銀魂゜2巻完全版特典CDラジオ「ジャンク真選組」前提です。近×妙です。沖田視点です。
ラブラブ詐欺
毎夜、男と女の疑似ラブゲームが繰り広げられるかぶき町は高級キャバクラ店すまいる。沖田は隊士数人引き連れ、そこに居た。目当ては局長の想い人である志村妙。彼女を口説き落とそうと甘言を囁く。
「謝礼はそれなりに弾むんで、このとおりでさァ、姐さん」
と、ソファに腰掛けていた沖田は膝に両手を突いて頭を下げる。妙を挟んで座っていた隊士たちも沖田に倣って頭を下げる。
「まァ。沖田さんにそこまで言われてしまったら、私も無下にお断わりできませんねェ」
と、頬に手を当て、満更でもなさそうにする。が、まだ渋っているようだ。
流石、しぶとい近藤さんをああも懐柔してるだけあるな。なかなか乗ってきやしねェ。もうひと押し行っとくか。
口を開こうとしたが、妙に先手を取られる。
「終わる終わる詐欺だなんて、詐欺にもいろんな種類があるんですねェ。私も気をつけなくちゃ。で?今日、近藤さんは?」
妙は沖田から受け取った企画書の捲ったページを戻してそれをテーブルに置いた。沖田たちの他に真選組隊士がいないだろうかと店の通路や出入り口を眺める。
「ちょっと立て込んでるんだかで遅れてるだけです。あの人、ああ見えてちゃんと仕事してるんですよ」
ふっと笑う沖田を横目に、妙はまた企画書に視線を戻した。再度、手に取ってページを捲る。
「そうなんですか……」
なんだ?妙に落ち着きがないな。いつもどっしり構えてる印象だったが、実はそうでもねェのか?
「この中年のキャバクラ常連客って、どなたが演じるんですか?」
「近藤さんです。はまり役でしょう」
くすりと笑う沖田につられて妙もくすくすと笑った。
警察庁広報室から各部署へ詐欺撲滅キャンペーンコマーシャル制作を割り振られた。真選組は、終わる終わる詐欺だ。終わると匂わせ、がっつりと金をつぎ込ませる。しかし、実入りの良さに味を占めた詐欺師は結局終わらせることなく被害者の欲求を揺さぶり、終わりを匂わせることを繰り返す詐欺だ。騙す側も騙される側も甘い汁を吸っているのだから詐欺と断定する線引きは難しい。それをわかりやすく噛み砕いた脚本を書いた隊士を近藤は絶賛していた。
「この美人キャバ嬢役はお妙さんで決まりだよね!」
と、近藤はコマーシャルに自らが出演する気満々ではしゃいでいたのだ。
「じゃァ、近藤さんは中年キャバクラ常連客役するんですかィ?洒落になんねーからやめといたほうがいいですよ。そもそも土方さんが黙っちゃいませんぜ。これ以上、真選組に悪印象植えつけて評判を落としてくれるなって」
「いやでも、そのトシも了承してるぞ」
脚本表紙に土方の閲覧署名があるのを確認した沖田は瞬きをひとつした。
何考えてんだ、土方さん。こんなんで近藤さんの目が覚めるとでも思ってんのか?
「じゃ、まァ、そーいうことで総悟。お妙さんに話持ってって」
「え、いやですよ。どんな仕打ち受けるか知れたもんじゃねェ。近藤さんと違って俺ァ打たれ弱いんですよ。ていうか、自分で持って行ってくださいよ」
「そうしたいのも山々だが、トシと一緒に来いってとっつぁんに呼ばれてんだ」
相手が近藤の想い人でなければ簡単であったろうに、まったく厄介な任務を仰せつかったものだ。
「確かにはまり役なのかも知れませんけど……。これって暗に、私があの人に詐欺を働いていると言われているのかしら?」
ほォーら、来やがった。
一瞬にして空気が凍りついた。連れてきた隊士は座ったままガチガチと手足を震えさせている。妙がそう思うのも無理はない。なんせその脚本は近藤と妙をモデルに脚色されて出来上がったものなのだから。
「そんなことありませんぜ。一般市民の暮らしに密接した作りになってるだけでさァ」
とぼけてみるが、妙は眉を寄せて小さく唸っている。
「うーん……。そうよね、さすがに私、ラストオーダーでドンペリ三十本なんてお願いしたことないもの。一本しかお願いしたことないもの」
ちゃっかりやってたよ。ラストオーダーで終わる終わる詐欺やってたよ、この人。近藤さんのボディガード行為も洒落になんねーが、姐さんの詐欺まがい、恐喝まがい行為も洒落になんねーや。
沖田が適当に場を繋いでいると近藤がやってきた。どうやら単に手持ち無沙汰であったらしい。企画書を捲っては脚本を捲っていた妙は、近藤の顔を見るといつもの調子と落ち着きを取り戻していた。当の近藤は、ちゃっかり私服に着替えていた。ちゃっかり中年キャバクラ常連客を演じるつもりである。沖田は一息ついて土方の所在を近藤に訊ねた。
「トシなら疲れたからもう寝るって」
あの野郎、面倒くせーこと押しつけやがって。
沖田は心内で毒づいたが、考えを改めて口端を上げた。どこか抜けている近藤と妙のことだ。泳がせておけば何か面白いことが起こるかも知れない。沖田は隊士たちとコマーシャル撮影に取りかかった。
淑やかな美人キャバクラ嬢を演じる妙は、脚本にあった中年オヤジの下ネタをさらりとかわした。演技と言えども華麗にかわされ、近藤のほうは調子が狂うらしい。空白になっていた個所は自ら適当に埋めることになっていたが、どえらいものが埋められ、沖田はにやついた。
いつの間にできあがってたんでェ、このふたり。飲み物と言えば女の汗って、こいつァひでーや。こんなもん公共電波で流せねーや。明日の朝、ビデオカメラに納まってるバカップルがシコシコ埋めた地雷で土方のヤローの吹っ飛びを拝むのが楽しみになってきたぜ。
「謝礼はそれなりに弾むんで、このとおりでさァ、姐さん」
と、ソファに腰掛けていた沖田は膝に両手を突いて頭を下げる。妙を挟んで座っていた隊士たちも沖田に倣って頭を下げる。
「まァ。沖田さんにそこまで言われてしまったら、私も無下にお断わりできませんねェ」
と、頬に手を当て、満更でもなさそうにする。が、まだ渋っているようだ。
流石、しぶとい近藤さんをああも懐柔してるだけあるな。なかなか乗ってきやしねェ。もうひと押し行っとくか。
口を開こうとしたが、妙に先手を取られる。
「終わる終わる詐欺だなんて、詐欺にもいろんな種類があるんですねェ。私も気をつけなくちゃ。で?今日、近藤さんは?」
妙は沖田から受け取った企画書の捲ったページを戻してそれをテーブルに置いた。沖田たちの他に真選組隊士がいないだろうかと店の通路や出入り口を眺める。
「ちょっと立て込んでるんだかで遅れてるだけです。あの人、ああ見えてちゃんと仕事してるんですよ」
ふっと笑う沖田を横目に、妙はまた企画書に視線を戻した。再度、手に取ってページを捲る。
「そうなんですか……」
なんだ?妙に落ち着きがないな。いつもどっしり構えてる印象だったが、実はそうでもねェのか?
「この中年のキャバクラ常連客って、どなたが演じるんですか?」
「近藤さんです。はまり役でしょう」
くすりと笑う沖田につられて妙もくすくすと笑った。
警察庁広報室から各部署へ詐欺撲滅キャンペーンコマーシャル制作を割り振られた。真選組は、終わる終わる詐欺だ。終わると匂わせ、がっつりと金をつぎ込ませる。しかし、実入りの良さに味を占めた詐欺師は結局終わらせることなく被害者の欲求を揺さぶり、終わりを匂わせることを繰り返す詐欺だ。騙す側も騙される側も甘い汁を吸っているのだから詐欺と断定する線引きは難しい。それをわかりやすく噛み砕いた脚本を書いた隊士を近藤は絶賛していた。
「この美人キャバ嬢役はお妙さんで決まりだよね!」
と、近藤はコマーシャルに自らが出演する気満々ではしゃいでいたのだ。
「じゃァ、近藤さんは中年キャバクラ常連客役するんですかィ?洒落になんねーからやめといたほうがいいですよ。そもそも土方さんが黙っちゃいませんぜ。これ以上、真選組に悪印象植えつけて評判を落としてくれるなって」
「いやでも、そのトシも了承してるぞ」
脚本表紙に土方の閲覧署名があるのを確認した沖田は瞬きをひとつした。
何考えてんだ、土方さん。こんなんで近藤さんの目が覚めるとでも思ってんのか?
「じゃ、まァ、そーいうことで総悟。お妙さんに話持ってって」
「え、いやですよ。どんな仕打ち受けるか知れたもんじゃねェ。近藤さんと違って俺ァ打たれ弱いんですよ。ていうか、自分で持って行ってくださいよ」
「そうしたいのも山々だが、トシと一緒に来いってとっつぁんに呼ばれてんだ」
相手が近藤の想い人でなければ簡単であったろうに、まったく厄介な任務を仰せつかったものだ。
「確かにはまり役なのかも知れませんけど……。これって暗に、私があの人に詐欺を働いていると言われているのかしら?」
ほォーら、来やがった。
一瞬にして空気が凍りついた。連れてきた隊士は座ったままガチガチと手足を震えさせている。妙がそう思うのも無理はない。なんせその脚本は近藤と妙をモデルに脚色されて出来上がったものなのだから。
「そんなことありませんぜ。一般市民の暮らしに密接した作りになってるだけでさァ」
とぼけてみるが、妙は眉を寄せて小さく唸っている。
「うーん……。そうよね、さすがに私、ラストオーダーでドンペリ三十本なんてお願いしたことないもの。一本しかお願いしたことないもの」
ちゃっかりやってたよ。ラストオーダーで終わる終わる詐欺やってたよ、この人。近藤さんのボディガード行為も洒落になんねーが、姐さんの詐欺まがい、恐喝まがい行為も洒落になんねーや。
沖田が適当に場を繋いでいると近藤がやってきた。どうやら単に手持ち無沙汰であったらしい。企画書を捲っては脚本を捲っていた妙は、近藤の顔を見るといつもの調子と落ち着きを取り戻していた。当の近藤は、ちゃっかり私服に着替えていた。ちゃっかり中年キャバクラ常連客を演じるつもりである。沖田は一息ついて土方の所在を近藤に訊ねた。
「トシなら疲れたからもう寝るって」
あの野郎、面倒くせーこと押しつけやがって。
沖田は心内で毒づいたが、考えを改めて口端を上げた。どこか抜けている近藤と妙のことだ。泳がせておけば何か面白いことが起こるかも知れない。沖田は隊士たちとコマーシャル撮影に取りかかった。
淑やかな美人キャバクラ嬢を演じる妙は、脚本にあった中年オヤジの下ネタをさらりとかわした。演技と言えども華麗にかわされ、近藤のほうは調子が狂うらしい。空白になっていた個所は自ら適当に埋めることになっていたが、どえらいものが埋められ、沖田はにやついた。
いつの間にできあがってたんでェ、このふたり。飲み物と言えば女の汗って、こいつァひでーや。こんなもん公共電波で流せねーや。明日の朝、ビデオカメラに納まってるバカップルがシコシコ埋めた地雷で土方のヤローの吹っ飛びを拝むのが楽しみになってきたぜ。
ラブラブ詐欺
Text by mimiko.
2015/09/04