WJ2015年12号第五百二十九訓「忘れもの」前提の近→←妙+新です。
近藤さんがみんなのもとへ戻って来れたところ設定だけど、どこだそこwwです。その他諸々足りない感じなので雰囲気で読んでいただけると有り難いです。
近藤さんがお妙さんのことなんて今はもう好きじゃねーし?と嘘ぶっこいてます。
ブツ切り終了してます。
以上ご注意を。
近藤さんがみんなのもとへ戻って来れたところ設定だけど、どこだそこwwです。その他諸々足りない感じなので雰囲気で読んでいただけると有り難いです。
近藤さんがお妙さんのことなんて今はもう好きじゃねーし?と嘘ぶっこいてます。
ブツ切り終了してます。
以上ご注意を。
嘘も方便
最後にその顔を見た時にはなかった妙の白い首に薄らと糸のような傷跡を見た。護りたいもののために命をも差し出そうとする度胸は賛辞したいところだ。だが、それは命知らずを意味する。命を産みだす女の身でありながら惜しげもなくその命を差し出す。女はすべての者の母であるというのにだ。若い身空で母になることもなく命を落とすことなどあってはならない。ましてや愛した女だ。近藤は手が届く数歩手前まで近づき、妙の正面に立った。
「市井の者である自覚を持てば、その身を白刃の前にさらすこともないでしょう。心配は無用です。赤の他人に心配されるほど俺は落ちぶれちゃいねェ。なのに、どうしましたか。俺が惜しくなりましたか。まさか、今になって好いた惚れたをほじくりかえしますか。そちらがその気になったとしても、こちらにその気はありません。申し訳ないが忘れてください」
妙は、迷いのない近藤の目を見つめたまま涙をこぼした。わかっていたことなのに言わせてしまった自分が情けない。使命を持ったその首が大事であるのは承知していた。力を持たない自分は後を追うようなことしかできなかった。近寄ってくるなと言われることは知っていた。考えるまでもないことだ。なのに、言えなかった。先に自分が言っていればと妙は後悔する。目の前で素っ気ない男を演じる近藤の正体は酷く優しい男であるのに。その声で発する冷たい言葉に傷ついているのは自分ではなく近藤のほうであるのに。
「生憎、俺に君たちの兄上の代わりは務まらねェ。俺は何をどうしようが真選組(けいさつ)だ。護るべきは国であって道場じゃない」
妙の横で黙っていた新八は怒りに濡れた瞳で近藤の胸倉を掴んだ。
「いくら姉上のためだからって言っていいことと悪いことがあるぞゴリラ」
きつく睨み上げられ、近藤は、ふっと笑う。
「お妙さんのため?おかしなことを言うな、新八くん」
と、豪快に笑ったあとつけ足した。
「俺のためだよ」
近藤の小さな黒目に寂しげ色が混じっている。新八は眉根を寄せた。
「ゴリラのくせにふざけてんじゃねェ!あれだけ姉上につきまとっておいて、あれだけ僕に兄貴風吹かせておいて、護りたいもん隠れ蓑にして目ェ逸らしてんじゃねェ!その内さらせよクソゴリラァ!アンタが帰ってくるのを待ってた僕らの前ですべて曝け出せってんだよコノヤローッ!」
胸倉を掴む新八の震える手に姉が触れた。
「もういいじゃない、新ちゃん。真選組は帰ってきたんだから。私たちは、私たちが在るべきところへ帰りましょう」
妙は新八に微笑んだ。近藤のほうを見ようともしない妙の瞳に、先程の近藤と同じ寂しげな色を見る。同じ気持ちでいるはずなのに、このふたりは何故にこうも嘘をつき通そうとするのだ。いや、何故ではない。自分はその訳を知っていた。そして、自分もまた目を逸らしていたひとりであった。互いが互いのことを思いやった結果がこれなのか。ふたりの優しさは傷口にぬられた塩のようにしょっぱい。原因は自分にある。ならば、自分が足掻かなければいけない。
「いやです。僕らを置いて行ったゴリラがせっかくこうして帰ってきたんだから一発くらい殴ってもいいじゃないですか。いや、姉上のほうこそ殴るべきです。姉上がどんな想いで白刃の前へ出たかわからないようなバカなら一発くらい殴ったって罰なんて当たらない」
妙は、近藤の胸倉を掴む新八の手から自分の手を下ろした。近藤に背を向け、行こうとする。
「姉上!」
新八の声に妙の歩みが止まる。
「もういいのよ、新ちゃん。最初にお断りしたのは私のほうなんだから。最初から本当に何もなかったんだから」
「最初から何もないなら、なんであんなことしたんですかッ!」
「仲間を傷つけられて黙っていられなかった……ただそれだけよ」
「姉上、それは同僚のことですか。それともこのゴリラのことですか」
「同僚の子のことよ。それ以外に何もないわ」
新八は近藤を放した。意地を張る姉の元へ行く。その正面に立つと、いつかの時と同じように頬を打った。もちろん力加減はしたが、叫ぶ声に加減はしない。
「アンタらいい加減にしろよッ!この期に及んであーだこーだ言い訳ぶっこいてんじゃねーぞッ!僕が邪魔なら邪魔だって最初っから正々堂々と除け者にしろよッ!毎回毎回ゴリラとメスゴリラがいちゃこいてんの見せられるメスゴリラの弟の気持ち考えたことあんのかコノヤローッ!」
妙の肩越しに佇む近藤の視線が下がった。妙も同じ顔をしている。
「……僕は認めない。アンタらがそうやって意地になってなんでもない振りしてるのなんか認めない。いい加減、向き合ってください。じゃなきゃ、僕もアンタらに向き合いません」
「市井の者である自覚を持てば、その身を白刃の前にさらすこともないでしょう。心配は無用です。赤の他人に心配されるほど俺は落ちぶれちゃいねェ。なのに、どうしましたか。俺が惜しくなりましたか。まさか、今になって好いた惚れたをほじくりかえしますか。そちらがその気になったとしても、こちらにその気はありません。申し訳ないが忘れてください」
妙は、迷いのない近藤の目を見つめたまま涙をこぼした。わかっていたことなのに言わせてしまった自分が情けない。使命を持ったその首が大事であるのは承知していた。力を持たない自分は後を追うようなことしかできなかった。近寄ってくるなと言われることは知っていた。考えるまでもないことだ。なのに、言えなかった。先に自分が言っていればと妙は後悔する。目の前で素っ気ない男を演じる近藤の正体は酷く優しい男であるのに。その声で発する冷たい言葉に傷ついているのは自分ではなく近藤のほうであるのに。
「生憎、俺に君たちの兄上の代わりは務まらねェ。俺は何をどうしようが真選組(けいさつ)だ。護るべきは国であって道場じゃない」
妙の横で黙っていた新八は怒りに濡れた瞳で近藤の胸倉を掴んだ。
「いくら姉上のためだからって言っていいことと悪いことがあるぞゴリラ」
きつく睨み上げられ、近藤は、ふっと笑う。
「お妙さんのため?おかしなことを言うな、新八くん」
と、豪快に笑ったあとつけ足した。
「俺のためだよ」
近藤の小さな黒目に寂しげ色が混じっている。新八は眉根を寄せた。
「ゴリラのくせにふざけてんじゃねェ!あれだけ姉上につきまとっておいて、あれだけ僕に兄貴風吹かせておいて、護りたいもん隠れ蓑にして目ェ逸らしてんじゃねェ!その内さらせよクソゴリラァ!アンタが帰ってくるのを待ってた僕らの前ですべて曝け出せってんだよコノヤローッ!」
胸倉を掴む新八の震える手に姉が触れた。
「もういいじゃない、新ちゃん。真選組は帰ってきたんだから。私たちは、私たちが在るべきところへ帰りましょう」
妙は新八に微笑んだ。近藤のほうを見ようともしない妙の瞳に、先程の近藤と同じ寂しげな色を見る。同じ気持ちでいるはずなのに、このふたりは何故にこうも嘘をつき通そうとするのだ。いや、何故ではない。自分はその訳を知っていた。そして、自分もまた目を逸らしていたひとりであった。互いが互いのことを思いやった結果がこれなのか。ふたりの優しさは傷口にぬられた塩のようにしょっぱい。原因は自分にある。ならば、自分が足掻かなければいけない。
「いやです。僕らを置いて行ったゴリラがせっかくこうして帰ってきたんだから一発くらい殴ってもいいじゃないですか。いや、姉上のほうこそ殴るべきです。姉上がどんな想いで白刃の前へ出たかわからないようなバカなら一発くらい殴ったって罰なんて当たらない」
妙は、近藤の胸倉を掴む新八の手から自分の手を下ろした。近藤に背を向け、行こうとする。
「姉上!」
新八の声に妙の歩みが止まる。
「もういいのよ、新ちゃん。最初にお断りしたのは私のほうなんだから。最初から本当に何もなかったんだから」
「最初から何もないなら、なんであんなことしたんですかッ!」
「仲間を傷つけられて黙っていられなかった……ただそれだけよ」
「姉上、それは同僚のことですか。それともこのゴリラのことですか」
「同僚の子のことよ。それ以外に何もないわ」
新八は近藤を放した。意地を張る姉の元へ行く。その正面に立つと、いつかの時と同じように頬を打った。もちろん力加減はしたが、叫ぶ声に加減はしない。
「アンタらいい加減にしろよッ!この期に及んであーだこーだ言い訳ぶっこいてんじゃねーぞッ!僕が邪魔なら邪魔だって最初っから正々堂々と除け者にしろよッ!毎回毎回ゴリラとメスゴリラがいちゃこいてんの見せられるメスゴリラの弟の気持ち考えたことあんのかコノヤローッ!」
妙の肩越しに佇む近藤の視線が下がった。妙も同じ顔をしている。
「……僕は認めない。アンタらがそうやって意地になってなんでもない振りしてるのなんか認めない。いい加減、向き合ってください。じゃなきゃ、僕もアンタらに向き合いません」
嘘も方便
Text by mimiko.
2015/02/22