微妙に「つまみ食い」から続いていたり。銀←妙な嫉妬お妙さんです。
捏造設定→近藤さんの自宅は屯所とは別にある
捏造設定→近藤さんの自宅は屯所とは別にある
一夜限りの関係は調子付いて勢いに乗ること 1
今日は仕事が休みで陽気が良く、妙はご機嫌な様子で大江戸スーパーの袋を手に自宅へと向かう。先日、万事屋の近くを通りがかるとキャサリンとたまに声を掛けられた所を通り過ぎた。
あ、やなこと思い出したわ。
妙は目を細めて溜め息をついた。
キャサリンたちには銀時がまた家賃を滞納している、見かけたら知らせて欲しいと言われた。新八の給料もここ数ヶ月支払われていない。生活費を削り、自分の給料も大半を道場復興、いや我が家をより強固な鋼の要塞にするべく積み立てている。もしキャサリンたちより先に銀時を見つけたらまず新八の給料を支払わせてやる。そう意気込み帰宅がてら万事屋の前を通ると本人が路地裏から出てくるのを見かけた。向こうへ行ったはずのキャサリンたちが万事屋の方へ戻ってくるのに気づいて銀時は路地裏に引っ込んだ。キャサリンたちは銀時に気づかなかったのを幸いとしたが、こそこそと身を隠す様に憤りを感じた。
あんのダメ侍なめやがってェ!引きずり出してやんよ!―なんて思ったのが間違いだったのよ。従業員に給料も支払わずに家賃も滞納。なのに道端で白昼堂々とあんないやらしいことをやってるなんて、ほんとダメ侍。なんって最低な男なの。侍の風上にも置けないわ。
銀時はいつもと違う鮮やかな着物を着たあやめと口づけを交わしていた。しかも唇が重なるだけのものでもなく大人のそれだった。目撃した妙は唇を噛み締め、我に返る頃にはすでにその場を離れていた。
あれは数日前のことだったのにまだ鮮明に覚えている。いつもの銀時と違う大人の男の雰囲気を感じた。
いつもは目と眉が離れてだらしないのに猿飛さんにはああいうことをちゃっかりやってるのね。何よ銀さん、いつも―寄るな納豆女!あっち行け!―とか言ってるくせに本当は好きなの?
「よォ!」
前方から見知った男の声がし、びくりとしたが立ち止まることなくその男とすれ違う。
「え、何、姉上、俺なんかした?」
妙の片眉がぴくりと上がる。
万年金欠で死んだ魚の目をした銀髪の弟なんてうちにはいないわよ。
「ん?今日はストーカーいねーみてェだな」
額に手を当て周囲を見回す銀時。
「万事屋さん、何か御用でも?」
「オイオイ、なんなの。えれェ他人行儀じゃねーの。何、アレか?恋人が他の女にちょっと色目使ったから謝ってくるまで他人の振りよ、ぷんぷん!とかか?えー、でもそりゃしょーがねェよ?銀さんモテっから。浮気は男の甲斐性っていうし。いや、浮気は文化?」
俯いたまま黙っている妙の様子を窺おうと銀時は傍へ寄る。
「なんだ?腹でもいてーのか?」
妙は自分の方へと伸ばされた手を払う。ひりりとした手の甲を摩りながら妙がいつもと違う様子に気づくも銀時は変わらない調子で話し出す。
「元気あんじゃねーか、心配させんなよ。そーそー、真選組のゴリラ、またどこぞの星の王女と見合いすんだってよ。大変だよなァ、年頃の男の子って」
心配?
「おまえもそろそろアイツのこと真剣に考えてやったらどうだ?」
そろそろ?
銀時の言葉を素直に聞き入れることが出来ない。今は微塵も思っていないことでも適当に話を合わせる余地がない。心の奥底から黒く渦を巻いたものが沸いてくるのがわかった。
どうして私だけこんな気持ちでいるの?わかっていてわざと近藤さんの話を持ち出してるの?
「心配って何よ。心にも思ってないことを言わないで下さい。私とあなたは恋人同士でもなんでもありません。あたなが納豆女と乳繰り合ってようが何してようが私には一切関係ありませんから!」
次々と攻撃を繰り出すように言われて一瞬目を丸くしたが、妙が言わんとしていることに少なからず心当たりがある。銀時は溜め息をつき、頭を掻いた。
「なんだよ、やっぱ妬いてんじゃねーか。やめた方がいいぞ、俺マジモテっから。愛人のひとりやふたり、いや三人四人五人……納豆女も何番目だったけ?マジきりねーし。もう、みんなの銀さん引っ張りダコ。こんな浮気症で万年金欠侍なんかより高給取りで将来有望な幕臣の方が幸せにしてくれっぞ」
銀時は妙に背を向けひらひらと手を振り行ってしまった。
別に銀さんのことも近藤さんのことも好きじゃないのに、なんでそんな余計なお世話なこと言われなきゃならないのよ。
「……なんなのよ……」
妙は自分から離れていく銀時の後姿を見つめながら腹の底から憤りが沸いてくるのを感じ、それを声と共に吐き出す。
「うぬぼれてんじゃないわよハゲがァァ!」
銀時の後を追い、その背中に向かって飛び上がり、妙の草履が銀時の背中を踏む。地に倒れた銀時は受身を取れずに頭を打ち、額から血を流す。何事だと周囲に通行人が集まり出すが、妙は買い物袋をがさがさと音を立てるように振り回し、自宅へと駆けた。呼吸を乱しながら何も考えずに走る。見慣れた建物が並ぶ道へ出ると張っていた気が弛み、速くなっていた呼吸を整えようと大きく息を吸い、吐く。
あの角を曲がれば家まで目と鼻の先だわ。
走る速度を緩め、角を曲がる。すると正面にないはずの壁に当たり、顔を上げた。
「あ、お妙さん」
近藤だった。
「そんなに急いでどうしたんですか?あ、昼ドラの録画でも忘れたんでしょう。だったら家に来ます?お妙さんが観てるドラマの完全収録DVDありますよ?なーんて」
あははと笑う近藤の胸に妙は額を寄せ、隊服を握り締めた。
「え、お妙さん?どーしちゃったんです?!」
慌てた近藤の手はわたわたと落ち着きなく空を掻いた。
あ、やなこと思い出したわ。
妙は目を細めて溜め息をついた。
キャサリンたちには銀時がまた家賃を滞納している、見かけたら知らせて欲しいと言われた。新八の給料もここ数ヶ月支払われていない。生活費を削り、自分の給料も大半を道場復興、いや我が家をより強固な鋼の要塞にするべく積み立てている。もしキャサリンたちより先に銀時を見つけたらまず新八の給料を支払わせてやる。そう意気込み帰宅がてら万事屋の前を通ると本人が路地裏から出てくるのを見かけた。向こうへ行ったはずのキャサリンたちが万事屋の方へ戻ってくるのに気づいて銀時は路地裏に引っ込んだ。キャサリンたちは銀時に気づかなかったのを幸いとしたが、こそこそと身を隠す様に憤りを感じた。
あんのダメ侍なめやがってェ!引きずり出してやんよ!―なんて思ったのが間違いだったのよ。従業員に給料も支払わずに家賃も滞納。なのに道端で白昼堂々とあんないやらしいことをやってるなんて、ほんとダメ侍。なんって最低な男なの。侍の風上にも置けないわ。
銀時はいつもと違う鮮やかな着物を着たあやめと口づけを交わしていた。しかも唇が重なるだけのものでもなく大人のそれだった。目撃した妙は唇を噛み締め、我に返る頃にはすでにその場を離れていた。
あれは数日前のことだったのにまだ鮮明に覚えている。いつもの銀時と違う大人の男の雰囲気を感じた。
いつもは目と眉が離れてだらしないのに猿飛さんにはああいうことをちゃっかりやってるのね。何よ銀さん、いつも―寄るな納豆女!あっち行け!―とか言ってるくせに本当は好きなの?
「よォ!」
前方から見知った男の声がし、びくりとしたが立ち止まることなくその男とすれ違う。
「え、何、姉上、俺なんかした?」
妙の片眉がぴくりと上がる。
万年金欠で死んだ魚の目をした銀髪の弟なんてうちにはいないわよ。
「ん?今日はストーカーいねーみてェだな」
額に手を当て周囲を見回す銀時。
「万事屋さん、何か御用でも?」
「オイオイ、なんなの。えれェ他人行儀じゃねーの。何、アレか?恋人が他の女にちょっと色目使ったから謝ってくるまで他人の振りよ、ぷんぷん!とかか?えー、でもそりゃしょーがねェよ?銀さんモテっから。浮気は男の甲斐性っていうし。いや、浮気は文化?」
俯いたまま黙っている妙の様子を窺おうと銀時は傍へ寄る。
「なんだ?腹でもいてーのか?」
妙は自分の方へと伸ばされた手を払う。ひりりとした手の甲を摩りながら妙がいつもと違う様子に気づくも銀時は変わらない調子で話し出す。
「元気あんじゃねーか、心配させんなよ。そーそー、真選組のゴリラ、またどこぞの星の王女と見合いすんだってよ。大変だよなァ、年頃の男の子って」
心配?
「おまえもそろそろアイツのこと真剣に考えてやったらどうだ?」
そろそろ?
銀時の言葉を素直に聞き入れることが出来ない。今は微塵も思っていないことでも適当に話を合わせる余地がない。心の奥底から黒く渦を巻いたものが沸いてくるのがわかった。
どうして私だけこんな気持ちでいるの?わかっていてわざと近藤さんの話を持ち出してるの?
「心配って何よ。心にも思ってないことを言わないで下さい。私とあなたは恋人同士でもなんでもありません。あたなが納豆女と乳繰り合ってようが何してようが私には一切関係ありませんから!」
次々と攻撃を繰り出すように言われて一瞬目を丸くしたが、妙が言わんとしていることに少なからず心当たりがある。銀時は溜め息をつき、頭を掻いた。
「なんだよ、やっぱ妬いてんじゃねーか。やめた方がいいぞ、俺マジモテっから。愛人のひとりやふたり、いや三人四人五人……納豆女も何番目だったけ?マジきりねーし。もう、みんなの銀さん引っ張りダコ。こんな浮気症で万年金欠侍なんかより高給取りで将来有望な幕臣の方が幸せにしてくれっぞ」
銀時は妙に背を向けひらひらと手を振り行ってしまった。
別に銀さんのことも近藤さんのことも好きじゃないのに、なんでそんな余計なお世話なこと言われなきゃならないのよ。
「……なんなのよ……」
妙は自分から離れていく銀時の後姿を見つめながら腹の底から憤りが沸いてくるのを感じ、それを声と共に吐き出す。
「うぬぼれてんじゃないわよハゲがァァ!」
銀時の後を追い、その背中に向かって飛び上がり、妙の草履が銀時の背中を踏む。地に倒れた銀時は受身を取れずに頭を打ち、額から血を流す。何事だと周囲に通行人が集まり出すが、妙は買い物袋をがさがさと音を立てるように振り回し、自宅へと駆けた。呼吸を乱しながら何も考えずに走る。見慣れた建物が並ぶ道へ出ると張っていた気が弛み、速くなっていた呼吸を整えようと大きく息を吸い、吐く。
あの角を曲がれば家まで目と鼻の先だわ。
走る速度を緩め、角を曲がる。すると正面にないはずの壁に当たり、顔を上げた。
「あ、お妙さん」
近藤だった。
「そんなに急いでどうしたんですか?あ、昼ドラの録画でも忘れたんでしょう。だったら家に来ます?お妙さんが観てるドラマの完全収録DVDありますよ?なーんて」
あははと笑う近藤の胸に妙は額を寄せ、隊服を握り締めた。
「え、お妙さん?どーしちゃったんです?!」
慌てた近藤の手はわたわたと落ち着きなく空を掻いた。
一夜限りの関係は調子付いて勢いに乗ること 1
Text by mimiko.
2009/11/22
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