銀魂NL版深夜の60分一本勝負(https://twitter.com/GntmNL60m)11月11日(水)付のお題。

ポッキー

 テーブルのロンググラスには、ポッキーが十一本。グラスもポッキーも冷え冷えである。各席の客と女性従業員は楽しそうにポッキーを摘まんでは酒を飲んでいる。もちろん、ポッキーの両端を口に咥えてかじり合うゲームに興じている席もある。
 妙は隣に座る近藤を見た。普通にポッキーを食べている。てっきりポッキーゲームを申し込まれると思っていただけに肩すかしを食らった気分だ。
「近藤さん、ポッキー、美味しいですか?」
「はい、とっても美味いですね」
と、新たにポッキーを摘まんでかじった。思い出し笑いをした近藤は笑みを含みながら話す。
「夏の日にね、総悟がポッキーくれたんです。箱を開けていざ食べようとしたら、チョコレートが溶けてポッキー全部が溶けたチョコレートで連なっててね。でも、折角、もらったんだしって、食べたんです。そしたら口も手もチョコレートまみれになっちまって。おまけに溶けたチョコレートがすげェ甘くて、やっぱりチョコレートはちゃんと固まってるほうがいいなァって……」
 話しながら食べていたためにポッキーは残り一本となっていた。最後の一本を摘まんだ近藤は、妙からの視線を感じて微笑んだ。
「すみません。俺ばっか食ってて。どうぞ」
と、摘まんだポッキーを口元に運ばれた。
「えっ、私はいいです」
「そですか?なんか視線が鋭かったからポッキー狙ってたのかなって思って……」
と、妙の口元から自分の口元へと持ってくる。近藤は妙の視線がポッキーにあることに気づいた上で口を開いて食べる振りをした。妙の唇が自然と開き、近藤は内心で笑みをこぼし、開いている口にポッキーを差し込んだ。ポッキーを歯に当てて折る。妙は目を丸くしながらポッキーを食べ、抗議する。
「もう、私はいいって言ったのに」
 近藤は悪戯が成功して嬉しそうだ。
「でも、美味いでしょう?」
「美味しいですけど……」
「残りもどうぞ」
と、笑顔で口元に運ばれ、妙は渋々、口を開いた。ポッキーを咥えて頭を軽く引くが、近藤は指を離さない。困った妙は眉を寄せた。それでも近藤は笑顔のままで指を離さない。妙はポッキーをかじって頭を離した。口元を覆って口の中のポッキーを飲み込む。再び抗議しようと口を開く妙の口元にまたポッキーが運ばれた。残りは全体の三分の一だ。笑顔のままの近藤は、どうぞと言っている。渋った妙だったが残り少ないからとポッキーをかじって行く。が、近藤の指はなかなか離れない。
 このままでは指に唇が触れてしまう。ここで負けるのも悔しい。それに、指だ。何も触れるのは唇同士ではない。しかし、男性の指を舐めるなんてはしたない。迷っているうちに唇が近藤の指に触れてしまった。妙の動きが停止する。
 妙が食べ進めている最中に近藤は指の力を緩め、肝心のポッキーはすでに食べきっていたのだ。
「あ……ハハハ、お妙さんの勝ちですね」
と、近藤は指を妙の唇から離し、その指を舐めた。舐めてから我に返った近藤は、両手を上げて弁明する。
「ちょッ!待って!お妙さん!コレは違うからッ!さっき言ってた総悟がくれたポッキーのアレだから!指についたチョコレート舐めながらポッキー食べてた癖がつい出ちゃっただけだから!最初から狙ってたわけじゃないから!」
 妙は無言で近藤の鼻を拳で打った。
ポッキー
Text by mimiko.
2015/11/11

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