ツイッターでもお世話になっている某お方の素敵なRTされた数だけ押しキャラにひよこを乗せる近妙にいてもたってもいられずに妄想してしまった下ネタラブコメディ。卵なのでいろいろかけてみました。残念な近藤さんがいます。

卵のランデブー

 愛する彼女の部屋。栗色のポニーテールの彼女の背を抱き、そっと押し倒してゆっくりと畳へ寝かせる。にこりと笑って俺を見上げる彼女がとてもかわいらしい。艶やかな桜色の唇が遠慮がちに開く。
「……近藤さん……」
 その唇を一目見るだけでも、すぐ食べたくなってしまうのに、柔らかい声で名前を呼ばれたりしたら、その声音ごと食べたくなってしまう。俺は誘われるまま、彼女の桜色に口づけた。
「ん、お妙……さん……、ちゅっ」
 かわいい唇につい夢中になってしまい、つもりのない音が立つ。音に反応した彼女の舌がびくりとした。
「ふぅ、んっ」
 くぐもった声もかわいい。今度は、唇で舌先を挟んでからわざと音を立てて放してやった。頬まで桜色に染めた彼女の瞳が、口端を上げる俺の顔を映す。が、恥ずかしそうに目を伏せた。長い睫毛がきれいだ。戸惑いで瞳が揺れたかと思えば、意を決したかのように真っ直ぐ見つめられる。俺の首に回していた手は下され、畳へぱたりと落ちた。それは降服するということでいいのかな。自然と口元が緩む。締りのない顔を隠すように彼女の首元に唇を寄せた。鎖骨に口づけようとしたところで甘い声が上がる。
「あんっ、くすぐったいっ」
 触れる前だったのにそんな声が洩れ、頭を上げた。彼女を窺う。身を捩りながら眉を寄せ、やめてくれと反応している。いや、待ってくれ。俺は何もしてない。不意に、ピヨっと高い音がした。まるでヒヨコの鳴き声だ。
「やっ、ん、いたっ」
と、また身を捩る。また鳴き声もした。こもってはいるが、やはりピヨピヨと鳴いている。ということは、そこにいるのだろうか。静聴しようと彼女の胸元に耳を当てた。胸の柔らかさではない。何かが収まっている。そして、再び鳴き声がした。本当にヒヨコがいるというのか。ぎょっとして体を起こす。目視しようと着物と襦袢の衿をまとめて掴み、開いた。
「なッ……?!」
 黄色の羽を纏ったよちよち歩きの小さな生物が一羽、出現したかと思いきや、次から次へと出てくるわ出てくるわ。あっという間に彼女の白い肌一面を黄色い雛鳥が埋め尽くす。怪奇だ。何故にヒヨコがおなごの胸元から湧いて出てくるのだ。
「近藤さんが私のことを思って……その、む……夢精するから……」
 絶句した。どうしてそれを知っているんだ。彼女は頬を紅くする。
「だから……私の卵に近藤さんが入り込んで……有精卵がたくさん孵ったんです……」
 彼女の卵とは如何に。彼女は鶏の雛が孵る卵を産むというのか。いや、断じて違う。彼女はより強きゴリラを残すべく月々、排卵しているはずだ。そう、ゴリラという二つ名を持つこの俺の精を受けるためにだ。俺以外の精は無用であるから日々、無精卵を黒焦げにしている。そうに違いないのだ。
「ならば、お妙さん。もっとたくさん卵、孵しちゃいましょう」
 浮かれて声を弾ませる。
「はい。もっと私の体を温めてくださいね、近藤さん」
 甘くねだられ、また自然と口元が緩んだ。開いていた衿から手を離し、着物の衿下に指を差し込んで捲る。すると、着物の奥からよちよちとヒヨコたちが歩いてきた。
「もう、お妙さん。どんだけ俺のこと受け入れてんですか」
「だって……」
 いや、待ってくれ。照れてる場合じゃないだろう。目を覚ますんだ。ヒヨコプレイなんざおっぱじめちまったら、ろくに動けたもんじゃねーぞ。一羽や二羽じゃねーんだヒヨコの数がどう考えても多すぎる。目を覚ませ。目を覚まして――
「生粋のゴリラプレイでお妙さんの卵を受精させるんだッ!」
「おんどりゃァァ!!なんちゅー夢見てくれとんのじゃァァァ!!」
 鼻に強い衝撃を感じた。言い訳にしかならない弁明をしたかったが、顔面に彼女の拳がめり込んでいて言葉を発せない。愛する彼女は憤慨している。どうやら夢でのことを口にしていたらしい。仕留められた顔面が解放されると、そこが志村家の客間であることを確認した。畳に転がっていた俺は肘を突いて体を起こす。
「私の卵焼きを食べたいっていうからお作りしたのに、変態な夢見て、変態な寝言言うなんて……。変態なのは顔だけにしてください」
と、彼女は青筋を立てながら微笑んだ。
 ああ、そうだった。愛しの彼女の手料理を頬張っていたら意識が遠のいてしまったのだ。しかし、ヒヨコが湧いて出てくるまでは、実にいい夢であった。
「さ、起きてください。土方さんが探しに来ましたよ」
 遠くで部下の声がする。促されて上半身を起こしきると彼女の胸が視界に入った。念のためにと、俺は行儀よく正座する彼女の正面に自分の両膝を突き合わせた。背中に片手を回して胸元に頭を寄せる。耳に当たるは胸の柔らかさだ。着物の向こうから雛鳥の鳴き声はしない。ただ、彼女の鼓動が徐々に速まる音しかしなかった。
「よかった……ちゃんとペチャパイだ……」
 安堵し、呟くと脳天に衝撃を受けた。頬に愛する彼女の太腿が触れたような気がするが、俺にその感触の記憶はない。
卵のランデブー
Text by mimiko.
2015/06/03

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