第六百二十七訓(六十九巻)「平和と破滅は表裏一体」
第六百二十八訓(WJ2017年17号)「ジャムの蓋が開かなくなった時はゴム手袋でぎゅっと掴もう」
第六百二十九訓(WJ2017年18号)「推理はロジックが大切」
上記前提で、第六百二十八訓と第六百二十九訓の間のこうだったらいいのにな近妙妄想。
既出の「ハードボイルドな一本」とは別バージョンのダーツなあれです。
近藤さんの思考が男子特有の自分勝手でよろしくない感じなのでご注意を。
第六百二十八訓(WJ2017年17号)「ジャムの蓋が開かなくなった時はゴム手袋でぎゅっと掴もう」
第六百二十九訓(WJ2017年18号)「推理はロジックが大切」
上記前提で、第六百二十八訓と第六百二十九訓の間のこうだったらいいのにな近妙妄想。
既出の「ハードボイルドな一本」とは別バージョンのダーツなあれです。
近藤さんの思考が男子特有の自分勝手でよろしくない感じなのでご注意を。
的外れ
「お妙さん、俺ァただね、ツッコまれたかっただけなんです。俺、しばらく江戸を離れてたじゃないですか。だから、戻って来た実感をしたかった。ただそれだけなんです。なのに、あの銀髪天パは冷てェよなァ。野郎と違ってやっぱお妙さんは優しいよね。パンデモニウムさんとお妙さんを間違えてみたらちゃんとツッコんでくれたもんね」
と、近藤は酒の肴に妙特製の卵焼きを食す。
「間違えられるのって、なんだか居心地悪くって。全くもう、誰がお妙ですか、私がお妙なのに。べ、別に近藤さんがパンデモニウムさんとキ、キスしたのが許せなかったとか、嫉妬してるとか、そんなんじゃないんですからね」
「わかってますって」
と、近藤は口元を緩めた。
隣に正座する妙は胡坐を掻く近藤の猪口に酒を注いだ。こうして妙に酒を注いでもらえばかつての店通いを思い出す。キャバ嬢の売上競争に巻き込まれて持ち金を巻き上げられたりしつつも楽しい酒を味わったあの日々が懐かしい。
「私は人違いされたことがムカついただけなんですから。全然、そういうんじゃないんですから」
念を押した妙は頬を膨らませて言い訳をした。まるで恋人の犯した罪にむくれているようであり、まるで愛染香の効果で近藤に惚れているかのようだ。
パンデモニウムの幻覚作用がまだ残っているのかもしれない。
年の割にしっかりしている妙だが、年相応にあれこれ未体験で幻想を抱いたりするかもしれない。さすれば恋など特にそうなのかもしれない。恋愛に対しての理想が高く、恋愛の相手にはそれ相応の対応を望んでいることだろう。なにせ妙の理想のタイプはビーズの稲葉さんである。はぐれ刑事(ゴキブリ)のゴリさんでしかない自分には分不相応である。しかも妙を好きすぎる自分は中二(思春期)に返る病を患っているのだから余計に分が悪い。
妙はなんの病を患っているのだろう。ゴキブリと見れば叩きたくなる病だろうか。それとも自分相手に恋の病にでも罹ってくれているだろうか。病のひとつも罹ることなく弟の保護者としての役割を全うしようと励んでいるだろうか。
「ていうか、どうして私を他の誰かと間違うんです? そもそもどうして近藤さんはいつも的を外すんです? たまには的を射たようにビシッとキメてくださってもいいじゃないですか」
「はァ……」
気の抜けた返事に業を煮やした妙は溜め息をつくと、宴の準備や談笑で騒がしい部屋の隅へ寄り、腰を下ろした。何か探し物をしているのか物音を立てている。
「ああ、これがいいんじゃないかしら」
雑貨やらが無造作に突っ込まれている箱から妙はダーツとその的を取り出した。簡易的なものではあるが、そのダーツが的を射るには設置場所を考慮しなければならない。壁に設置する前提の的は、厚みはあれどただの厚紙の的である。矢を当てれば厚紙の的を貫通し、針の跡がつくのは予想がつく。
「いつも的を外す近藤さんの腹に直接お聞きしますね」
近藤の傍へ寄り、妙はにこりと小首を傾げる。
「随分とヒーローチックな制服着てらっしゃるんですね。新しいのもかっこいいけど、私、真選組の前の制服、結構好きだったんですよ。だから、なんだか寂しいわ」
と、近藤の上着を脱がせた。
「いや、あのお妙さん。いくら俺とあなたの仲とは言え、公然猥褻になりますよ。タイホされちゃいますよ。だからやめて、お妙さん」
近藤が止めるのも聞かずに妙は近藤のズボンを下ろす。晒を取り除いて褌を残した妙は的を貼りつけた腰紐を結ぼうと近藤の腰に両手を回した。近づくポニーテールから妙の匂いがしたが、土っぽい匂いもする。戦い通しで風呂に入れないのだ。よく鉄拳制裁を受ける時に香っていた妙の匂いがいつもより濃い。これはこれで悪くなく寧ろいいが自分自身にも言える。というか戦い通しで汗臭くなっているのは寧ろ自分のほうである。
「お妙さん、あんまり近づくとダメですよ、俺汗臭いんで」
言っているのと同時、妙は近藤の脇腹に鼻先をつけた。
「本当。いつもより濃いですね」
近藤の動きが止まる。その言い方、別の意味合いに取るととんでもないことになる。つまり、褌の中の自分がとんでもないことになる。身体の動きも固まって思考も固まって褌の中の自分も固まってしまう。よしておけ、下半身を意識してはいけない。
固く目を閉じた瞬間、一糸纏わぬ妙が、自分の吐き出した白い欲望を両手で受け止め、いつもより濃いですねと上目遣いで微笑む様を思い浮かべる。想像の中で湧き起った組み敷きたい願望を振り切ろうと目を見開いた。
妙の心の的を外しまくっている報復を甘んじて受けるべきだ。妙をいつも怒らせているのは自分なのだから。
両手首に紐を巻かれ、それを左右に広げて壁に打たれた。
「じっとしててくださいよ、近藤さん。じゃないと、その顔の傷に匹敵するような傷跡ついちゃうかもしれませんから」
と、妙は微笑み、腹に的のついた標的(自分)と距離をとる。
いつも的を外す自分の腹に直接聞くと妙は言っていが、今まさに効いている。妙特製卵焼きが効いている。こんなに即効性があっただろうか。少し会わない間に妙は暗黒物質(ダークマター)生成の腕を上げていたのだ。なんという成長の仕方だ。どうせなら気にし過ぎているペチャパイのほうを成長させておけばいいものを。いや、別にペチャパイでもデカパイでも妙のパイなら妙の乳首なら自分はなんでもいい。
便意を散らすにために先ほど脳裏に浮かべた己の白い欲望を飛散させた裸の妙を撫でまわして舐めまわして犯す。脳内でだ。悪しからず。
妙は自ら設置した腹の的にはダーツ矢を当てることなく、開いた両腕、頭、脇腹をかたどるように壁を射っていく。
意図的に的を外している。途中でやってきた刀打ちの娘と的外しダーツを愉しんでいる。
ほんの一時、愛しの女との戯れタイムだとしてもだ。これは酷い仕打ちだ。己の脳内でその愛しの女をいいように扱ってはいるが。それにしても酷い。いつ終わるのだ。いい加減的を射て終了させてくれ。厠に駆け込みたい。前も後ろもパンパンである。一刻も早く厠へ逝きたい。
ああ、そうか。妙もこんな気持ちだったのかもしれない。敢えてダーツ矢を外す遊びに興じ、終わりのないゲームを愉しむ。自分が妙にしてきたことだ。自分から近寄って行ったのに答えを出すことなくはぐらかし続けた。こんなところで今までのツケが回ってこようとは。
「お妙さん、わかりました。俺が悪かったです。だからその持ってる矢射ったら一回両腕はずして、お願い。ちょっと休憩お願いします」
「ええー、休憩ですか? まだ近藤さんの足元に射損ねた矢が落ちてるから、それ回収して投げてからで構いませんか?」
いや、構いませんかじゃないよ。空腹に熱燗と妙の卵焼きはいただけなかった。いつもより濃いですねの一言はいただけたけれども。
近藤は後悔の念と自分勝手な想像の中で妙を辱めたことの自責の念との狭間、無の境地へと己を追いやった。
近藤が妙の仕置きから解放されたのは情報を持ち帰った土方が酒乱の太夫に尻込みし、宴会場への入り直しが完了して且つ、一通りの詳細が説明されてからだった。
と、近藤は酒の肴に妙特製の卵焼きを食す。
「間違えられるのって、なんだか居心地悪くって。全くもう、誰がお妙ですか、私がお妙なのに。べ、別に近藤さんがパンデモニウムさんとキ、キスしたのが許せなかったとか、嫉妬してるとか、そんなんじゃないんですからね」
「わかってますって」
と、近藤は口元を緩めた。
隣に正座する妙は胡坐を掻く近藤の猪口に酒を注いだ。こうして妙に酒を注いでもらえばかつての店通いを思い出す。キャバ嬢の売上競争に巻き込まれて持ち金を巻き上げられたりしつつも楽しい酒を味わったあの日々が懐かしい。
「私は人違いされたことがムカついただけなんですから。全然、そういうんじゃないんですから」
念を押した妙は頬を膨らませて言い訳をした。まるで恋人の犯した罪にむくれているようであり、まるで愛染香の効果で近藤に惚れているかのようだ。
パンデモニウムの幻覚作用がまだ残っているのかもしれない。
年の割にしっかりしている妙だが、年相応にあれこれ未体験で幻想を抱いたりするかもしれない。さすれば恋など特にそうなのかもしれない。恋愛に対しての理想が高く、恋愛の相手にはそれ相応の対応を望んでいることだろう。なにせ妙の理想のタイプはビーズの稲葉さんである。はぐれ刑事(ゴキブリ)のゴリさんでしかない自分には分不相応である。しかも妙を好きすぎる自分は中二(思春期)に返る病を患っているのだから余計に分が悪い。
妙はなんの病を患っているのだろう。ゴキブリと見れば叩きたくなる病だろうか。それとも自分相手に恋の病にでも罹ってくれているだろうか。病のひとつも罹ることなく弟の保護者としての役割を全うしようと励んでいるだろうか。
「ていうか、どうして私を他の誰かと間違うんです? そもそもどうして近藤さんはいつも的を外すんです? たまには的を射たようにビシッとキメてくださってもいいじゃないですか」
「はァ……」
気の抜けた返事に業を煮やした妙は溜め息をつくと、宴の準備や談笑で騒がしい部屋の隅へ寄り、腰を下ろした。何か探し物をしているのか物音を立てている。
「ああ、これがいいんじゃないかしら」
雑貨やらが無造作に突っ込まれている箱から妙はダーツとその的を取り出した。簡易的なものではあるが、そのダーツが的を射るには設置場所を考慮しなければならない。壁に設置する前提の的は、厚みはあれどただの厚紙の的である。矢を当てれば厚紙の的を貫通し、針の跡がつくのは予想がつく。
「いつも的を外す近藤さんの腹に直接お聞きしますね」
近藤の傍へ寄り、妙はにこりと小首を傾げる。
「随分とヒーローチックな制服着てらっしゃるんですね。新しいのもかっこいいけど、私、真選組の前の制服、結構好きだったんですよ。だから、なんだか寂しいわ」
と、近藤の上着を脱がせた。
「いや、あのお妙さん。いくら俺とあなたの仲とは言え、公然猥褻になりますよ。タイホされちゃいますよ。だからやめて、お妙さん」
近藤が止めるのも聞かずに妙は近藤のズボンを下ろす。晒を取り除いて褌を残した妙は的を貼りつけた腰紐を結ぼうと近藤の腰に両手を回した。近づくポニーテールから妙の匂いがしたが、土っぽい匂いもする。戦い通しで風呂に入れないのだ。よく鉄拳制裁を受ける時に香っていた妙の匂いがいつもより濃い。これはこれで悪くなく寧ろいいが自分自身にも言える。というか戦い通しで汗臭くなっているのは寧ろ自分のほうである。
「お妙さん、あんまり近づくとダメですよ、俺汗臭いんで」
言っているのと同時、妙は近藤の脇腹に鼻先をつけた。
「本当。いつもより濃いですね」
近藤の動きが止まる。その言い方、別の意味合いに取るととんでもないことになる。つまり、褌の中の自分がとんでもないことになる。身体の動きも固まって思考も固まって褌の中の自分も固まってしまう。よしておけ、下半身を意識してはいけない。
固く目を閉じた瞬間、一糸纏わぬ妙が、自分の吐き出した白い欲望を両手で受け止め、いつもより濃いですねと上目遣いで微笑む様を思い浮かべる。想像の中で湧き起った組み敷きたい願望を振り切ろうと目を見開いた。
妙の心の的を外しまくっている報復を甘んじて受けるべきだ。妙をいつも怒らせているのは自分なのだから。
両手首に紐を巻かれ、それを左右に広げて壁に打たれた。
「じっとしててくださいよ、近藤さん。じゃないと、その顔の傷に匹敵するような傷跡ついちゃうかもしれませんから」
と、妙は微笑み、腹に的のついた標的(自分)と距離をとる。
いつも的を外す自分の腹に直接聞くと妙は言っていが、今まさに効いている。妙特製卵焼きが効いている。こんなに即効性があっただろうか。少し会わない間に妙は暗黒物質(ダークマター)生成の腕を上げていたのだ。なんという成長の仕方だ。どうせなら気にし過ぎているペチャパイのほうを成長させておけばいいものを。いや、別にペチャパイでもデカパイでも妙のパイなら妙の乳首なら自分はなんでもいい。
便意を散らすにために先ほど脳裏に浮かべた己の白い欲望を飛散させた裸の妙を撫でまわして舐めまわして犯す。脳内でだ。悪しからず。
妙は自ら設置した腹の的にはダーツ矢を当てることなく、開いた両腕、頭、脇腹をかたどるように壁を射っていく。
意図的に的を外している。途中でやってきた刀打ちの娘と的外しダーツを愉しんでいる。
ほんの一時、愛しの女との戯れタイムだとしてもだ。これは酷い仕打ちだ。己の脳内でその愛しの女をいいように扱ってはいるが。それにしても酷い。いつ終わるのだ。いい加減的を射て終了させてくれ。厠に駆け込みたい。前も後ろもパンパンである。一刻も早く厠へ逝きたい。
ああ、そうか。妙もこんな気持ちだったのかもしれない。敢えてダーツ矢を外す遊びに興じ、終わりのないゲームを愉しむ。自分が妙にしてきたことだ。自分から近寄って行ったのに答えを出すことなくはぐらかし続けた。こんなところで今までのツケが回ってこようとは。
「お妙さん、わかりました。俺が悪かったです。だからその持ってる矢射ったら一回両腕はずして、お願い。ちょっと休憩お願いします」
「ええー、休憩ですか? まだ近藤さんの足元に射損ねた矢が落ちてるから、それ回収して投げてからで構いませんか?」
いや、構いませんかじゃないよ。空腹に熱燗と妙の卵焼きはいただけなかった。いつもより濃いですねの一言はいただけたけれども。
近藤は後悔の念と自分勝手な想像の中で妙を辱めたことの自責の念との狭間、無の境地へと己を追いやった。
近藤が妙の仕置きから解放されたのは情報を持ち帰った土方が酒乱の太夫に尻込みし、宴会場への入り直しが完了して且つ、一通りの詳細が説明されてからだった。
的外れ
Text by mimiko.
2017/09/22