近妙。ちゅーしてます。
「あなたにキスをねだってみたー」shindanmaker.com/457054 の2016/3/17付診断結果(ミミコの志村妙が近藤勲にキスをねだってみると、キスだけかと尋ねられた。それ以上のこともしたいのかと聞き返すと、自分から聞いてきたくせに顔を赤くして目を逸らされてしまった。まったく、仕方ないな。)より
「あなたにキスをねだってみたー」shindanmaker.com/457054 の2016/3/17付診断結果(ミミコの志村妙が近藤勲にキスをねだってみると、キスだけかと尋ねられた。それ以上のこともしたいのかと聞き返すと、自分から聞いてきたくせに顔を赤くして目を逸らされてしまった。まったく、仕方ないな。)より
ちゃんとしてください
もう少しすれば弟が帰ってくる。久しぶりの庭から訪問により始まった逢瀬も終わってしまう。
妙は縁側に腰掛けている近藤の横顔を見つめた。茶を飲み終え、湯呑みを盆へ戻すと、すぐ傍からの視線に気づいた近藤は、にこりと笑う。妙は笑顔を返しながら気を落とした。
庭先訪問が途絶える前のことだったが、とても激しく愛された。あれほどの愛し方をする人物と目の前の気の抜けた和やかゴリラが同一だとはなかなか思い難い。けれど、少しでもこちらが気を許せばこの和やかゴリラは穏やかに狼へと変貌する。自分であって自分でないあんな醜体はできればもう曝されたくない。自分を容易くただの女にしてしまう近藤が怖い。怖いから近寄りたくない。なのに、僅かな時でも傍にいたい。そして、近づきたい。
妙は心を決めて口を開いた。
「あの……」
出た声は掠れていた。妙の鼓動が跳ねる。意識していることが近藤に知られてしまったはずだ。目が合い、息を飲む。近藤は、ただ自分を見つめている。
ずるい。こんな時だけ黙って見つめて、こちらの自由を奪うなんてずるい。
妙は下唇を噛んだ。口を噤んでしまった妙に近藤は再び笑顔を向ける。
「お茶ご馳走様でした。また来ます」
胡座を掻いていた膝を立て、庭で脱いだ草履へと足を伸ばす。
「……って……」
妙の声がして近藤は足を止める。
「待って、近藤さん。忘れてますよ」
言われて振り返ると、腕に妙の両手が縋った。近藤の視線は、言葉を紡ぐ妙の唇へ行く。
「……キス……」
最後に発した音は唇を微に開かせている。目を伏した近藤は妙へ手を伸ばした。耳の下をくぐった近藤の指は妙のうなじを撫で、親指は耳朶を撫でる。耳と首にあの日の感覚が呼び起こされて妙の鼓動が高鳴る。妙は自然と目を閉じ、待った。脳裏には目を閉じる前に見た近藤の唇が映っている。早くあの甘美な口づけを味わいたい。先ほどまで近藤のことが怖いと思っていたのに早く早くと気が急く。待ち切れなくなった妙の目が開くのと同時にそれは触れた。妙の額に。拍子抜けた妙は瞬きをひとつする。目の前には近藤の目元ではなく、髭の生えた顎がある。間違いない。額に口づけられたのだ。
あんなに取り乱すほど激しく愛しておきながら、あんなに甘くて熱くて激しい口づけを何度もしておきながら、今更そんな子供がするようなことをされるとは。
「違います」
妙は静かに言った。
「ちゃんとしてください」
続けて静かに言った。近藤は嫌な予感を抱きながら遠慮がちに妙の唇に口づけてすぐに顔を離した。
「違います」
妙は再び静かに言った。
「いや、でも……」
「でもじゃありません。ちゃんとしてください」
「そうは言っても、新八君がそろそろ帰って来ちゃいますよ」
「だからです。早くしてください」
と、妙は眉間に皺を寄せて目を閉じる。むっとした表情で口づけをねだられ、近藤は苦笑する。口づけを交わす雰囲気ではない。しかし、こう出た妙に恥をかかせる訳にもいかない。近藤は妙の背を抱き寄せ、口づけた。妙の唇を啄ばみ、次に唇を重ねて離し、角度を変えて唇を重ね合わせる。徐々に深くなる口づけに妙の頬は上気し、息は上がる。寄っていた眉はすっかり下がり、近藤に応じる。妙のくぐもった声が口内に響き始めると唇は離された。妙の潤んだ瞳には近藤の唇が映されている。
「すみません。やり過……」
「……もっと……」
嫌な予感は的中した。こうなってしまうだろうからよしておきたかったのに。妙の呟く声に近藤は後悔した。
「それはキスのことですか?」
「え……?」
「キスだけもっとしたいんですか?」
問われてどきりとする。図星だ。もう口づけだけでは足りない。けれど、こちらを溶かしにかかるほど口づけた近藤が悪いのだ。
「それ以上のこともしたいんですか?」
訊き返し、じっと見つめると近藤は顔を赤くした。
「あの、上目遣いやめてください」
と、目線を逸らす。
「こないだのお妙さん思い出しちゃうから上目遣いはやめて」
今頃になって照れ出す近藤に妙は笑みをこぼした。
妙は縁側に腰掛けている近藤の横顔を見つめた。茶を飲み終え、湯呑みを盆へ戻すと、すぐ傍からの視線に気づいた近藤は、にこりと笑う。妙は笑顔を返しながら気を落とした。
庭先訪問が途絶える前のことだったが、とても激しく愛された。あれほどの愛し方をする人物と目の前の気の抜けた和やかゴリラが同一だとはなかなか思い難い。けれど、少しでもこちらが気を許せばこの和やかゴリラは穏やかに狼へと変貌する。自分であって自分でないあんな醜体はできればもう曝されたくない。自分を容易くただの女にしてしまう近藤が怖い。怖いから近寄りたくない。なのに、僅かな時でも傍にいたい。そして、近づきたい。
妙は心を決めて口を開いた。
「あの……」
出た声は掠れていた。妙の鼓動が跳ねる。意識していることが近藤に知られてしまったはずだ。目が合い、息を飲む。近藤は、ただ自分を見つめている。
ずるい。こんな時だけ黙って見つめて、こちらの自由を奪うなんてずるい。
妙は下唇を噛んだ。口を噤んでしまった妙に近藤は再び笑顔を向ける。
「お茶ご馳走様でした。また来ます」
胡座を掻いていた膝を立て、庭で脱いだ草履へと足を伸ばす。
「……って……」
妙の声がして近藤は足を止める。
「待って、近藤さん。忘れてますよ」
言われて振り返ると、腕に妙の両手が縋った。近藤の視線は、言葉を紡ぐ妙の唇へ行く。
「……キス……」
最後に発した音は唇を微に開かせている。目を伏した近藤は妙へ手を伸ばした。耳の下をくぐった近藤の指は妙のうなじを撫で、親指は耳朶を撫でる。耳と首にあの日の感覚が呼び起こされて妙の鼓動が高鳴る。妙は自然と目を閉じ、待った。脳裏には目を閉じる前に見た近藤の唇が映っている。早くあの甘美な口づけを味わいたい。先ほどまで近藤のことが怖いと思っていたのに早く早くと気が急く。待ち切れなくなった妙の目が開くのと同時にそれは触れた。妙の額に。拍子抜けた妙は瞬きをひとつする。目の前には近藤の目元ではなく、髭の生えた顎がある。間違いない。額に口づけられたのだ。
あんなに取り乱すほど激しく愛しておきながら、あんなに甘くて熱くて激しい口づけを何度もしておきながら、今更そんな子供がするようなことをされるとは。
「違います」
妙は静かに言った。
「ちゃんとしてください」
続けて静かに言った。近藤は嫌な予感を抱きながら遠慮がちに妙の唇に口づけてすぐに顔を離した。
「違います」
妙は再び静かに言った。
「いや、でも……」
「でもじゃありません。ちゃんとしてください」
「そうは言っても、新八君がそろそろ帰って来ちゃいますよ」
「だからです。早くしてください」
と、妙は眉間に皺を寄せて目を閉じる。むっとした表情で口づけをねだられ、近藤は苦笑する。口づけを交わす雰囲気ではない。しかし、こう出た妙に恥をかかせる訳にもいかない。近藤は妙の背を抱き寄せ、口づけた。妙の唇を啄ばみ、次に唇を重ねて離し、角度を変えて唇を重ね合わせる。徐々に深くなる口づけに妙の頬は上気し、息は上がる。寄っていた眉はすっかり下がり、近藤に応じる。妙のくぐもった声が口内に響き始めると唇は離された。妙の潤んだ瞳には近藤の唇が映されている。
「すみません。やり過……」
「……もっと……」
嫌な予感は的中した。こうなってしまうだろうからよしておきたかったのに。妙の呟く声に近藤は後悔した。
「それはキスのことですか?」
「え……?」
「キスだけもっとしたいんですか?」
問われてどきりとする。図星だ。もう口づけだけでは足りない。けれど、こちらを溶かしにかかるほど口づけた近藤が悪いのだ。
「それ以上のこともしたいんですか?」
訊き返し、じっと見つめると近藤は顔を赤くした。
「あの、上目遣いやめてください」
と、目線を逸らす。
「こないだのお妙さん思い出しちゃうから上目遣いはやめて」
今頃になって照れ出す近藤に妙は笑みをこぼした。
ちゃんとしてください
Text by mimiko.
2016/03/19