第56、57巻、単行本未収録~WJ2015年14号第五百三十一訓「脱獄」まで前提にしている近妙です。
近藤さんとお妙さんが再会したら?!のしっとりモードが険悪モードになったりならなかったりする妄想です。案の定どこだそこwwです。やなり適当なので雰囲気で読んでくださいませ。
近藤さんとお妙さんが再会したら?!のしっとりモードが険悪モードになったりならなかったりする妄想です。案の定どこだそこwwです。やなり適当なので雰囲気で読んでくださいませ。
面倒な性分
旧政権を愚弄する新政権の支配に彼女は立ち向かった。なんの力を持ち合わせていない彼女は、ただ信じていた。俺は、残すことが、託すことが己のできる最善だと信じていた。だが、残すことも、託すこともできてはいなかった。護りたかった者さえも、護れなかった。
手段は違えど志しを同じとする者の助力により、俺は仲間たちと再会し、言葉なく別れた彼女とも再会した。
ただ、女の幸せを掴んでほしかった。だが、あなたはそれだけで満足する女ではありませんでしたね。欲深い人だ。
「お妙さん」
名を呼ぶと、こちらへ駆け寄る彼女の歩みが止まった。
「ありがとう」
一言告げて行こうとした。が、
「近藤さん!」
呼び止められて、その顔を見てしまった。
「今、俺がここにいるのは、仲間やかつての敵のお陰です。そして、あなたのお陰だ」
次に言うのが最後だと息を吸う。
「警察を、真選組(俺たち)を、信じてくれてありがとう」
これ以上、話すことはないと言い聞かせて背を向けた。
「待って……!」
女物の草履がぱたぱたと音を鳴らしてこちらに近づいてきたと思ったら、正面に回られていた。まずい、これでは決心が鈍る。視線をやらずにいたのに、彼女の両手に右手を取られて彼女に頬にその手を当てられた。目を合すのは必至だ。
「気をつけて行ってきてください」
目尻を下げて俺の手に頬ずりする彼女に目も心も奪われた。願ったり叶ったりで夢心地ではあるが、自分たちだけが浮かれていては非常にまずい。視線を逸らすと、白魚のような手が俺の顔に伸びてきた。細い指が頬に触れる。温かい。
「行ってきますくらい言ったらどうですか」
「しかし……」
渋る俺の口に彼女の親指が触れた。視線は再び彼女の瞳に戻る。必至に決まっている。
「ちょっとはそちらから動こうという気はないんですか」
「なくはないですが、しかし……」
煮え切らない俺に痺れを切らせた彼女は自分の手を下ろし、俺の手も下ろさせた。今度は俺の両手を自分の背中へと回させ、俺の腕の中に納まる。胸に頬ずりをする。やはり温かい。
「つきまとってる時と真逆すぎです」
「すみません……」
と、彼女の首の左側にそっと触れる。
「痛みますか?」
「いいえ、少し刃が当たっただけです」
俺は彼女の体を離れさせ、首の傷を確認した。きめ細かな美しい肌に糸のような赤い斬り傷が残っている。
「申し訳ない」
嫁入り前の娘になんてことをしてしまったのだろう。後悔しかない。
「あなたに責任はありません。私がしたことの結果です。だから、気にしないでください。あ、やっぱり気にしてもらおうかしら。責任とってもらってください」
「しかし……」
傷物云々のせいで彼女は自分の気持ちを無視するというのか。
「しかし?どういうことです?今まであなたが何度も申し込んできたプロポーズをお受けすると言ったんですよ。嬉しくないんですか?」
「あなたと一緒になれるのは嬉しいです。前と変わらず今も同じ気持ちでいる。だが、あなたの気持ちはどうなんですか。それに、今話すことでもないでしょう」
「だったら今すぐ黙らせてください。さあ、どうぞ」
むっとした彼女は俺に顔を向けて目を閉じた。
「傷物になったから仕方がないと諦めてませんか」
返事はなく、彼女は目を閉じたままでいる。
「本当に俺を好いてますか」
「ご自分で確かめてください」
目を閉じたまま言われ、俺は彼女の首にかかる髪を指で除けて傷跡に唇をつけた。
「なっ、んっ……」
彼女から切なげな声が洩れると唇を離す。
「うーん、わからねェな」
顎に手をやって控えめに笑うと、彼女は眉を吊り上げた。左右の拳で交互に胸を叩かれる。
「もうっ!近藤さんのバカっ!」
「はは、すみません。けど、約束します。もう一度あなたに結婚を申し込む。だから、それまで待っててください」
「もうっ!面倒くさい人っ!」
「はは、すみません。よく言われます」
いくら馬鹿な俺でも、こんな不安定な時に自分だけ惚れた腫れたにうつつ抜かせられないよ。
手段は違えど志しを同じとする者の助力により、俺は仲間たちと再会し、言葉なく別れた彼女とも再会した。
ただ、女の幸せを掴んでほしかった。だが、あなたはそれだけで満足する女ではありませんでしたね。欲深い人だ。
「お妙さん」
名を呼ぶと、こちらへ駆け寄る彼女の歩みが止まった。
「ありがとう」
一言告げて行こうとした。が、
「近藤さん!」
呼び止められて、その顔を見てしまった。
「今、俺がここにいるのは、仲間やかつての敵のお陰です。そして、あなたのお陰だ」
次に言うのが最後だと息を吸う。
「警察を、真選組(俺たち)を、信じてくれてありがとう」
これ以上、話すことはないと言い聞かせて背を向けた。
「待って……!」
女物の草履がぱたぱたと音を鳴らしてこちらに近づいてきたと思ったら、正面に回られていた。まずい、これでは決心が鈍る。視線をやらずにいたのに、彼女の両手に右手を取られて彼女に頬にその手を当てられた。目を合すのは必至だ。
「気をつけて行ってきてください」
目尻を下げて俺の手に頬ずりする彼女に目も心も奪われた。願ったり叶ったりで夢心地ではあるが、自分たちだけが浮かれていては非常にまずい。視線を逸らすと、白魚のような手が俺の顔に伸びてきた。細い指が頬に触れる。温かい。
「行ってきますくらい言ったらどうですか」
「しかし……」
渋る俺の口に彼女の親指が触れた。視線は再び彼女の瞳に戻る。必至に決まっている。
「ちょっとはそちらから動こうという気はないんですか」
「なくはないですが、しかし……」
煮え切らない俺に痺れを切らせた彼女は自分の手を下ろし、俺の手も下ろさせた。今度は俺の両手を自分の背中へと回させ、俺の腕の中に納まる。胸に頬ずりをする。やはり温かい。
「つきまとってる時と真逆すぎです」
「すみません……」
と、彼女の首の左側にそっと触れる。
「痛みますか?」
「いいえ、少し刃が当たっただけです」
俺は彼女の体を離れさせ、首の傷を確認した。きめ細かな美しい肌に糸のような赤い斬り傷が残っている。
「申し訳ない」
嫁入り前の娘になんてことをしてしまったのだろう。後悔しかない。
「あなたに責任はありません。私がしたことの結果です。だから、気にしないでください。あ、やっぱり気にしてもらおうかしら。責任とってもらってください」
「しかし……」
傷物云々のせいで彼女は自分の気持ちを無視するというのか。
「しかし?どういうことです?今まであなたが何度も申し込んできたプロポーズをお受けすると言ったんですよ。嬉しくないんですか?」
「あなたと一緒になれるのは嬉しいです。前と変わらず今も同じ気持ちでいる。だが、あなたの気持ちはどうなんですか。それに、今話すことでもないでしょう」
「だったら今すぐ黙らせてください。さあ、どうぞ」
むっとした彼女は俺に顔を向けて目を閉じた。
「傷物になったから仕方がないと諦めてませんか」
返事はなく、彼女は目を閉じたままでいる。
「本当に俺を好いてますか」
「ご自分で確かめてください」
目を閉じたまま言われ、俺は彼女の首にかかる髪を指で除けて傷跡に唇をつけた。
「なっ、んっ……」
彼女から切なげな声が洩れると唇を離す。
「うーん、わからねェな」
顎に手をやって控えめに笑うと、彼女は眉を吊り上げた。左右の拳で交互に胸を叩かれる。
「もうっ!近藤さんのバカっ!」
「はは、すみません。けど、約束します。もう一度あなたに結婚を申し込む。だから、それまで待っててください」
「もうっ!面倒くさい人っ!」
「はは、すみません。よく言われます」
いくら馬鹿な俺でも、こんな不安定な時に自分だけ惚れた腫れたにうつつ抜かせられないよ。
面倒な性分
Text by mimiko.