近妙です。妙視点です。柳生篇以降、バベルの塔合コン回以前のイメージです。

秘めた恋心

 ストーカーはしても下着泥棒はしない警察官。
 好きだの愛しているだの言っておきながら記憶喪失でその相手のことまで忘れるゴリラ。
 ターミナル事故で暴れ出したえいりあんを着ぐるみ説得しようとする人情派。
 対テロリスト武装警察らしく指揮をとる局長。
 好きな女ためでも侍の魂を質入するのは躊躇う薄情な男。
 侵入を阻むための鋼の要塞を絶対不可侵領域の愛の巣だと前向きに解釈する愛の追跡者。
 攘夷浪士による婦女誘拐犯に人質と一日局長の芸能人を護るために犯人グループの要求を聞き入れる近藤勲。
 他の人質たちと一緒にいるお通ちゃんに謝罪して、感謝して、隊士たちに剣を抜けと叫ぶあなたは、いつか行ってしまう人。
 上司に持ってこられた縁談話を断るために部下を私の元へ来させるような飛んだ薄情者。
 武者修行から帰ってきた幼馴染について行った私を連れ戻そうと、名門柳生家の道場を破ろうとする悟罹羅勲。
 公に私を挟まない人だと思ったのに飛んだ温情派。
 玉の輿だったのに破談にさせられた仕返しにゴリラだらけの披露宴へ乱入して破談にしてやった。でも、よくよく考えてみたら悟罹羅勲の思惑通りすぎてとても腹が立った。
 だから、私は意地悪するの。
 我が家に潜伏していたストーカーゴリラの衿元を掴んで殴ろうと構えた拳を解く。拳を受けようとへの字に曲がった口に私の口を重ねてやった。角度を変えて二回目。角度を戻して三回目。四回目と口を近づけたところでへの字口が、あの字口になった。三白眼を見ると、とても驚いていたから思わず笑っちゃった。
 様を見なさい、近藤さん。あなたの思い通りになんてなってやるものですか。
 あの字口にも口を重ねて四回目。それでもぽかんと開いたままだった口元を見て五回目は下唇を食べてみようかしらと思ったら、あの字口から声が出た。
「あの、お妙……」
 名前を呼ばれ切る前に人差し指を当てる。
「内緒ですよ」
 え?と訊いてくる顔に微笑む。
「近藤さんと私がキスしたこと、みんなには内緒ですからね」
秘めた恋心
Text by mimiko.
2016/01/17

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