第三百十三訓近妙補完計画として2010年WJ29号をがっつりネタバレ。
既読前提の補完話です。

不屈の精神に乾杯

――たとえ剣を捨てる時が来ても魂におさめた真っ直ぐな剣だけはなくすな――
 父上が言っていた。
 新ちゃんが何かを感じたあのチャランポラン侍は、魂に真っ直ぐな剣をおさめていて、私は幾度かそれ見たことがあった。
 普段は本当にグータラでチャランポランなのに。
 変な人。
 好きだったかどうかわからない。
 だた、あの人はどちらかと言えば待ってる人だから猿飛さんのようなどんどん向かってくる人の方が合ってるのかもと思った。
 何度もへこたれずに当たって砕ける不屈の精神。
 ああも、なりふり構わず迷わず想いを告げるだなんて私には真似できないわ。
 思えばあのゴリラも第八訓で登場してからずっと私につきまとってる。
 好きだの、つき合ってくれだの、結婚してくれだの、毎日毎日、飽きもせず、懲りもせず。
 警察のくせしてストーカー。
 そのくせ隊士の信頼を集める情に厚い真選組局長。
 地位も名誉もあるのに錆びれた町道場の娘に入れ上げて、勤め先のキャバクラで給料の大半を落として行く。
 変な人。
 好きかどうかなんてわからない。
 だけど、あのゴリラを叩きのめすのは私の日常。
 いなくなればきっと私の日常は変わる。
 気まぐれかも知れない。
 けれど、一度ちゃんと向かい合うのもいいかも知れないと思った。
 第三百十三訓になって私は言う。
「いいですよ。私、実は結構野球好きなんです。私でよければご一緒させてもらいます」
不屈の精神に乾杯
Text by mimiko.
2010/06/23

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