「花より卵焼き」のつづきで3巻第十七訓「酔ってなくても酔ったふりして上司のヅラ取れ」のお妙さんと近藤さんが花見回コマの外でいちゃついてたらいいなという近妙妄想です。
花より卵焼き2
「ハーイ、お弁当ですよー」
朝から張り切って焼いていた卵焼きを詰めた重箱を差し出すと銀さんは姉弟水入らずのところに邪魔して悪かったなと謝った。
「いいのよ~。ふたりで花見なんてしても寂しいもの」
と、銀さん、神楽ちゃん、新ちゃんに微笑む。
「お父上が健在の頃はよく三人、桜の下でハジけたものだわ~」
昔を思い出して懐かしんでみるけどすぐに気を取り直して重箱の蓋を開けた。
私の作った卵焼きをアートだのかわいそうな卵だのと言う銀さんにお手製の栄養満点卵焼きをガパンと口いっぱいに差し上げると間もなくしてあの男がやって来た。
ガハハと豪快に笑って私の卵焼きをタッパーに入れておきなさいと言う。しかも私たちの座る敷物になんの違和感もないほどの配置でちゃっかり座っている。
来たわね、ゴリラ。呼んでもないのにどうしてやって来るの。
「何、レギュラーみたいな顔して座ってんだゴリラァァ!! どっからわいて出た!!」
手刀をドパンと左頬に打ち込んで差し上げると、たぱァ!! と悲鳴をあげてくれちゃって、うまくないのよ。ゴリラをミンチにしてタッパーに入れて差し上げてやろうかしら。ほんとムカつくわ、この人。前触れなく潜り込むんじゃなくて最初から花見に誘いなさいよ。私のことをモノにしたいならまずは正攻法で来なさいよ。
苛立ちが収まりきらなくて左頬へ打ち込んだ手刀の衝撃で倒れ込んだ近藤さんの上に跨る。軽く握った右手で左頬に水割り級の追加を差し上げた。それでも気が晴れなくて、強く握った右手でドンペリ級の追加を差し上げようとすると下から掠れた声がした。
「いてて……、すみません、お妙さん。最近、店行けなくて。今日の休みのために仕事片づけてたんです。今日は隊士たちの骨休めの日で、毎年恒例の行事……」
と、言ったきり近藤さんはこちらをまじまじと見ている。人の顔も見ずに適当な謝罪で済ませようというの? どうかしたのかと窺っているとどうも視線が低い。私の下のほうを見つめていて、そこでようやく我に返った。着物の裾ははだけて、間近で生足を披露してるばかりか、これじゃパンツまで見えてるんじゃというくらい両足を広げていた。だって足広げないと力入らないじゃない。じゃなくて、近藤さんに見られてる?! この至近距離で?!
顔が一気に熱くなって足を閉じた。また閉じたために力めなくて尻もちをつく。ついた先は近藤さんの上で、何か長細いモノが当たった。
「いやァ、こんなに過激な誘われ方をしたのは初めてですなァ。困っちゃうなァ」
と、仰向けに寝転がったまま自分の顎髭を指で撫でながら目を瞑る。
いやァァ!! 過激って何よ?! 別に誘ってないのにッ!! それにやっぱりムカつく!! そんな言い方するってことは、私以外の女に誘われたことがあるってことなの?! って、私は誘ってないけどッ!!
「見たんですか?」
意外に落ち着いた声が出て、恥ずかしさで慌てる自分とは別に冷徹な自分が今、同時に自分の中にいることに気づく。
そうよ、お妙、落ち着くのよ。
「いや、見てません。見えそうで見えないところがそそられるし、あの絶妙な捲れ方とあの絶妙な角度、あの白い美しい曲線、絶景でグフぅぅ!!」
こらえきれなくなって目を閉じたまま私の痴態を思い出しているであろう近藤さんの鼻に右ストレートを打ってやった。
やだ、もう、どこ見てるのよ。パンツ見られてなかったのは不幸中の幸いだけど、でも私、近藤さんの上に座ってるし、どうやって立ち上がったらいいの? 立ち上がる時に見られちゃったりしない? ……ていうか、長細いモノがずっと当たってて、さっきより存在感が出てきたような気がするんだけど……。
「あの、近藤さん、お聞きしてもいいですか?」
「はい、どうぞ」
「ポケットに何か入れてらっしゃいます?」
「いや、今日はズボンじゃなくて袴なんでポケットに何か入れたくても入れられませんけど」
「じゃあ、今、私が座っちゃってるところにあるモノって……」
横になって目を瞑ったまま首を傾げていたけれど、ふとひらめいたらしい近藤さんは軽く握った片手をもう一方の手の平で打って口を開いた。
「ああ、それは俺のバナナですね」
あっけらかんと言い放たれて私は近藤さんの開いた口を両手で押さえた。
「ホントは見たんですか?」
もう、恥ずかしさでどうにかなりそう。冷静を装ってももう無理よ。なんでこんなみんながいるようなところで、この人盛ってるの?!
「……ほんのちょっとだけ……」
白状した近藤さんにやっぱり信用がおけなかった。信じられなさすぎる。こんな公衆の面前で女にのっかられてよくもまあ。ってのっかったの私だけど、でも悪いのは近藤さんだもの。
脱力した私の両手をそっと退けて近藤さんは下半身を私に座られたまま上半身を起こした。
え、ちょっと、そんな涼しい顔して、支えもなしにそんな簡単に上半身って起こせるものなの? 腹筋の力? この人やっぱり強いのね。
「……すみません。でも下着なんざ所詮はただの布だ。今日のお妙さんの着物もよく似合ってるが、綺麗な着物より中身のお妙さんにこそ興味がある」
胸がドクンと打たれた。口説かれていると自覚して、鼓動が速くなる。怒りに身を任せて自分からのっかっておきながら、その人の膝の上に座っていることに危機を感じた。
この人も私も矛盾している。警察なのに、侍なのに、ストーカーしたり、血気盛んに決闘申し込んじゃうハチャメチャな人でどう考えても危険人物なのに、どうして私はこの人に自分から突っ込んでいっちゃうの。
「だから、俺の刀身(バナナ)もお妙さんの中身に納まろうと白のレースの中身に興味津々でぼわぃどォォ!!」
私の焼いた卵焼きをタッパーに入れて欲しがってた時のように近藤さんの左頬にまた手刀を打ち込んだ。今度は、ぼわぃどォ!! ですって、うまくないのよ。
もう、信じられない。見てないとか言っておきながらちゃっかり見てるじゃないの、私のパンツ!! 色だけじゃなくて素材までわかってるし!! しかも真剣にしゃべってるかと思いきや最低なこと言ってるし!!
お妙、よく見なさい。小娘の手刀を二度も受けて目の前でノビてるゴリラを。ホントにこの人でいいの? 今ならまだ引き返せるわよ。だってこの人ふざけてるもの。私、ホントにこの人のこと、好き……?
近藤さんは下半身を私に座られたまま、また易々と支えもなしに上半身を起こした。
視線が合わさってドキッとしてしまう。きっと男の人の魅力ってこういうことをいうのね。力強さとか、狩ろうとするする本能の眼差しとか、ちょっとドキドキしちゃうじゃないの。
胸が苦しくなってきて我慢できずに三度目の手刀をくれてやった。
ああ、もう見ちゃダメ。心臓が持たない。どうしよう、私、やっぱり好きかもしれない。こんな、モグラ叩きゲームならないゴリラ叩きゲーム仕掛けてくるようなふざけた人だけれど……好き……。
ああ、ダメダメっ! エッチなこととか、結婚とか、新ちゃんが立派な侍になるまでは、私、ダメなんだから!! しっかりしなさい、お妙ッ!!
ぐっと奥歯を噛み締めて胸の奥から湧き出てくる気持ちに蓋をする。
私は勢いをつけて立ち上がった。
足腰とか身体の厚みが私と全然違うことがなんだっていうのよ。どんなに素敵な人かしらないけど、あの人、出会って早々気に入って結婚を申し込んだはずのキャバ嬢をすぐにほったらかしにするような男の人なのよ?! 薄情者に決まってる!! そうよ、薄情な男は女の敵よ!!
こんなふうに考えようとするなんて、きっと後で苦しくなる。でも、突然求婚されて一度は断ったものの惹かれ始めているこの気持ちより弟のことを優先する私と、泣く子も黙る真選組の長であることを優先して気に入ったキャバ嬢のことを二の次三の次にする近藤さん。どっちもどっちだわ。出会わなければよかったとさえ、出会ったばかりなのに思わずにはいられない。もう、手遅れだから。
好きよ、近藤さん。だから、意地でも潰さないと。
お気に入りのキャバ嬢がいるのにも関わらず、先に花見の敷物を広げていた万事屋を退かせようとする鬼の副長の態度が許せなくなり、それに同調する局長にも腹が立ち、破亜限堕津1ダースを要求した。特別警察の局長ならその程度、お安いものでしょう? て、ダメよ、お妙。私、そんな簡単な女じゃないのよ。
叩いてかぶってジャンケンポン対決での決着をつけることになり、無理をしないで姉上、僕が代わりますという弟に言った。
「いえ、私が行かないと意味がないの……。あの人、どんなに潰しても立ち上がってくるの。もう、私も疲れちゃった。すべて終わらせてくるわ」
これは決意表明なのよ、新ちゃん。そして、野性的な色気でうら若きウブな乙女を惑わず色魔ゴリラを成敗してくれるわ。あの厚い胸に抱き締められたらどんな感じするのかしらなんて思っちゃったのは気の迷いなんだからッ!
ジャンケンに勝っても負けてもピコピコハンマーを狙っていた私はジャンケンの後すぐにピコピコハンマーを握った。ジャンケンには一応勝ったけどね。
素早くヘルメットをかぶった近藤さんはセーフだと安心したけど新ちゃんの助言でピコピコハンマーとヘルメットを置いていた箱に片足を載せて経を唱えている私に気づく。
色魔ゴリラからただの人におなりなさい、近藤さん。そのためには生足の一本や二本、晒すことなんて容易いことよ。
ヘルメットをかぶっているからとゲームのルールを主張する近藤さんの脳天をピコピコハンマーで叩き落とした。
いいですか、近藤さん。私と結婚したいなら私がルールです。そこは譲れません。私が真選組をやめろと一言言えば、あなたは辞めなくてはいけないんですよ。その覚悟がおあり? あるはずないわよね。あなた、矛盾している変な人だけど侍だもの。出会って間もなくても私にだってそのくらいわかります。私だって誰かの助力が前提の道場再建なんてするつもりないもの。誰かに任せきりでいたら、その誰かがいなくなった時、立ち行かなくなっちゃうのはわかりきっていることだから。自分たちの手で復興しないといけないんです。
いつか、あなたの道と私の道が同じ道を行くことがあったら、その時こそは……。
「局長ォォォォ!」
「てめェ、何しやがんだクソ女(アマ)ァァ!!」
真選組の隊士の人たちが口々に私の悪口を言う。
随分、慕われていることね。でも、近藤さん、教育がなっちゃいないわよ。未来の局長夫人になんて口のきき方してんだ、ああん?
「あ゛~~、やんのかコラ」
朝から張り切って焼いていた卵焼きを詰めた重箱を差し出すと銀さんは姉弟水入らずのところに邪魔して悪かったなと謝った。
「いいのよ~。ふたりで花見なんてしても寂しいもの」
と、銀さん、神楽ちゃん、新ちゃんに微笑む。
「お父上が健在の頃はよく三人、桜の下でハジけたものだわ~」
昔を思い出して懐かしんでみるけどすぐに気を取り直して重箱の蓋を開けた。
私の作った卵焼きをアートだのかわいそうな卵だのと言う銀さんにお手製の栄養満点卵焼きをガパンと口いっぱいに差し上げると間もなくしてあの男がやって来た。
ガハハと豪快に笑って私の卵焼きをタッパーに入れておきなさいと言う。しかも私たちの座る敷物になんの違和感もないほどの配置でちゃっかり座っている。
来たわね、ゴリラ。呼んでもないのにどうしてやって来るの。
「何、レギュラーみたいな顔して座ってんだゴリラァァ!! どっからわいて出た!!」
手刀をドパンと左頬に打ち込んで差し上げると、たぱァ!! と悲鳴をあげてくれちゃって、うまくないのよ。ゴリラをミンチにしてタッパーに入れて差し上げてやろうかしら。ほんとムカつくわ、この人。前触れなく潜り込むんじゃなくて最初から花見に誘いなさいよ。私のことをモノにしたいならまずは正攻法で来なさいよ。
苛立ちが収まりきらなくて左頬へ打ち込んだ手刀の衝撃で倒れ込んだ近藤さんの上に跨る。軽く握った右手で左頬に水割り級の追加を差し上げた。それでも気が晴れなくて、強く握った右手でドンペリ級の追加を差し上げようとすると下から掠れた声がした。
「いてて……、すみません、お妙さん。最近、店行けなくて。今日の休みのために仕事片づけてたんです。今日は隊士たちの骨休めの日で、毎年恒例の行事……」
と、言ったきり近藤さんはこちらをまじまじと見ている。人の顔も見ずに適当な謝罪で済ませようというの? どうかしたのかと窺っているとどうも視線が低い。私の下のほうを見つめていて、そこでようやく我に返った。着物の裾ははだけて、間近で生足を披露してるばかりか、これじゃパンツまで見えてるんじゃというくらい両足を広げていた。だって足広げないと力入らないじゃない。じゃなくて、近藤さんに見られてる?! この至近距離で?!
顔が一気に熱くなって足を閉じた。また閉じたために力めなくて尻もちをつく。ついた先は近藤さんの上で、何か長細いモノが当たった。
「いやァ、こんなに過激な誘われ方をしたのは初めてですなァ。困っちゃうなァ」
と、仰向けに寝転がったまま自分の顎髭を指で撫でながら目を瞑る。
いやァァ!! 過激って何よ?! 別に誘ってないのにッ!! それにやっぱりムカつく!! そんな言い方するってことは、私以外の女に誘われたことがあるってことなの?! って、私は誘ってないけどッ!!
「見たんですか?」
意外に落ち着いた声が出て、恥ずかしさで慌てる自分とは別に冷徹な自分が今、同時に自分の中にいることに気づく。
そうよ、お妙、落ち着くのよ。
「いや、見てません。見えそうで見えないところがそそられるし、あの絶妙な捲れ方とあの絶妙な角度、あの白い美しい曲線、絶景でグフぅぅ!!」
こらえきれなくなって目を閉じたまま私の痴態を思い出しているであろう近藤さんの鼻に右ストレートを打ってやった。
やだ、もう、どこ見てるのよ。パンツ見られてなかったのは不幸中の幸いだけど、でも私、近藤さんの上に座ってるし、どうやって立ち上がったらいいの? 立ち上がる時に見られちゃったりしない? ……ていうか、長細いモノがずっと当たってて、さっきより存在感が出てきたような気がするんだけど……。
「あの、近藤さん、お聞きしてもいいですか?」
「はい、どうぞ」
「ポケットに何か入れてらっしゃいます?」
「いや、今日はズボンじゃなくて袴なんでポケットに何か入れたくても入れられませんけど」
「じゃあ、今、私が座っちゃってるところにあるモノって……」
横になって目を瞑ったまま首を傾げていたけれど、ふとひらめいたらしい近藤さんは軽く握った片手をもう一方の手の平で打って口を開いた。
「ああ、それは俺のバナナですね」
あっけらかんと言い放たれて私は近藤さんの開いた口を両手で押さえた。
「ホントは見たんですか?」
もう、恥ずかしさでどうにかなりそう。冷静を装ってももう無理よ。なんでこんなみんながいるようなところで、この人盛ってるの?!
「……ほんのちょっとだけ……」
白状した近藤さんにやっぱり信用がおけなかった。信じられなさすぎる。こんな公衆の面前で女にのっかられてよくもまあ。ってのっかったの私だけど、でも悪いのは近藤さんだもの。
脱力した私の両手をそっと退けて近藤さんは下半身を私に座られたまま上半身を起こした。
え、ちょっと、そんな涼しい顔して、支えもなしにそんな簡単に上半身って起こせるものなの? 腹筋の力? この人やっぱり強いのね。
「……すみません。でも下着なんざ所詮はただの布だ。今日のお妙さんの着物もよく似合ってるが、綺麗な着物より中身のお妙さんにこそ興味がある」
胸がドクンと打たれた。口説かれていると自覚して、鼓動が速くなる。怒りに身を任せて自分からのっかっておきながら、その人の膝の上に座っていることに危機を感じた。
この人も私も矛盾している。警察なのに、侍なのに、ストーカーしたり、血気盛んに決闘申し込んじゃうハチャメチャな人でどう考えても危険人物なのに、どうして私はこの人に自分から突っ込んでいっちゃうの。
「だから、俺の刀身(バナナ)もお妙さんの中身に納まろうと白のレースの中身に興味津々でぼわぃどォォ!!」
私の焼いた卵焼きをタッパーに入れて欲しがってた時のように近藤さんの左頬にまた手刀を打ち込んだ。今度は、ぼわぃどォ!! ですって、うまくないのよ。
もう、信じられない。見てないとか言っておきながらちゃっかり見てるじゃないの、私のパンツ!! 色だけじゃなくて素材までわかってるし!! しかも真剣にしゃべってるかと思いきや最低なこと言ってるし!!
お妙、よく見なさい。小娘の手刀を二度も受けて目の前でノビてるゴリラを。ホントにこの人でいいの? 今ならまだ引き返せるわよ。だってこの人ふざけてるもの。私、ホントにこの人のこと、好き……?
近藤さんは下半身を私に座られたまま、また易々と支えもなしに上半身を起こした。
視線が合わさってドキッとしてしまう。きっと男の人の魅力ってこういうことをいうのね。力強さとか、狩ろうとするする本能の眼差しとか、ちょっとドキドキしちゃうじゃないの。
胸が苦しくなってきて我慢できずに三度目の手刀をくれてやった。
ああ、もう見ちゃダメ。心臓が持たない。どうしよう、私、やっぱり好きかもしれない。こんな、モグラ叩きゲームならないゴリラ叩きゲーム仕掛けてくるようなふざけた人だけれど……好き……。
ああ、ダメダメっ! エッチなこととか、結婚とか、新ちゃんが立派な侍になるまでは、私、ダメなんだから!! しっかりしなさい、お妙ッ!!
ぐっと奥歯を噛み締めて胸の奥から湧き出てくる気持ちに蓋をする。
私は勢いをつけて立ち上がった。
足腰とか身体の厚みが私と全然違うことがなんだっていうのよ。どんなに素敵な人かしらないけど、あの人、出会って早々気に入って結婚を申し込んだはずのキャバ嬢をすぐにほったらかしにするような男の人なのよ?! 薄情者に決まってる!! そうよ、薄情な男は女の敵よ!!
こんなふうに考えようとするなんて、きっと後で苦しくなる。でも、突然求婚されて一度は断ったものの惹かれ始めているこの気持ちより弟のことを優先する私と、泣く子も黙る真選組の長であることを優先して気に入ったキャバ嬢のことを二の次三の次にする近藤さん。どっちもどっちだわ。出会わなければよかったとさえ、出会ったばかりなのに思わずにはいられない。もう、手遅れだから。
好きよ、近藤さん。だから、意地でも潰さないと。
お気に入りのキャバ嬢がいるのにも関わらず、先に花見の敷物を広げていた万事屋を退かせようとする鬼の副長の態度が許せなくなり、それに同調する局長にも腹が立ち、破亜限堕津1ダースを要求した。特別警察の局長ならその程度、お安いものでしょう? て、ダメよ、お妙。私、そんな簡単な女じゃないのよ。
叩いてかぶってジャンケンポン対決での決着をつけることになり、無理をしないで姉上、僕が代わりますという弟に言った。
「いえ、私が行かないと意味がないの……。あの人、どんなに潰しても立ち上がってくるの。もう、私も疲れちゃった。すべて終わらせてくるわ」
これは決意表明なのよ、新ちゃん。そして、野性的な色気でうら若きウブな乙女を惑わず色魔ゴリラを成敗してくれるわ。あの厚い胸に抱き締められたらどんな感じするのかしらなんて思っちゃったのは気の迷いなんだからッ!
ジャンケンに勝っても負けてもピコピコハンマーを狙っていた私はジャンケンの後すぐにピコピコハンマーを握った。ジャンケンには一応勝ったけどね。
素早くヘルメットをかぶった近藤さんはセーフだと安心したけど新ちゃんの助言でピコピコハンマーとヘルメットを置いていた箱に片足を載せて経を唱えている私に気づく。
色魔ゴリラからただの人におなりなさい、近藤さん。そのためには生足の一本や二本、晒すことなんて容易いことよ。
ヘルメットをかぶっているからとゲームのルールを主張する近藤さんの脳天をピコピコハンマーで叩き落とした。
いいですか、近藤さん。私と結婚したいなら私がルールです。そこは譲れません。私が真選組をやめろと一言言えば、あなたは辞めなくてはいけないんですよ。その覚悟がおあり? あるはずないわよね。あなた、矛盾している変な人だけど侍だもの。出会って間もなくても私にだってそのくらいわかります。私だって誰かの助力が前提の道場再建なんてするつもりないもの。誰かに任せきりでいたら、その誰かがいなくなった時、立ち行かなくなっちゃうのはわかりきっていることだから。自分たちの手で復興しないといけないんです。
いつか、あなたの道と私の道が同じ道を行くことがあったら、その時こそは……。
「局長ォォォォ!」
「てめェ、何しやがんだクソ女(アマ)ァァ!!」
真選組の隊士の人たちが口々に私の悪口を言う。
随分、慕われていることね。でも、近藤さん、教育がなっちゃいないわよ。未来の局長夫人になんて口のきき方してんだ、ああん?
「あ゛~~、やんのかコラ」
花より卵焼き2
Text by mimiko.
2017/10/20