近土深夜の創作60分一本勝負(https://twitter.com/knhz_60min)11/11(水)付のお題。
ポッキーの日
市中見廻りを終え、屯所に戻った近藤は座卓前で呟いた。
「げッ。なんだこりゃ」
近藤は開封したチョコレート菓子の惨事を目の当たりにして溜息をつく。
今日はポッキーの日。見廻りの途中、トイレを借りたコンビニで見かけた店頭ポップにつられて購入したポッキーを昼日向、パトカーのダッシュボードに放置していたことを後悔する。
「あーあ、どっろどろじゃねーか」
ビニール袋には溶けたチョコレートがべっとりと付着し、プレッツェルを一本摘まむと、もう一本、更に一本と連なり、プレッツェルの重みでビニール袋にゆっくりと落ちた。別の塊を分離しようと摘まむと今度は重力で分離することなく固まっている。六本分で一本の太いポッキーだ。三本くらいならまとめて食べても美味いだろうが、六本は噛み砕きづらいだろうなと、プレッツェル部分を両方の指で引き割ろうとした。が、見事失敗に終わる。三本分のプレッツェル部分だけ折れ、チョコレート部分は六本分のままだ。こうなったら意地でも分解してやるとチョコレート部分を摘まんでは割る。溶けていなかったポッキーまで指の熱で溶けだし、左右の指はチョコレートまみれだ。
「何やってんだ、近藤さん」
土方だ。チョコレートが溶けたポッキーと戦う近藤の向かいに座り、呆れる。
「あーあ、手、どろどろじゃねーか」
「うんー、ダッシュボードに置きっぱなしにしてたんだよね」
と、ポッキーを分離させる。
「今日はいい天気だからなァ。十一月とは言え、車中に置きっぱなしじゃそうなるだろーよ」
と、土方は取り出した煙草を咥える。
「あ、ちょっと待って、トシ。煙草吸う前に手伝って。食っていいから手伝って」
「ええ、いやだよ。手ェ汚れるし」
断った土方の手は、煙草に火を点けようとする。それをチョコレートまみれの近藤の手が止めた。土方の手までチョコレートが付着する。
「何すんだよ、近藤さん」
じろりと近藤を睨む。
「だから、手伝ってって言ったじゃん」
と、唇を尖らせながら近藤はポッキーを分離する作業に戻る。
「だから、いやだって言っただろ」
と、近藤につけられたチョコレートを舐めとる。溶けたチョコレートは固まっているそれより甘く感じる。
「甘ェ……」
「だろォ?だから、手伝って。食っていいから。てか、寧ろ食って。お願い」
と、所どころチョコレートが剥げているポッキーを真顔で食べる。土方は溜息をつき、チョコレートの溶けたポッキーに手を伸ばした。
「しゃーねーなァ。って、オイ!何すんだッ」
近藤は、自分の手に付着していたチョコレートを伸ばされた土方の手に塗りたくる。手を擦りつけ、更に摘まんだポッキーを土方の指に撫でつけた。
「やめろよ、気持ちわりィな」
「ハっハっハ!こーゆーのは最初が肝心なんだよ。手ェ汚れてなかったら上手くできねーだろ。これでおまえも心置きなくポッキーを一本にしてから食べるゲームに参加できるぞ!」
「なんだよ、そのゲーム。聞いたことねーよ」
「げッ。なんだこりゃ」
近藤は開封したチョコレート菓子の惨事を目の当たりにして溜息をつく。
今日はポッキーの日。見廻りの途中、トイレを借りたコンビニで見かけた店頭ポップにつられて購入したポッキーを昼日向、パトカーのダッシュボードに放置していたことを後悔する。
「あーあ、どっろどろじゃねーか」
ビニール袋には溶けたチョコレートがべっとりと付着し、プレッツェルを一本摘まむと、もう一本、更に一本と連なり、プレッツェルの重みでビニール袋にゆっくりと落ちた。別の塊を分離しようと摘まむと今度は重力で分離することなく固まっている。六本分で一本の太いポッキーだ。三本くらいならまとめて食べても美味いだろうが、六本は噛み砕きづらいだろうなと、プレッツェル部分を両方の指で引き割ろうとした。が、見事失敗に終わる。三本分のプレッツェル部分だけ折れ、チョコレート部分は六本分のままだ。こうなったら意地でも分解してやるとチョコレート部分を摘まんでは割る。溶けていなかったポッキーまで指の熱で溶けだし、左右の指はチョコレートまみれだ。
「何やってんだ、近藤さん」
土方だ。チョコレートが溶けたポッキーと戦う近藤の向かいに座り、呆れる。
「あーあ、手、どろどろじゃねーか」
「うんー、ダッシュボードに置きっぱなしにしてたんだよね」
と、ポッキーを分離させる。
「今日はいい天気だからなァ。十一月とは言え、車中に置きっぱなしじゃそうなるだろーよ」
と、土方は取り出した煙草を咥える。
「あ、ちょっと待って、トシ。煙草吸う前に手伝って。食っていいから手伝って」
「ええ、いやだよ。手ェ汚れるし」
断った土方の手は、煙草に火を点けようとする。それをチョコレートまみれの近藤の手が止めた。土方の手までチョコレートが付着する。
「何すんだよ、近藤さん」
じろりと近藤を睨む。
「だから、手伝ってって言ったじゃん」
と、唇を尖らせながら近藤はポッキーを分離する作業に戻る。
「だから、いやだって言っただろ」
と、近藤につけられたチョコレートを舐めとる。溶けたチョコレートは固まっているそれより甘く感じる。
「甘ェ……」
「だろォ?だから、手伝って。食っていいから。てか、寧ろ食って。お願い」
と、所どころチョコレートが剥げているポッキーを真顔で食べる。土方は溜息をつき、チョコレートの溶けたポッキーに手を伸ばした。
「しゃーねーなァ。って、オイ!何すんだッ」
近藤は、自分の手に付着していたチョコレートを伸ばされた土方の手に塗りたくる。手を擦りつけ、更に摘まんだポッキーを土方の指に撫でつけた。
「やめろよ、気持ちわりィな」
「ハっハっハ!こーゆーのは最初が肝心なんだよ。手ェ汚れてなかったら上手くできねーだろ。これでおまえも心置きなくポッキーを一本にしてから食べるゲームに参加できるぞ!」
「なんだよ、そのゲーム。聞いたことねーよ」
ポッキーの日
Text by mimiko.
2015/11/11