初一織。
おんぶ
下校時刻の校門前は生徒で溢れかえっていた。その中を一護は織姫を背負って校門を出る。周りの生徒たちはふたりを注目し、織姫はその視線の数に萎縮した。
昼休み、織姫はクラスの男子のボール遊びに巻き込まれ、軽度の捻挫を負ってしまった。一護は助けられなかった悔しさでボールを投げ損じた男子を激しく叱咤した。その場は啓吾に抑えられ、水色に織姫を背負って送るということで許してもらえばいいではないかと提案され、今に至る。
「黒崎くん、ごめんね、恥ずかしいよね。それに私、重いでしょ?」
耳に息が掛かりそうな至近距離で声を掛けられ一護はどきりとした。
「いや……大丈夫」
鼓動が先程より大きく鳴っているのがわかる。
これって耳まで真っ赤になってないか?
一護は織姫の唇が近い右耳を意識した。
ヤバイ。意識したら余計に耳、熱くなってきた。こういう時は全然違うこと考えろ。
一度、頭を空っぽにして他の事を考えようとするが、背中の温かく柔らかい感触に一護は頬を熱くした。
なんつーか、その、すごく存在感あるよな、重圧感っていうか……。体育の時とか体動かすと揺れ……。いや別に普段からそういうこと考えてるわけじゃねえぞ!断じて違う!……て、俺は誰にいい訳してるんだよ……。
一護は溜息をついた。それに気づいた織姫はショックを受けつつ声を掛ける。
「あの、やっぱり自分で歩くよ。黒崎くん、下ろして」
「ああ違うって、大丈夫。井上は重くなんてないって」
「じゃあ、なんで溜息……」
尻つぼみになる織姫の声に一護は慌てて答えた。
「別に井上を背負うのが嫌とかじゃなくて、むしろ背負うっていうか、背負わせてくれっていうか」
顔は見えないが、きっと織姫は不思議そうな顔をしているだろう。
「えっと、だから、その……」
一護はしどろもどろになりながら黙ってしまった。
ああ、くそっ。
上手く言えず一護は自分にいらついた。
なんて言えばいいんだよ。胸が当たって嬉しいですとか言えばいいのか?て、そんなわけねえよ、それじゃあそういうことだけ考えてるみたいじゃねえか。考えてないって言ったら嘘になるけどそのまま言ったらダメだろ。
一護は一息つき、口を開く。
「井上が温かくて、腕とか髪もいい匂いで気持ちいいけど、意識して……ドキドキする……」
次第に声が小さくなっていったが織姫の耳に最後まで届き、織姫は赤面した。ふと一護の耳が赤くなっているのに気づき、織姫は微笑んだ。
「うん、ありがと……」
織姫に回されていた腕に抱き締められ、一護は間の抜けた声を出した。
「ん?」
どうかしたかという声に一護は苦笑した。
「はは、なんでもないです」
やっぱ、わかってねえ。
昼休み、織姫はクラスの男子のボール遊びに巻き込まれ、軽度の捻挫を負ってしまった。一護は助けられなかった悔しさでボールを投げ損じた男子を激しく叱咤した。その場は啓吾に抑えられ、水色に織姫を背負って送るということで許してもらえばいいではないかと提案され、今に至る。
「黒崎くん、ごめんね、恥ずかしいよね。それに私、重いでしょ?」
耳に息が掛かりそうな至近距離で声を掛けられ一護はどきりとした。
「いや……大丈夫」
鼓動が先程より大きく鳴っているのがわかる。
これって耳まで真っ赤になってないか?
一護は織姫の唇が近い右耳を意識した。
ヤバイ。意識したら余計に耳、熱くなってきた。こういう時は全然違うこと考えろ。
一度、頭を空っぽにして他の事を考えようとするが、背中の温かく柔らかい感触に一護は頬を熱くした。
なんつーか、その、すごく存在感あるよな、重圧感っていうか……。体育の時とか体動かすと揺れ……。いや別に普段からそういうこと考えてるわけじゃねえぞ!断じて違う!……て、俺は誰にいい訳してるんだよ……。
一護は溜息をついた。それに気づいた織姫はショックを受けつつ声を掛ける。
「あの、やっぱり自分で歩くよ。黒崎くん、下ろして」
「ああ違うって、大丈夫。井上は重くなんてないって」
「じゃあ、なんで溜息……」
尻つぼみになる織姫の声に一護は慌てて答えた。
「別に井上を背負うのが嫌とかじゃなくて、むしろ背負うっていうか、背負わせてくれっていうか」
顔は見えないが、きっと織姫は不思議そうな顔をしているだろう。
「えっと、だから、その……」
一護はしどろもどろになりながら黙ってしまった。
ああ、くそっ。
上手く言えず一護は自分にいらついた。
なんて言えばいいんだよ。胸が当たって嬉しいですとか言えばいいのか?て、そんなわけねえよ、それじゃあそういうことだけ考えてるみたいじゃねえか。考えてないって言ったら嘘になるけどそのまま言ったらダメだろ。
一護は一息つき、口を開く。
「井上が温かくて、腕とか髪もいい匂いで気持ちいいけど、意識して……ドキドキする……」
次第に声が小さくなっていったが織姫の耳に最後まで届き、織姫は赤面した。ふと一護の耳が赤くなっているのに気づき、織姫は微笑んだ。
「うん、ありがと……」
織姫に回されていた腕に抱き締められ、一護は間の抜けた声を出した。
「ん?」
どうかしたかという声に一護は苦笑した。
「はは、なんでもないです」
やっぱ、わかってねえ。
おんぶ
Text by mimiko.
2009/11/06