近+土会話にお妙さんが聞き耳立ててる近→←妙。
近藤さんのたとえ話が原作通りかそれ以上に卑猥ですあしからず。
近藤さんのたとえ話が原作通りかそれ以上に卑猥ですあしからず。
危機と好機の紙一重
昼日中、妙が街のコンビニエンスストアから出てきたところ、顔を合わせたくない男の声がした。街をゆく人々の影に身を潜め、自らの存在を紛れ込ませ、男の部下であり、友人でもある咥え煙草の男との会話に聞き耳を立てる。
「近藤さん、とっつぁんからの見合い話、断ったんだって?なんで断ったんだよ」
真選組制服を纏った土方は、ぼそぼそと小さな声で話す。妙は眉を寄せた。聞き取りにくい音量を調節しようと、人の流れを縫いながら土方と会いたくないゴリラ男の背後へと近づく。歩道の車道近くにあった郵便ポストを挟んで近藤の横で妙は身を屈める。
「なんでって、俺にはお妙さんという心に決めた女がいるからな」
両腕を胸の前で組み、だははと豪快に笑う。
「アンタが決めててもあっちはアンタに決めてないだろう。なァ近藤さん、脈がないにもほどがあるんだからいい加減諦めたらどうだ。ずっと脈拍低下どころじゃねェだろ。とっくに死んでるだろ」
「いやだね。俺、死ぬならお妙さんの膝元だって決めてるもん」
「だから、アンタが勝手に決めてるだけだろう」
「男に二言はねェんだよ、トシ。俺ァまだ全然本気出してないだけだよ」
妙は郵便ポストと近藤向こうの土方のぽかんとした顔を見て頷いた。
「アンタ、いつでも全力で交際申し込んで全力で断られてるじゃねェーか。あれのどこが本気出してないってんだ?」
「あれは前戯なの。毎回趣向を変えてどんなのだったらどんなふうに反応するか様子見てんの。まだ一回も本番突入したことねェーの。まだ乳首だけしか開発してねェーの」
「たとえが卑猥だな。こんな市井(しせい)まっただ中でする話じゃねェぞ、近藤さん」
「てへっ、ごっめーんちゃい。ここんところ忙しくってさァ。ぶっちゃけ溜っちゃっててさァ」
でかい図体を揺らしておどける近藤の背中にすぐさまとび蹴りをお見舞いしたくなった妙は手近の郵便ポストに軽く拳をぶつけた。が、その小さな衝撃音を聞き逃さなかった土方は郵便ポストに潜む妙の容姿を捕らえる。視線に気づいた妙はビームを放つようなエネルギーを瞳に込めて土方をロックオンした。その秘めたエネルギーに咥えていた煙草を焼かれた土方は青ざめる。
「……だ、だったらとにかく一発かましてこいよ。な、近藤さん。一発かまされてこいよ、最終兵器ってやつで。アンタの主砲溶かされてこいよ。うんうん、それがいい、たぶん」
近藤か妙のどちらもフォローしたかったらしい土方の言動が滅裂したが、近藤はそれを気にも留めず友人からの応援を前向きに捉えた。
「おお、そうか!俺もそろそろいい感じかなァって思ってたんだよね!」
明るい声の近藤の背後に妙が立とうとしたところ、街の雑踏とは違う機械的な雑音が鳴った。
『こちら一番隊沖田。やつら動きましたァ』
制服に装着された無線機だろうか。いつもの真選組制服からは聞こえたことのない籠った音声連絡だった。携帯電話も持っているのだからそれでもよさそうなものなのにと妙は思った。
「了解」
近藤は低い声で短く答え、妙は考えを改める。
ここ数日間、勤め先のスナックに顔を出していなかった近藤。通常の市中見廻りでは携帯しない小型無線機の所持。一般市民の自分に出る幕はないということだ。妙は再び郵便ポストに身を隠した。土方は結われた髪が郵便ポスト越しに行けと言っているのを聞き、近藤とともに足早に去って行った。数メートル先からパトカーが緊急走行し始め、そのサイレン音も遠ざかると、ぼそりと呟く。
「了解。だって……ゴリラのくせに……」
妙は小さく溜息をついた。
「近藤さん、とっつぁんからの見合い話、断ったんだって?なんで断ったんだよ」
真選組制服を纏った土方は、ぼそぼそと小さな声で話す。妙は眉を寄せた。聞き取りにくい音量を調節しようと、人の流れを縫いながら土方と会いたくないゴリラ男の背後へと近づく。歩道の車道近くにあった郵便ポストを挟んで近藤の横で妙は身を屈める。
「なんでって、俺にはお妙さんという心に決めた女がいるからな」
両腕を胸の前で組み、だははと豪快に笑う。
「アンタが決めててもあっちはアンタに決めてないだろう。なァ近藤さん、脈がないにもほどがあるんだからいい加減諦めたらどうだ。ずっと脈拍低下どころじゃねェだろ。とっくに死んでるだろ」
「いやだね。俺、死ぬならお妙さんの膝元だって決めてるもん」
「だから、アンタが勝手に決めてるだけだろう」
「男に二言はねェんだよ、トシ。俺ァまだ全然本気出してないだけだよ」
妙は郵便ポストと近藤向こうの土方のぽかんとした顔を見て頷いた。
「アンタ、いつでも全力で交際申し込んで全力で断られてるじゃねェーか。あれのどこが本気出してないってんだ?」
「あれは前戯なの。毎回趣向を変えてどんなのだったらどんなふうに反応するか様子見てんの。まだ一回も本番突入したことねェーの。まだ乳首だけしか開発してねェーの」
「たとえが卑猥だな。こんな市井(しせい)まっただ中でする話じゃねェぞ、近藤さん」
「てへっ、ごっめーんちゃい。ここんところ忙しくってさァ。ぶっちゃけ溜っちゃっててさァ」
でかい図体を揺らしておどける近藤の背中にすぐさまとび蹴りをお見舞いしたくなった妙は手近の郵便ポストに軽く拳をぶつけた。が、その小さな衝撃音を聞き逃さなかった土方は郵便ポストに潜む妙の容姿を捕らえる。視線に気づいた妙はビームを放つようなエネルギーを瞳に込めて土方をロックオンした。その秘めたエネルギーに咥えていた煙草を焼かれた土方は青ざめる。
「……だ、だったらとにかく一発かましてこいよ。な、近藤さん。一発かまされてこいよ、最終兵器ってやつで。アンタの主砲溶かされてこいよ。うんうん、それがいい、たぶん」
近藤か妙のどちらもフォローしたかったらしい土方の言動が滅裂したが、近藤はそれを気にも留めず友人からの応援を前向きに捉えた。
「おお、そうか!俺もそろそろいい感じかなァって思ってたんだよね!」
明るい声の近藤の背後に妙が立とうとしたところ、街の雑踏とは違う機械的な雑音が鳴った。
『こちら一番隊沖田。やつら動きましたァ』
制服に装着された無線機だろうか。いつもの真選組制服からは聞こえたことのない籠った音声連絡だった。携帯電話も持っているのだからそれでもよさそうなものなのにと妙は思った。
「了解」
近藤は低い声で短く答え、妙は考えを改める。
ここ数日間、勤め先のスナックに顔を出していなかった近藤。通常の市中見廻りでは携帯しない小型無線機の所持。一般市民の自分に出る幕はないということだ。妙は再び郵便ポストに身を隠した。土方は結われた髪が郵便ポスト越しに行けと言っているのを聞き、近藤とともに足早に去って行った。数メートル先からパトカーが緊急走行し始め、そのサイレン音も遠ざかると、ぼそりと呟く。
「了解。だって……ゴリラのくせに……」
妙は小さく溜息をついた。
危機と好機の紙一重
Text by mimiko.
2015/01/09