2015年WJ32号第五百四十八訓前提の近視点。
桂や銀時やトシ、佐々木、信女ちゃんと気の多い近藤さんとお妙さん再会妄想。
第五百四十八訓直後でサブちゃんと信女ちゃんは無事救出されてる(願望)前提です。
桂や銀時やトシ、佐々木、信女ちゃんと気の多い近藤さんとお妙さん再会妄想。
第五百四十八訓直後でサブちゃんと信女ちゃんは無事救出されてる(願望)前提です。
君の笑顔をもう一度
とっつぁんと俺を脱獄させようと桂が寄越した丸薬を飲み損ねて真選組局長は一度死んだ。仇敵であった桂に救われて、俺は飲み仲間となった野郎の肩を担いだ。掴めるんだか掴めねーんだか、ただの電波野郎なのか、よくわからねェ。いや、銀時(ヤロー)と同じだな。剣を交えていても別のところで戦っているただの馬鹿だな。だが、桂(やつ)がいなけりゃ俺は、今こうしてトシの隣に立っちゃいねェ。
「トシ……佐々木と、ポンデリング娘……」
「ああ、心配いらねェ。それより、ほら」
トシの左肩が俺を抱き直した。
「しっかり足上げろ、近藤さん。アンタの大好きなお妙さんが、この先にいる」
耳元で声をかけられ、顔を上げた。右目を凝らすがぼやけている。確認できるのは、黒と白の隊士たちがいるくらいだ。おぼつかない俺の足と目を補うトシの呼吸も荒い。可笑しくなって鼻で笑った。
「へッ、うっそだァ……」
なんでこんな戦場にいる。んなわけねーだろ。俺も相当ダメージ喰らってるが、トシのほうがよっぽどひでーんじゃねェのか。
「近藤さん……!」
なんとか船に搭乗すると女の声が聞こえた。右の目蓋を上げても、そこが明るいということだけしかわからない。だが、俺はその声を聞き違えたりはしない。
「近藤さん……!」
また名を呼ばれた。彼女の姿を確認できないが、思わず手を伸ばす。何か、温かいなめらかなものに触れた。
「はは……。なァトシ、俺まだ生きてる?お妙さんの声がすんだけど……」
トシに支えられていた右腕を、その温かいなめらかなものへと伸ばしてそっと手の平で包む。
「これが、お妙さんのほっぺただってんなら、俺ァいよいよ死ぬんだろ。つうか、すでに死んでんだろ」
あのお妙さんが、こんなとこにいて、満身創痍な俺のことを待ってるとか、死亡フラグでなきゃなんだってんだ。膝が戦慄き、俺は正面の温かいなめらかなものに倒れ掛かる。鉄のにおいしかしていなかった鼻腔に僅か、懐かしいにおいがした。昼夜問わず、追い求め続けた彼女のにおいだ。トシか他の隊士かに咄嗟に腕を引っ張られ、俺の全体重が彼女に載ることはなかった。救護担当の隊士かの手際のよい引き剥がしに遭い、冷たい床に寝かされる。
「担架!早く!」
まだお妙さんかどうかちゃんと確認できてねーんだ、ちょっと待ってくれ。俺は明るい天へと右手を伸ばした。
「……お妙、さん……」
俺の右手は握られた。
「はい!ここにいます……!」
涙ぐんだ声だった。
「俺なんかのために……泣かんでください……」
右目はやはり光しか映さない。返事の代わりに手を強く握られた。
「……俺は……護れましたか……あなたの笑顔を……」
叶うことなら、もう一度って思ったんだがな……なんで目が見えねェかな……。
「はい……!」
彼女の両手に握られた俺の手に彼女の吐息がかかった。額を俺の手に当ててるのか。血で汚れてしまうからよしたほうがいいと思っても俺の手は動かない。
「あなたは、みんなを、私を、護ってくれました。ちゃんと護りきってくれました。ありがとう、近藤さん……!ありがとう……!」
彼女が口を開くたびに涙交じりの吐息が手にかかる。
「担架きました、姐さん」
隊士に促されるが、彼女は俺の手を握ったままだ。むしろ握り直す。
「姐さん、局長の手を放してください」
彼女の吐息が手から遠ざかってまた近づいた。
「いやです……」
と、吐息が左右に揺れた。何やってんの、お妙さん。
「わかったから、とりあえず手ェ放してくれ」
宥めるトシの声がすると握られていた手が解放された。隊士たちの掛け声とともに俺は担架へと寝かされる。
「土方さん、放してください!」
「愛しい男と離れ難いのはわかったから手当をさせてくれ。死に損ないのゴリラが死んだゴリラになってもいいのか?」
諭された彼女は大人しくなった。が、すぐに声が上がった。
「って、土方さんも右腕……!」
隊士たちの忙しない気配がする中、俺は担架で運ばれる。もう何かをする余力などない。が、釘を刺したくなった。
「……待ってくれ……」
掠れた声で頼むと担架が止まる。
「トシ……俺の女に手を出すなよ……」
聞こえたらしいトシの鼻で笑う声が聞こえる。
「安心しな、俺はV字前髪の女しか受けつけねーよ。そもそも男みてェなゴリラ女なんざ御免だ。その目ごとちゃんと治療されてきな」
けっ、見る目ねーって言うのか。どこがだよ、こんなとこまで来てくれる女なんてなかなかいねーぞ。ていうか俺ァ視力はいいほうなんだよ。なんせ野生のゴリラだからな。って、あれ?ゴリラって視力いいんだっけ?悪りィんだっけ?ん?
「トシ……佐々木と、ポンデリング娘……」
「ああ、心配いらねェ。それより、ほら」
トシの左肩が俺を抱き直した。
「しっかり足上げろ、近藤さん。アンタの大好きなお妙さんが、この先にいる」
耳元で声をかけられ、顔を上げた。右目を凝らすがぼやけている。確認できるのは、黒と白の隊士たちがいるくらいだ。おぼつかない俺の足と目を補うトシの呼吸も荒い。可笑しくなって鼻で笑った。
「へッ、うっそだァ……」
なんでこんな戦場にいる。んなわけねーだろ。俺も相当ダメージ喰らってるが、トシのほうがよっぽどひでーんじゃねェのか。
「近藤さん……!」
なんとか船に搭乗すると女の声が聞こえた。右の目蓋を上げても、そこが明るいということだけしかわからない。だが、俺はその声を聞き違えたりはしない。
「近藤さん……!」
また名を呼ばれた。彼女の姿を確認できないが、思わず手を伸ばす。何か、温かいなめらかなものに触れた。
「はは……。なァトシ、俺まだ生きてる?お妙さんの声がすんだけど……」
トシに支えられていた右腕を、その温かいなめらかなものへと伸ばしてそっと手の平で包む。
「これが、お妙さんのほっぺただってんなら、俺ァいよいよ死ぬんだろ。つうか、すでに死んでんだろ」
あのお妙さんが、こんなとこにいて、満身創痍な俺のことを待ってるとか、死亡フラグでなきゃなんだってんだ。膝が戦慄き、俺は正面の温かいなめらかなものに倒れ掛かる。鉄のにおいしかしていなかった鼻腔に僅か、懐かしいにおいがした。昼夜問わず、追い求め続けた彼女のにおいだ。トシか他の隊士かに咄嗟に腕を引っ張られ、俺の全体重が彼女に載ることはなかった。救護担当の隊士かの手際のよい引き剥がしに遭い、冷たい床に寝かされる。
「担架!早く!」
まだお妙さんかどうかちゃんと確認できてねーんだ、ちょっと待ってくれ。俺は明るい天へと右手を伸ばした。
「……お妙、さん……」
俺の右手は握られた。
「はい!ここにいます……!」
涙ぐんだ声だった。
「俺なんかのために……泣かんでください……」
右目はやはり光しか映さない。返事の代わりに手を強く握られた。
「……俺は……護れましたか……あなたの笑顔を……」
叶うことなら、もう一度って思ったんだがな……なんで目が見えねェかな……。
「はい……!」
彼女の両手に握られた俺の手に彼女の吐息がかかった。額を俺の手に当ててるのか。血で汚れてしまうからよしたほうがいいと思っても俺の手は動かない。
「あなたは、みんなを、私を、護ってくれました。ちゃんと護りきってくれました。ありがとう、近藤さん……!ありがとう……!」
彼女が口を開くたびに涙交じりの吐息が手にかかる。
「担架きました、姐さん」
隊士に促されるが、彼女は俺の手を握ったままだ。むしろ握り直す。
「姐さん、局長の手を放してください」
彼女の吐息が手から遠ざかってまた近づいた。
「いやです……」
と、吐息が左右に揺れた。何やってんの、お妙さん。
「わかったから、とりあえず手ェ放してくれ」
宥めるトシの声がすると握られていた手が解放された。隊士たちの掛け声とともに俺は担架へと寝かされる。
「土方さん、放してください!」
「愛しい男と離れ難いのはわかったから手当をさせてくれ。死に損ないのゴリラが死んだゴリラになってもいいのか?」
諭された彼女は大人しくなった。が、すぐに声が上がった。
「って、土方さんも右腕……!」
隊士たちの忙しない気配がする中、俺は担架で運ばれる。もう何かをする余力などない。が、釘を刺したくなった。
「……待ってくれ……」
掠れた声で頼むと担架が止まる。
「トシ……俺の女に手を出すなよ……」
聞こえたらしいトシの鼻で笑う声が聞こえる。
「安心しな、俺はV字前髪の女しか受けつけねーよ。そもそも男みてェなゴリラ女なんざ御免だ。その目ごとちゃんと治療されてきな」
けっ、見る目ねーって言うのか。どこがだよ、こんなとこまで来てくれる女なんてなかなかいねーぞ。ていうか俺ァ視力はいいほうなんだよ。なんせ野生のゴリラだからな。って、あれ?ゴリラって視力いいんだっけ?悪りィんだっけ?ん?
君の笑顔をもう一度
Text by mimiko.
2015/07/09