近妙前提な佐々木視点です。黒獄島のジャングル在中な佐と近と妙。
第59巻~単行本未収録~WJ2015年28号第五百四十四訓「剣の記憶」まで前提。
近藤さんとお妙さんが再会したら?!の妄想第7弾目。
サブちゃん偽者くさいですすみません。
58巻と59巻の狭間で近妙がすっかり出来上がってる設定。
お妙さんそんな危険なところにいちゃだめだ!ってところにいたりする適当具合。
以上、ご注意を。

届けたい言葉

 近藤に担がれていた片腕から自らの腕力が抜ける。同時に脚力も抜け、地に膝を突く。気力だけではどうにもならないところまできたのだ。体からの宣告に、佐々木はいよいよ諦める。自分のことなど捨てて行けと言ったのに、それを素直に聞かない近藤は、後を追ってきた女を引き連れ、自分を連れて行こうとする。重度のお人好しだ。
 過去に踏み躙られた弱く愛しき命に誓い、より多くの屍の上に立つまではと、踏ん張ってきた。しかし、それも最早これまでだ。よくやった。そう、信じるしかない。
 女に助言し、自分に手当を施す近藤に話しかける。
「愛する者を護れなかったあの日から、私は死に場所を探していたんです。こうなることは私の望みだった。あなたが気をやる必要はありません。私のことより、彼女のことに気をやりなさい」
と、佐々木は近藤の女を見やる。
「彼女はあなたが帰らずとも、ひとりで産み、育てようとしていたようですよ」
 はっとした近藤は女を見やった。女は肯定するように頷く。
「あなたも隅に置けない男(ひと)ですね。普段はストーカープレイに興じてイチャつきもしないのに、別のところでしっかりイチャついた後だとは」
 いつか言われた松平の言葉を思い返し、佐々木は薄く笑う。
「ひとりで子供を育てるというのは骨が折れますよ。まずは認知してあげなさい。そして、あなたは愛する者たちを護って行くんです」
 この目にすることのなかった自分に似て面長に産まれてしまった赤子を抱き、笑いかける妻を思い浮かべ、微笑む。
「大いに悩み、迷ってください」
 佐々木は自分の怪我の具合を案じる近藤の目を見つめた。
「子供の名前ですよ。それがきっと父親って奴なんでしょう、近藤さん?」
 過去に佐々木へ送った言葉を返され、近藤は眉根を寄せた。
「あの子に……、子供の名をあげたあの子に会ったら、よろしく伝えてください……」
 薄れゆく意識に身をゆだねるように瞼を下す。
「どこへなりとも飛んでゆきなさい……あなたは、もう、自由だ、と……」
 最後に目にしたのは、悲愴な面持ちで自分を窺う近藤とその女だった。つくづく自分の言葉は、届けたい者へ届けられないものなのだと笑った。
届けたい言葉
Text by mimiko.
2015/06/12

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