかしてくれるの?」
いつものティーダの声音にユウナの目が開かれる。にこりと笑うティーダが恨めしい。してやられた。こちらを乗せようとする手段だとしてもやり過ぎではないか。もっと手加減するべきだろう。むっとしたユウナはティーダの右手首を両手で鷲掴み、その人差し指と中指を口に含んだ。丁寧に指に舌を這わせ、指先をちろちろと舐める。指の腹が微かに舌を撫で、ユウナの声が洩れた。
「ん、ふぅっ」
揺れた胸をティーダの手が撫で上げる。両方の親指の腹が頂を転がし、勃たせる。くびれた腰が前後すると、甘い声が上がる。
「あっ、んぁ、や、ごめんなさっ」
盛り上がっていた柔らかい地面がユウナのそこをティーダのパーカー越しに撫でた。先程、ティーダに吸い勃たされた小さな突起は刺激を欲しがり、ユウナの腰は無意識に揺れる。
「あぁ、また、ごめっ、んぅ」
と、ユウナは涙目でティーダの指を咥える。つい先程まで憎まれ口を叩いていたユウナの淫らな様にティーダは喉を鳴らした。
「ううん、あやまらなくていい」
ティーダはユウナの唇から二本の指を引き抜いた。砂地に両膝をついてファスナーを下ろすと分身を取り出し、ユウナをその膝に座らせる。
「俺のこと欲しがってくれて嬉しいよ」
と、分身の裏でユウナの粘膜を撫でる。潤いきったそこはティーダのものを呑みこみたそうに涎を流す。ぬちぬちと鳴る水音がふたりを興奮させる。
「や、えっちな音、してるぅ、んんっ」
「しょうがないよ、ユウナがいっぱい感じてるから」
小さな突起を裏の雁首で捕えると切なげな声が上がる。
「だって、キミがいやらしいこと、いっぱい、んぁ、するんだもん、そこダメ、はぁっ」
「ここ、いいの?」
「ん、うん、ぁあっ」
「入れなくてもいいの?」
「うん、でも、入れなくちゃダメ、ふぅ、ティーダの、わたしの奥まで、はぁっ、入れて」
ユウナは、肩で息をしながら、腰を浮かせる。自然と開閉する粘膜へティーダを誘導する。
「なぁ、ユウナ、俺と繋がりたいから、奥まで欲しいの?召喚しなきゃだから、奥まで欲しいの?」
ユウナは腰を下ろそうとしたが、尻をティーダに持ち上げられ、先端だけが口にあてがわれている。おあずけをくらったユウナは、身震いした。最奥はティーダの熱い塊に突き上げられたいと疼いている。
「そんなの、わからないよ、でも、奥、されたいの、わたしの奥まで、はぁ、キミに、して欲しいの」
浮かされていた尻がティーダの手により下げられる。ゆっくりと広げるように下ろされ、最奥に到達するまでにユウナは達してしまった。声にならない嬌声を上げ、白く細い腕は、日焼けした肩にしがみつく。強烈な圧迫と収縮がティーダの腰の力を吸い上げるが、強い快感から逃れたティーダは、ふっと笑った。
「ダメだよ、ユウナ、一番奥まで行ってないのに、これくらいでいっちゃったらダメだよ」
「だって、いつもよりおっきぃ、んっはぁん、あっ、そんなおっきのに、いっぱいひろげちゃぁ、ん、ぁ、ティ、ダぁ、あっ」
ユウナを支える大きな膨らみをティーダはいたずらに揉み広げる。腰を動かすことなく、高さと角度を変えられているだけだというのに、その微かな擦れが堪らない。ユウナは弄ばれ、悦びの声を上げる。
「ティーダ、気持ち、い?」
潤みきった瞳と甘えた声は、完全に雌に堕ちた証だった。
「うん、いいよ。ユウナがいいと、俺もいいから……」
ねっとりと口づけ、離した唇に透明の糸を引かせる。ようやく全部が包まれると、その熱に視界をぼやかされた。このまま放ってしまいたい。硬さを増したそれがユウナの奥へと揺れる。
「ぁん、深いよぅ、んっ、これ以上、奥、したら、またすぐいっちゃっ、ふぁっ、あん」
ユウナの声に正気を戻され、彼女の細い腰を掴む。
「ダメだよ、ユウナ。召喚するから、俺のこと想って、んっ」
突き上げたままユウナの腰を揺らすと、ユウナの口端から涎が流れた。嬌声を上げるだけで、唇は閉じることを忘れたらしい。
ごめんな、ユウナ。召喚士のユウナも、カモメ団のユウナも、ビサイドで育った女の子のユウナもかわいくて好きだけど、俺が一番好きなユウナって、このユウナなんだ。すべての柵から解き放たれた、ただの女になったユウナが、俺のことしか考えてないユウナが、たまらなく愛しい。
「はぁっ、んん、くっ、ユウナっ」
こうしてると俺が何者であるかなんてマジでどうでもよくなる。俺は男で、女であるユウナに、こんなに愛されてるって、実感できる。一瞬でいい。この時が、永遠じゃなくていい。俺を認めてくれるユウナがいる。それが俺の現実なんだ。現実に立ち向かおうとするユウナのかけがえのない男になれたら、この物語は、誰かの夢のティーダじゃないただのティーダという男のものになる。邪魔をするならとことんやってやる。相手が誰であろうが何であろうが、完全に叩きのめしてやる。俺は愛する彼女と平凡な毎日を暮らしていきたいだけだ。時々、こうやって性愛に溺れたいだけのどこにでもいるようなただの男だ。
「はぁ、ユウナ、もう、いい?奥で出すな」
「ぅんっ、ティーダの、いっぱい、ぁあっ、欲しぃ」
「俺の、いっぱいユウナにあげるよ、く、あっ、ユウナ……!!」
より深い召喚のための同調はできなかった。一足先に意識を手放したのはユウナのほうだった。
まだまだ修行足りないんじゃないの?
ティーダはユウナの身なりを整え、眠るユウナを膝に乗せて抱き締める。
はぁー。やっちゃったな。やっぱり罪悪感。なんで毎回後ろめたい感じになるんだろ。俺はただユウナと愛し合ってるだけなのに。あーあ、また次の日に怒られたりすんのかな。だいたい怒られるもんな。ユウナだって気持ちいいんだから怒る必要なんてないだろ。あんま怒ってばっかだと、もうえっちしてやんないぞー。
腕の中のユウナの鼻をきゅっと摘まんで放した。もぞっと動いたユウナがかわいらしい。
て、そんなの俺のほうが無理に決まってる。毎日毎日ちょっかい出してるけど、これでもセーブしてるんだ。これ以上セーブするなんて考えられない。あ、そうだ。なかったことにしてみるとか?ユウナに切り出されたら、俺はとぼける。んで、知らないふりを貫く。……ていうのもなぁ。なかったことになんてしたくない。ユウナと一緒にすごす時間は、ただの一秒も忘れたくない。忘れるのは、辛い思い出だけでいい。けど、ユウナなら辛い思い出も大切な思い出って言うんだろうな。真面目だよな。そういう曲がらないところも俺は好きだけど、もうちょっと好き勝手に生きてもいいと思うんだけどなー……。
「ん……」
身じろぐユウナの髪が頬を掠め、くすぐったくなる。
「ユウナ、完全に寝ちゃってる?」
すっかり寝入ってしまっているユウナは気持ちよさそうな寝息を立てている。ティーダは村へ帰ろうとユウナを背負った。村までの道中、千年前には稼働していたであろう機械を眺め、ひと月前の出来事を思い出した。あの幻の島に上陸した時のことを。
千年前の記憶をなくした死人。千年前の死人の召喚士と召喚獣。それと、カモメ団が異界へ送り届けた千年前の恋人たち。なんでみんな未練タラタラで千年もさまよってんだ?ああ、それだけ酷い戦争だったってことか。……うーん、なんか他にもウヨウヨいそうだよな、千年前の亡霊。あ、俺もその仲間か。千年前の夢だったもんな。あのザナルカンドに戻らずにスピラに戻ってきたっつても、やっぱ俺って普通の人間じゃないんだろな。普通の人間なら頭で思い描いた場所に飛んで行けるとか、ないもんな。ま、いっか。多分、それはユウナを助ける強みになる。他にもなんかないかな、ユウナの助けになるようなこと。あっ、魔法。クシュがやってた魔法、あれって俺にもできないかな。でも、あれって……。
『魔法をかけた。行きたいところへ行ける魔法。でも、気をつけて。あまり時間をかけてはダメ。あなたはあなたではなくなってしまう。最初は些細なこと、でもそのうち大事なものまで無くしてしまう。あなたのことを知っている人を大事にしてね。さあ、早く。魔法が解けないうちに』
て、クシュが言ってた。
『悪いな。あちこち飛びすぎて、いろんなものを無くしてしまったようだ。どうして最初にここだと気づかなかったのか』
クシュがいた部屋に飛んできたブライアは嵐の前に会話した俺のことを忘れていた。同じ村に住んでたユウナのことも忘れていた。
『イファーナルの魔法は、強力だったね』
て、ユウナが言ってて、魔法をかけられたことがあるブライアはあの時、全部を思い出してた。魔法がかかっていると、飛べたり、記憶をなくしたりする。魔法が解ければ記憶は戻るけど、些細な出来事の記憶はなくしたりする。で、幻光に敏感な召喚士だと魔法は強力ってこと?あ、でもクシュも召喚士だったんだよな。……うーん、かける人や場合によって効力が変わってくる?
「あー!わっかんねーや!」
ティーダがユウナを背負って入村し、夜空を仰ぐと馴染のある声がした。
「なーにがわかんねーんだ」
不機嫌なワッカの声だ。
「あ。」
「あ。っじゃねーよ、遅くまでユウナを連れまわしてんじゃねえ。ユウナはおまえとの時間を作るために、昼間頑張ってんだからよ。少しは労わってやれ」
「了解ッス」
ワッカはティーダの背中にいるユウナの顔を覗き込む。
「おうおう、よーく寝てんなぁ」
「あ、うん……」
ティーダのばつの悪そうな顔にワッカの片眉が上がった。
「おまえ、さてはやってきたな」
ぎくりとしたティーダはワッカの顔を見れなかった。
「な、何を?」
「あぁん?ナニだろ」
「え。なんでわかんの」
「そんなの見りゃわかんだろ。男が半裸で服を小脇に抱えてたら、ああ……ってなんだろが。お外で致しましたって丸わかりだ。昼間にそんなナリして帰ってくんじゃねーぞ。また年寄りたちに疎まれる」
「以後気をつけるッス」
軽く下がったティーダの頭をワッカは鷲掴んだ。
「おまえたちが無事なら俺はなんでもいいんだ。ま、仲良くやれよ」
無事なら――心配させてしまったことを悔いる。頭上のワッカの手が離れ、自宅に向かうワッカの背中に礼を言う。
「ごめん。ありがとう、ワッカ!」
ワッカは振り返らずに手を振り、自宅である天幕へと入っていった。ふと近所の天幕の中からこちらを窺っている気配がする。
ああ、みんな、ごめんなさい。心配かけてすみませんでした。ユウナとティーダは無事にただいま帰りました。そうだよな、みんな、心配になるよな。村の宝であるユウナの行方不明事件からまだ一か月しか経ってない。そのうち半分はザナルカンド遺跡旅行。みんなのユウナを俺が独占した。建前じゃ俺のこと認めないって云ってるけど、本音じゃ俺のこと認めてくれてんだよな。ありがとう。はは、なんか泣きそう。俺がいたザナルカンドでは、たまに近所の人と挨拶程度の会話はしても、こうじゃなかったもんな。ここは、みんなが関わり合う。近所の他人じゃなくて、近所の家族。ビサイドの人は、なんだかんだでみんなあったかくて優しいんだ。こんなの知っちゃったら、大切にしたくなるよな。守りたくなる。俺に、その力があるならの話だけど。
寺院へ向かい、ユウナの部屋のベッドに彼女を寝かせて毛布を掛ける。
「ユウナ」
眠る彼女の名を呼ぶ。が、返事は寝息だ。
ごめんな、ユウナ。気づいてなかったのに、俺が変なこと言ったりしたからユウナの体が綻んだ。本当にごめん。今のユウナが、俺と同じ感じでスピラに存在してるなら、大丈夫だよ。消えるかもしれないなんて、怖がらなくていい。俺たちは、消えない。俺がユウナのことを、ユウナが俺ことを、大事に想ってるから。たとえ男女の絆が途絶えても、どんなに離れていようとも、万が一、俺がまたバラバラになろうとも、このスピラからユウナを消したりなんかしない。ユウナの地味な暮らしは俺が守ってやる。何がなんでもだ。
ティーダは鼻を啜った。あふれそうになる涙を堪えきれず、頬に伝わせる。
「はは、ごめん。地味はなかったな、普通の暮らしだったな……っく」
ダメだな、俺。さっきあんなにユウナを抱いたのに、今、目の前で寝てるっていうのに、また恋しくなってる。俺、女でダメになるタイプの男だったのかよ、くそっ。
ティーダは、膝の上の手の甲に落ちた涙を振り切るように自分の膝をその拳で打った。
「泣いてるの……?」
いつの間にか寝返りを打っていたらしいユウナは、ティーダに背を向けたまま訊ねた。
「ああ、えっと。スピラに戻って来れた喜びを噛み締めてたところ」
雑に涙を拭ったティーダはベッドに上がる。ユウナの背後にぴたりと体を寄せる。ユウナの腰に腕を回し、ユウナの胸の前の手をティーダが握る。
「うそ」
「うそじゃないよ」
「ううん、うそだよ」
「うん、うそ」
否定していたはずのティーダの軽い口調の肯定にユウナの気が揺れる。
「何それ」
「怒った?」
「ううん」
無愛想な否定にティーダは思わず笑みをこぼす。
「なんか急に寂しくなった。ユウナがすぐそばにいるのに、遠い。みたいな?」
「どうしてそんなふうに思ったの?」
「どうしてだろう、自分でもよくわからない」
「うん」
「え?それだけ?ないの?ブリッツしてる時のキミはかっこいいからわたしもそんなこと感じたことあるよ、とか」
「自分で言っちゃうんだ」
くすくす笑うユウナの髪がティーダの鼻を擽る。
「ユウナ、そういうのあんま言ってくれないからさ。俺ばっかり村のじいさんばあさんに嫉妬してるっつーかさ」
「ふふ、わたしもそんなふうに思ったことあるよ。キミの言う通り、いつもブリッツに嫉妬してる。けど、今は大丈夫。キミがこんなに近いから、すごく安心する」
弾んだ声にティーダの心が安らぐ。
「うん……」
ああ、守りたい。ユウナを巻き込もうとするすべてのことから守りたい。辛いこと、悲しいことで泣かせたり、傷つけたりしたくない。
「あのさ、ユウナ、俺に魔法かけて」
『魔法』の言葉にユウナの瞳が動きを止める。
「クシュとかイファーナル?とかがやってたやつじゃなくて、愛の魔法。不安を吹き飛ばすようなキス。……ダメ?」
「それって、愛の魔法っていうより、ただキスがしたいだけとか?」
「あ、バレた?」
「キスならさっきいっぱいしました」
「そう言わずにさぁ」
情けない声が同情を誘う。同情をしてもらってのそれでも愛の魔法となるのかは怪しいが、ユウナはティーダの腕の中で体を回転させた。ティーダの肩を押し倒すと、髪を耳にかけ、口づける。浅い口づけは次第に深くなり、互いの口端を濡らす。唇を離したユウナは自分の濡れた唇を拭った。恥ずかしくなったのか、視線を逸らせながら顔を赤くするユウナがとてもかわいらしい。にこりと笑ったティーダはユウナを抱いて寝かせる。
「今度は俺が魔法をかけるよ」
真剣な眼差しでユウナの両手を握り、ベッドへ軽く縫いつける。
「え、なに」
構えるユウナの唇は塞がれ、その口づけは急速に深くなる。
この『魔法』が本当に効くのかわからない。俺に高度なことはできない。多分、感覚的にできてるだけ。だから、想うだけ。自分がどういう状態だったからあの幻の島に上陸できたとか、俺とユウナが噛みあわなかったのは二年のブランクだけじゃなくて『些細なこと』を忘れていたからだとか、ソレと、ソレに繋がることだけを思い出さないで欲しい。まだダメなんだ。俺たちの絆はまだ浅い。もっと深い絆になるまででいい。その時までどうかこの『魔法』を解かないで欲しい。
ティーダは願い、ユウナに唾液を注いだ。
「んっ……」
とろりとした色違いの瞳が膝を摺合せ、物欲しそうにティーダを見上げる。ティーダはそれを知らぬ顔でユウナに毛布を掛け直した。面白くなさそうなユウナの顔に堪えきれず笑みをこぼす。
「ごめん。ユウナがすごくかわいいけど、もう一回は無理。時間も遅いし、多分、加減ができない」
「でも……」
拗ねるユウナの額を撫でる。
「俺もすごく好きだよ。ありがとう」
額に口づけ、体を起こすとユウナの両手に右手が掴まれた。
「待って。どこ行くの?」
不安気な表情に言葉の選択を間違えたことを後悔する。
「ああ、大丈夫。便所に消えるだけだから。俺自体は消えない。便所行って、すっきりして寝るッス。だから、消えるのは俺から出たウンコ……」
品のないティーダの返答にユウナは掴んでいた右手を振り放した。
「あはは、ごめん。また明日。おやすみ!」
ティーダは笑顔で手を上げ、ドアを開ける。ユウナが返事するのを待っているとベッドの毛布からおやすみなさいと声がした。静かにドアを閉め、一息つく。
うーん。魔法、効いてんのかなぁ。感じてはいたけどな。やっばいなー。ユウナ、どんどん感じやすくなっていってない?単に俺がエロいだけかな。それはさて置き。効いてたとしたら魔法が解けた時、こってり絞られるんだろうな。けど、どうせならなら絞られるんじゃなくて、ユウナのあったかいところに搾られたいよな。
――なんて、バカなことを考えていたバカな俺のことを搾りはしなかったけど、しっかり絞ってくれた。あんなに泣かれるなら、怒鳴られたり殴られたりしたほうがましだった。反省してます、エボナー導師ユウナ様――
秘密
Text by mimiko.
2014/11/14