WJ2017年16号第六百二十七訓「平和と破滅は表裏一体」前提の近妙。お妙さんの心情がこうだったらいいのにな妄想です。

帰ってきた

 結野アナの式神・外道丸さんが持参した妖虫・パンデモニウムは怪我や病気にも効くとても栄養のある食糧らしい。
 けれど幻覚作用があるらしく、真実を見逃さない弟でさえその強力な幻覚作用に惑わされていた。そして、私が本物の侍だと認めたあの人でさえもその強力な幻覚作用に惑わされていた。
 あんなに感動的にお別れしたのに再会がパンデモニウムに乗っ取られるなんて許せないし、信じられない。まったく誰がお妙よ。私がお妙なのに。
 悔しくなってパンデモニウムの後頭部越しで飛び蹴りを食らわせてやった。精々、偽お妙と熱烈キッスでもやってればいいのよ。
 なのに、新ちゃんまで俺のパンデモニウムさんを離せと、あの人が抱き締めるパンデモニウムを引き剥がそうとする始末。姉である本物お妙をゴリラに奪われてもいいのかしら。
 いつも未来の義兄を否定してたのに、その義兄になりたい人と二人してツッコミ待ちだなんて、弟も公認だなんて、ムカムカするにもほどがあるわ。姉にずっとムカムカしてろってことなのかしら。まるで地獄の結婚生活じゃない。ああ嫌だ、想像しただけでムカムカする。
 そのムカムカにムカムカを上塗りするフォロ方さんの言葉に更にムカムカした私だったけれど、沖田さんの言葉にやっぱり私はムカムカした。
 私のお仕置きが欲しくて道化を演じるあの人が憎らしい。どこまで人を馬鹿にすれば気が済むのかしら。幻覚作用で見える偽お妙でもいいというのなら、ずっとそこにいればいい。私を巻き込まないで、近藤さん。私に茨の恋路を歩ませないで。なによ、なんやかんやでマゾだとか言っておきながら本当はサドなんじゃない。ああムカムカする。
 ゴリラの手綱を離していた土方さんと沖田さんにいつもの嫌味をお返ししていると、猿飛さんと全蔵さんが駆けつけてくれた。
 相変わらず無愛想な街だけど護れたようねと言う猿飛さんに懐かしさが込みあがる。
 そうね、相変わらず私たちは馴れ合ったりしないけれど、みんなが揃わなければなんだか寂しくて、誰かがいなくなれば切なく苦しくなる。でもその苦しみは、みんなで分け持ってきっと乗り越えられる。今日はまだ帰る所を護れただけで、明日はどうなっているかわからない。とりあえずは――。
「みんなおつかれさま」
帰ってきた
Text by mimiko.
2017/03/26

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