FFX
FFX-2 100%コンプリートシークレットED
FFX-2.5~永遠の代償~
FFX/X-2HDリマスターCREDITS&BONUS AUDIO
以上の4点前提。
ユウナ視点。CREDITS BONUS AUDIOベース。
妄想補完ありの捏造もりもりです。
FFX-2 100%コンプリートシークレットED
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以上の4点前提。
ユウナ視点。CREDITS BONUS AUDIOベース。
妄想補完ありの捏造もりもりです。
贖罪
ビサイド島の集落にある一際大きく古めかしい建物。その建物の奥深く、ひやりとした空気を纏った部屋にユウナはいた。薄暗くはあるが完全なる闇ではない。ユウナの他に人はいないが、周囲に小さな光が飛び交っている。幻光虫はユウナと会話するように舞った。
スピラの平和を脅かす魔物シンと対峙するための旅の途中、シンを倒す唯一の手段である究極召喚をユウナレスカより授かろうとザナルカンドを訪れた。エボン教最高指導者であるヨ=マイカの言う通り、シン復活を防ぐ術はないと知らされた。
――悲しくても……生きます。生きて、戦って、いつか!今は変えられない運命でも、いつか……必ず変える!まやかしの希望なんか、いらない……――
だが、自分は今、そのまやかしの希望になっている。ユウナは自らの体から剥がれ舞う幻光の青い輝きに目を細めた。慰めるようにユウナの目の前に飛んできた別の幻光に手を伸ばし、瞳を閉じる。自分の一部になってくれないかと願うように念じると幻光はユウナの手の平から浮かびあがり、ユウナの周囲を旋回して体に融け込んだ。
「ごめんね……、ありがとう……」
本来ならば異界へ還り、異界の花となって次の新しい生を受けるはずの幻光虫である。ユウナは、その異界へ還らねばならぬ幻光の密度をある程度、保たなければスピラに存在できない。エボンの教えでいう禁忌を犯してのことだ。死して尚、スピラにとどまる者――死人(しびと)。気づいてしまったのはエボンの祈りに変わる新しい祈りを具体的に考え始めた時だった。
機械戦争の悲劇から長き時を経て巡り合えた召喚士とその恋人。想いはひとつになり、その魂が異界へと還るのを見届けた時、これで自分のスフィアハンターの旅は終わりだと感じ、納得した。もともとは彼を探す旅だ。手がかりを求め、彼との再会を信じてリュックとパインと一緒にスピラを飛回った。結局、祈り子たちの夢の世界からやって来た彼の手がかりは見つからず、再会はならないのだと知った。けれど、彼はスピラに帰還した。スフィアハントの旅からビサイドへと帰ったその時に。
ただただ嬉しかった。ずっと会いたかった人がいる。ずっとただの恋人として触れ合いたかった人が手を伸ばせば届くところにいるのだ。急ぐ旅はもうしていない。時間はいっぱいある。積もり積もった話はどこから話せばいいのかわからないくらいだった。けれど、ティーダと話せるまでに時間がかかった。
家出同然のように村を飛び出し、旅に出た。その旅の途中、こっそり戻っては、こっそりと村を出て旅を再開させていた。そんなことをしていては、幼い頃から孫同然に育ててもらった村の年配者たちも黙っていてはくれない。心配をかけた分、しぼられるのは当然のこと。しかし、それだけではなかった。
エボンの教えに従順であった世代は世間の変化に戸惑う。永遠のナギ説をもたらすという歴代の大召喚士以上の偉業をなしとげた大召喚士ユウナとなれば、たとえユウナが若い世代であっても年配者の話をゆっくりしっかり聞き入れ、答え、自分たちを導いてくれるだろうという期待の眼差しが向けられたのだ。やはり、それを無下にはできない。これまでいろんな経験をし、内面も変化したユウナだったが、頼まれたら断れない性分は不変とするところだ。新しい祈りを考えようと約束すると、ようやく解放された。
とにかく、今すぐティーダに会いに行こう。嫁入り前の娘が、ましてや大召喚士ともあろう人物がそんなに肌を露出させるべきではないと、露出の少ない服をあれやこれやと着せられていた。ユウナは、最後に着た袖口と裾に赤い三角の模様が入った白地のローブを掴んで放した。どうぜならティーダの意見も聞いてみよう。
枷がなくなれば、足取りは軽い。再会直後に充分、抱き締めあったはずなのに、気持ちがそわそわとし、落ち着かない。この想いはどうすれば伝えられるのだろう。そんなことを考えながらティーダの居場所を村人たちに尋ねまわった。行きついたワッカには、まだ浜辺にいるのではないかと聞いた。オーラカのメンバーたちの冷やかす声に愛想笑いをし、もう誰にもふたりの時間を邪魔されたくないと思い、ひらめいたのが小貨物船を改造した練習船オーラカ・エース号だった。ワッカに利用許可をもらった後、彼に小声で冷やかされた。覚悟は決まったのか、あいつも喜ぶだろうな。言われて顔から火が出る思いだった。
オーラカ・エース号――別名、仲良し号。オーラカのメンバーたちが懇意になった異性と一夜を過ごすのに利用することがあり、いつの間にかそんな別名がついていた。
自分にその気はなかったが、そういうことなのだろう。おそらくティーダはあの船内を見て不思議に思うだろう。こちらが何も言わなければ気づかないかもしれない。変だと指摘されれば誰かの責任にして誤魔化すこともできる。実際、提案者がいたからあんな内装になった訳だ。今さら自らに言い訳する自分がおかしかった。ティーダが浜辺で待っているのも、すぐに脱げる服装でいたのも、仲良し号の今晩の予約が入っていなかったのも、ティーダへの想いを伝えたくて落ち着かない自分も、つまりはワッカの言う通りに覚悟ができていたのだ。
幸せな時間だった。ティーダの存在を強く感じ、心が満たされた。好きだと伝えたら、すっかり満足して次に新しい祈りのことを考えていた。こちらの変わり身の早さに不機嫌になったティーダ。その様子に互いのことをよく知らないのだと実感した。これから向き合っていけば互いにわかり合えるはずだ。朝までに村へ戻って、新しい祈りのことを考えて、ティーダといろいろなことを話す。時間はいっぱいあるのだから焦らなくていい。ちゃんと自分で考えてそれがいいと思ったらいいのだ。
けれど、翌日になっても自分たちのビサイドへは帰れなかった。
ティーダはいろんなヒントをくれていたが、気づかなかった。いや、無意識に考えないようにしていたのかもしれない。自覚してしまったら終わってしまうのだ。自分も例外ではない。気づいた途端、体から幻光虫がこぼれた。慌てて自分を召喚した。死人とは自らを召喚することなのだと実感した。もちろん、誰かに召喚された存在だとしても生者と見分けのつかない死人としてスピラにとどまることができるが。
祈り子の部屋の扉まで舞っていた幻光虫が知らせるようにユウナのもとへとやって来た。同時に部屋の扉が開かれる。
「ユウナ、客だ。出れるか?」
背後から声がして振り返るとワッカは心配そうにこちらを窺っていた。
ティーダには真実を告げられていないが、兄同然のワッカ、姉同然のルールーはユウナの秘密を知っている。また、元新エボン党議長で現スピラ評議会の評議長であるバラライも知っている。
嘘はつきたくなかった。訃報を流し、自分はいないものとしてくれと頼んだ。しかし、これから再び新しい時代が始まろうという時、スピラの危機を二度も救った人物の突然の訃報などまた世間が混乱する、主要グループの代表が行方不明になっただけでも大騒ぎだったのにだの、自らの死を受け入れずに異界へも還らない理由とスピラの人々を新しい時代へ送ってやること、どちらもあなたにとっては同等であり軽視できないはずだのなんだのと話し合いの場でうまくバラライに丸め込まれてしまった。
その時、悟った。エボン教や新エボン党、その主要人物の多くが死人でありながら、何故、スピラにとどまり続けたのか。そして、たった今、自分もその死と悲しみの螺旋の一部になってしまったのだと。
――変わらぬことこそエボンの真実。継続こそがエボンの真実――
ヨ=マイカが言ったことを思い出した。スピラの悲しみは、隠された真実は、まやかしの希望は、ほんの僅かに変化を取り入れながら繰り返される。どんなに抗おうとも変わらない。それでも来たるその時、自分は抗うのだろうか。
ワッカはまだユウナの様子を心配そうな表情で見ていた。
――あのさ、自分で言うのも変だけど……、召喚士とガードっていうのはスピラの希望の光、なんだよね。いろんな人が、わたしたちに注目してる。だから、落ち込んでるところとか、元気ないところとか……見せたく、ないんだ――
ユウナはにこりと笑った。
「大丈夫。もう、ワッカさんは心配性だな~」
と、ワッカの背中を軽く叩いた。
「なら、いいんだ」
部屋を出るユウナをワッカは追う。
「お客さんって、どんな人?」
「評議会送儀士クルグム。バラライの遣いだってさ」
スピラの平和を脅かす魔物シンと対峙するための旅の途中、シンを倒す唯一の手段である究極召喚をユウナレスカより授かろうとザナルカンドを訪れた。エボン教最高指導者であるヨ=マイカの言う通り、シン復活を防ぐ術はないと知らされた。
――悲しくても……生きます。生きて、戦って、いつか!今は変えられない運命でも、いつか……必ず変える!まやかしの希望なんか、いらない……――
だが、自分は今、そのまやかしの希望になっている。ユウナは自らの体から剥がれ舞う幻光の青い輝きに目を細めた。慰めるようにユウナの目の前に飛んできた別の幻光に手を伸ばし、瞳を閉じる。自分の一部になってくれないかと願うように念じると幻光はユウナの手の平から浮かびあがり、ユウナの周囲を旋回して体に融け込んだ。
「ごめんね……、ありがとう……」
本来ならば異界へ還り、異界の花となって次の新しい生を受けるはずの幻光虫である。ユウナは、その異界へ還らねばならぬ幻光の密度をある程度、保たなければスピラに存在できない。エボンの教えでいう禁忌を犯してのことだ。死して尚、スピラにとどまる者――死人(しびと)。気づいてしまったのはエボンの祈りに変わる新しい祈りを具体的に考え始めた時だった。
機械戦争の悲劇から長き時を経て巡り合えた召喚士とその恋人。想いはひとつになり、その魂が異界へと還るのを見届けた時、これで自分のスフィアハンターの旅は終わりだと感じ、納得した。もともとは彼を探す旅だ。手がかりを求め、彼との再会を信じてリュックとパインと一緒にスピラを飛回った。結局、祈り子たちの夢の世界からやって来た彼の手がかりは見つからず、再会はならないのだと知った。けれど、彼はスピラに帰還した。スフィアハントの旅からビサイドへと帰ったその時に。
ただただ嬉しかった。ずっと会いたかった人がいる。ずっとただの恋人として触れ合いたかった人が手を伸ばせば届くところにいるのだ。急ぐ旅はもうしていない。時間はいっぱいある。積もり積もった話はどこから話せばいいのかわからないくらいだった。けれど、ティーダと話せるまでに時間がかかった。
家出同然のように村を飛び出し、旅に出た。その旅の途中、こっそり戻っては、こっそりと村を出て旅を再開させていた。そんなことをしていては、幼い頃から孫同然に育ててもらった村の年配者たちも黙っていてはくれない。心配をかけた分、しぼられるのは当然のこと。しかし、それだけではなかった。
エボンの教えに従順であった世代は世間の変化に戸惑う。永遠のナギ説をもたらすという歴代の大召喚士以上の偉業をなしとげた大召喚士ユウナとなれば、たとえユウナが若い世代であっても年配者の話をゆっくりしっかり聞き入れ、答え、自分たちを導いてくれるだろうという期待の眼差しが向けられたのだ。やはり、それを無下にはできない。これまでいろんな経験をし、内面も変化したユウナだったが、頼まれたら断れない性分は不変とするところだ。新しい祈りを考えようと約束すると、ようやく解放された。
とにかく、今すぐティーダに会いに行こう。嫁入り前の娘が、ましてや大召喚士ともあろう人物がそんなに肌を露出させるべきではないと、露出の少ない服をあれやこれやと着せられていた。ユウナは、最後に着た袖口と裾に赤い三角の模様が入った白地のローブを掴んで放した。どうぜならティーダの意見も聞いてみよう。
枷がなくなれば、足取りは軽い。再会直後に充分、抱き締めあったはずなのに、気持ちがそわそわとし、落ち着かない。この想いはどうすれば伝えられるのだろう。そんなことを考えながらティーダの居場所を村人たちに尋ねまわった。行きついたワッカには、まだ浜辺にいるのではないかと聞いた。オーラカのメンバーたちの冷やかす声に愛想笑いをし、もう誰にもふたりの時間を邪魔されたくないと思い、ひらめいたのが小貨物船を改造した練習船オーラカ・エース号だった。ワッカに利用許可をもらった後、彼に小声で冷やかされた。覚悟は決まったのか、あいつも喜ぶだろうな。言われて顔から火が出る思いだった。
オーラカ・エース号――別名、仲良し号。オーラカのメンバーたちが懇意になった異性と一夜を過ごすのに利用することがあり、いつの間にかそんな別名がついていた。
自分にその気はなかったが、そういうことなのだろう。おそらくティーダはあの船内を見て不思議に思うだろう。こちらが何も言わなければ気づかないかもしれない。変だと指摘されれば誰かの責任にして誤魔化すこともできる。実際、提案者がいたからあんな内装になった訳だ。今さら自らに言い訳する自分がおかしかった。ティーダが浜辺で待っているのも、すぐに脱げる服装でいたのも、仲良し号の今晩の予約が入っていなかったのも、ティーダへの想いを伝えたくて落ち着かない自分も、つまりはワッカの言う通りに覚悟ができていたのだ。
幸せな時間だった。ティーダの存在を強く感じ、心が満たされた。好きだと伝えたら、すっかり満足して次に新しい祈りのことを考えていた。こちらの変わり身の早さに不機嫌になったティーダ。その様子に互いのことをよく知らないのだと実感した。これから向き合っていけば互いにわかり合えるはずだ。朝までに村へ戻って、新しい祈りのことを考えて、ティーダといろいろなことを話す。時間はいっぱいあるのだから焦らなくていい。ちゃんと自分で考えてそれがいいと思ったらいいのだ。
けれど、翌日になっても自分たちのビサイドへは帰れなかった。
ティーダはいろんなヒントをくれていたが、気づかなかった。いや、無意識に考えないようにしていたのかもしれない。自覚してしまったら終わってしまうのだ。自分も例外ではない。気づいた途端、体から幻光虫がこぼれた。慌てて自分を召喚した。死人とは自らを召喚することなのだと実感した。もちろん、誰かに召喚された存在だとしても生者と見分けのつかない死人としてスピラにとどまることができるが。
祈り子の部屋の扉まで舞っていた幻光虫が知らせるようにユウナのもとへとやって来た。同時に部屋の扉が開かれる。
「ユウナ、客だ。出れるか?」
背後から声がして振り返るとワッカは心配そうにこちらを窺っていた。
ティーダには真実を告げられていないが、兄同然のワッカ、姉同然のルールーはユウナの秘密を知っている。また、元新エボン党議長で現スピラ評議会の評議長であるバラライも知っている。
嘘はつきたくなかった。訃報を流し、自分はいないものとしてくれと頼んだ。しかし、これから再び新しい時代が始まろうという時、スピラの危機を二度も救った人物の突然の訃報などまた世間が混乱する、主要グループの代表が行方不明になっただけでも大騒ぎだったのにだの、自らの死を受け入れずに異界へも還らない理由とスピラの人々を新しい時代へ送ってやること、どちらもあなたにとっては同等であり軽視できないはずだのなんだのと話し合いの場でうまくバラライに丸め込まれてしまった。
その時、悟った。エボン教や新エボン党、その主要人物の多くが死人でありながら、何故、スピラにとどまり続けたのか。そして、たった今、自分もその死と悲しみの螺旋の一部になってしまったのだと。
――変わらぬことこそエボンの真実。継続こそがエボンの真実――
ヨ=マイカが言ったことを思い出した。スピラの悲しみは、隠された真実は、まやかしの希望は、ほんの僅かに変化を取り入れながら繰り返される。どんなに抗おうとも変わらない。それでも来たるその時、自分は抗うのだろうか。
ワッカはまだユウナの様子を心配そうな表情で見ていた。
――あのさ、自分で言うのも変だけど……、召喚士とガードっていうのはスピラの希望の光、なんだよね。いろんな人が、わたしたちに注目してる。だから、落ち込んでるところとか、元気ないところとか……見せたく、ないんだ――
ユウナはにこりと笑った。
「大丈夫。もう、ワッカさんは心配性だな~」
と、ワッカの背中を軽く叩いた。
「なら、いいんだ」
部屋を出るユウナをワッカは追う。
「お客さんって、どんな人?」
「評議会送儀士クルグム。バラライの遣いだってさ」
贖罪
Text by mimiko.
2014/01/05