第三百十三訓近妙補完計画と題して2010年WJ29号をがっつりネタバレ。
既読前提の補完話です。
既読前提の補完話です。
雨が降ろうと槍が降ろうと
私、どれだけ物珍しいことしたのよ。
長い人生のうちに隕石落下の場に遭遇するなんて、そうそうないことよね?
「こっちに一直線に向かってくるわ!!」
「オイ、スゲーピンポイントで狙ってくるぞ」
ちょっと待って、私の人生もっと長いわよね?
ここで短い人生終えるなんてことないわよね?
「いえ。代打、近藤でお願いします」
待ち合わせの時間に遅れてきたら今までになかった程に叩きのめしてやろうと思っていた。
でも、すでに何かに叩きのめされたような出で立ちだった。
運命だとか天道だとか侍道だとか言いながらバットを振ったけど、魂におさまっていた真っ直ぐな剣が振られるのを見た気がした。
ないとスゴーク困るチケットを探しながら、とても急いでいたみたいだったのに、引きこもりだったお兄さんと行方不明で記憶喪失だったお父さんを助けてもらったと、サチ子ちゃんという女の子から聞いた。
「お姉さん、はい。ハンカチ濡らしてきたよ」
「ありがとう」
先程、サチ子ちゃんに預けた自分のハンカチを受け取り、私の膝を枕にして寝かせた近藤さんの額に濡れたハンカチを載せた。
今日は休みで、制服も着ていないし、帯刀もしていない。
大好きな私と初めてデートをするというのに、待ち合わせの時間には遅れるし、私が危ない目に遭おうものなら 微妙な助け方で結局、被害を受けさせられるし……。
この人は何がしたいのよ。
「う……ん……」
目を覚ました近藤さんは額のハンカチを手に取って私を見上げた。
「えっお妙さん?!アレ?夢じゃなかったの?」
間の抜けた声と表情に、つい、鼻に向かって拳を落とす。
「ぶゥゥ!ゆ、夢じゃない、れすね……」
「はい、夢じゃありませんよ。ああ、でも待ち合わせ時間に遅れたことを夢にしたかったのかしら?」
「え、あ、いや、その……」
近藤さんは何も言えないのを誤魔化すように、外していたハンカチを再び額に当てて目を閉じた。
「すみません。……返す言葉もありません」
バカな人。
言い訳くらいすればいいのに。
「心配したんですよ……」
帽子を被っていたためによれていた近藤さんの髪を撫でる。
「え……」
「雨が降ろうと槍が降ろうと必ず行きましょう!何が何でも行きましょう!って言ったの近藤さんでしょう?」
約束をした時のことを思い返して笑みを零す。
「ありがとうございます……」
下から伸びてきた大きな手が私の頬に触れた。
「もう懲りたかもしれませんが、俺はやっぱり諦めません。運命が俺たちを別つとも俺は決して諦めないし、お妙さんが好きだ。それは何モノにもネジ曲げられない。たとえお妙さんが俺をキライであっても変わりはしない。俺は君が好きだ」
ひとつも視線を逸らさず、言った後もじっと見つめられる。
心の中まで覗かれているように感じて、その両目を指で突いてやった。
「うォォォ!目がァァ目がァァァァ!」
「私はもう散々に凝りました!」
前触れなく膝枕を外し、立ち上がる。
「ぐォォォ!今度は頭がァァいや、やっぱ目がァァァァ!」
近藤さんは両目と後頭部を痛がって転がり回っていたけど、私は鼓動の速さが尋常じゃなくてそれどころじゃなかった。
長い人生のうちに隕石落下の場に遭遇するなんて、そうそうないことよね?
「こっちに一直線に向かってくるわ!!」
「オイ、スゲーピンポイントで狙ってくるぞ」
ちょっと待って、私の人生もっと長いわよね?
ここで短い人生終えるなんてことないわよね?
「いえ。代打、近藤でお願いします」
待ち合わせの時間に遅れてきたら今までになかった程に叩きのめしてやろうと思っていた。
でも、すでに何かに叩きのめされたような出で立ちだった。
運命だとか天道だとか侍道だとか言いながらバットを振ったけど、魂におさまっていた真っ直ぐな剣が振られるのを見た気がした。
ないとスゴーク困るチケットを探しながら、とても急いでいたみたいだったのに、引きこもりだったお兄さんと行方不明で記憶喪失だったお父さんを助けてもらったと、サチ子ちゃんという女の子から聞いた。
「お姉さん、はい。ハンカチ濡らしてきたよ」
「ありがとう」
先程、サチ子ちゃんに預けた自分のハンカチを受け取り、私の膝を枕にして寝かせた近藤さんの額に濡れたハンカチを載せた。
今日は休みで、制服も着ていないし、帯刀もしていない。
大好きな私と初めてデートをするというのに、待ち合わせの時間には遅れるし、私が危ない目に遭おうものなら 微妙な助け方で結局、被害を受けさせられるし……。
この人は何がしたいのよ。
「う……ん……」
目を覚ました近藤さんは額のハンカチを手に取って私を見上げた。
「えっお妙さん?!アレ?夢じゃなかったの?」
間の抜けた声と表情に、つい、鼻に向かって拳を落とす。
「ぶゥゥ!ゆ、夢じゃない、れすね……」
「はい、夢じゃありませんよ。ああ、でも待ち合わせ時間に遅れたことを夢にしたかったのかしら?」
「え、あ、いや、その……」
近藤さんは何も言えないのを誤魔化すように、外していたハンカチを再び額に当てて目を閉じた。
「すみません。……返す言葉もありません」
バカな人。
言い訳くらいすればいいのに。
「心配したんですよ……」
帽子を被っていたためによれていた近藤さんの髪を撫でる。
「え……」
「雨が降ろうと槍が降ろうと必ず行きましょう!何が何でも行きましょう!って言ったの近藤さんでしょう?」
約束をした時のことを思い返して笑みを零す。
「ありがとうございます……」
下から伸びてきた大きな手が私の頬に触れた。
「もう懲りたかもしれませんが、俺はやっぱり諦めません。運命が俺たちを別つとも俺は決して諦めないし、お妙さんが好きだ。それは何モノにもネジ曲げられない。たとえお妙さんが俺をキライであっても変わりはしない。俺は君が好きだ」
ひとつも視線を逸らさず、言った後もじっと見つめられる。
心の中まで覗かれているように感じて、その両目を指で突いてやった。
「うォォォ!目がァァ目がァァァァ!」
「私はもう散々に凝りました!」
前触れなく膝枕を外し、立ち上がる。
「ぐォォォ!今度は頭がァァいや、やっぱ目がァァァァ!」
近藤さんは両目と後頭部を痛がって転がり回っていたけど、私は鼓動の速さが尋常じゃなくてそれどころじゃなかった。
雨が降ろうと槍が降ろうと
Text by mimiko.
2010/06/23