願望スパイス満載な近←妙をお送りいたします。
柳生篇後にちょっと振り返ってみた感じで。

本心

「お妙さァァん！」
　今日も、また遠くから私を見つけて嬉しそうに手を振りながらバカなゴリラがやって来る。
――今……おまえの言う半端な優しさでも救えるものがあるとしたら、おまえどうする？――
　迷惑を掛けたお詫びにと店に招待したのに、来たのはあの人の部下ひとり。
　何度、迫られてもその度にぶちのめしてきたのに、それでも私の所にやって来るあの人を待ってたのに。
――断れば真選組が消される――
　お見合いも、結婚も、自分から断らなかった。
　だからわかっちゃった。
　あの人の本当に大事なものは真選組で、私じゃないって。
　あんなにつきまとってきたのに、あんなに何度も暑苦しく好きだと言ったのに。
　あの人はいざとなれば私を置いて行ってしまう。
　寂しく思ってしまったのが悔しくて、とても腹が立った。
　本当はあの人をただ連れ帰るだけにしようと思った。
　だけど、あの顔を見たらそれだけじゃ収まらなかった。
――私の弟に何とんでもねーもん見せてくれとるんじゃァァ――
　誰が、自分の身を犠牲にしてまで結婚しようとして偉かったわね、なんて言うものですか。
　誰が、私の男に手ェ出してくれとるんじゃァァ、なんて言うものですか。
　誰のものでもなく、誰のものにもならないわ。
　あの人は真選組のものよ。
　ああ、やっぱり披露宴なんてぶち壊しに行かなければ良かった。
　誰のものにもならないのなら一層のこと、ゴリラと結婚された方が幾らもましだったのに。
「これから買い物ですか？俺も御供しまゴブぅぅぅぅ！」
　あなた自身よりも大事なものに私なんかが勝てるわけないのに、それでもあなたが誰のものにもならなくて嬉しいなんて。
「ついてこないで下さい。何か悪事を働いたわけでもないのに、あなたの部下に睨まれてまでストーカーされるなんて胸クソ悪いったらありませんから」
　私もバカね。
本心
Text by mimiko.
2010/03/17

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