※近藤さんを大好きなお妙さんのために乙女の夢を叶えてあげよう!
※つまりちょっとえっちな少女漫画仕様
※大丈夫、やってないです。ちゅうで腰砕け程度です。

目は心の鏡

「ダメじゃありません」
 妙は近藤の手を握った。人気のない所へ引き連れ、近藤と向かい合う。繋いだ手を両手で握り、近藤を見つめた。
「ここなら人目もありませんから……」
「いやいやいや、人目がないって言っても完全にないわけじゃないからね。いつ気づかれるかわかんないよ?」
と、近藤は妙の手から逃げる。
「お願いです、近藤さん」
 妙は近藤の胸に体を寄せた。
「そんなこと言わずに慰めてください」
 近藤の胸に触れる軽く握っていた妙の拳が開いた。手の平で撫でるように触れられ、近藤は硬直する。妙の視線は胸から首、顎、唇と上がり、近藤は咄嗟にそっぽを向いた。こんな至近距離で見つめられたらたまったものではない。
「やっぱり傷物になった女は嫌ですか……?」
 問われて、近藤の眉間に皺が寄る。
「違います。そんなことあるわけねェ。違うんです。そうじゃなくて……」
 近藤は妙の両方の上腕を掴んだ。真っ直ぐ見上げられ、近藤は息を飲む。しまった、視線を合わせてしまった。妙の瞳に己の顔が映っている。近すぎる。恋焦がれていた女がこんなに近い。今すぐその美しい唇を犯したい。そうはしたくないのに、汚したい欲求が強くなる。近藤は欲望を振り切ろうと口を開いた。
「盛り上がってる状態で、そんなことしてもダメです。一時の感情でするもんじゃねェ。お互い頭を冷やしたほうがいいんです」
「そんなの、いや……」
 妙は切ないげな声とともに涙をこぼした。
「すみません……」
 泣かせてしまった。心から笑った妙をつい先ほど見たというのに、自分は泣かせてしまうことしかできないのか。
「俺はあなたを泣かせてばかりだ。俺はただあなたの笑顔を見たいだけなのに……」
 近藤は妙の目から視線を落とした。
「私の笑顔が見たいのなら、してください。今の私は、あなたに触れられることでしか笑えません」
「そんなの……」
と、近藤は妙を見る。妙が自分を見ると、見極めるように訊ねる。
「ほんとですか?」
「ほんとです」
「怒ったり……しません?」
「しません」
「あの、舌とか入れても、ほんとに怒りません?」
「え、舌……?」
「はい。だってキスするんでしょう?」
「えっ……」
 妙の驚いた声に近藤は聞き返した。
「……え?」
「え、だって、傷跡舐めるだけでしょう?」
「あ、いや、先にキスしたいなァなんて」
「え、き、キスするんですかっ?」
 顔を熱くして目を回す妙の額に近藤は口づけた。
「はい、キスしますよ。こんな軽いやつじゃないです」
「えっ」
「や、だって……首にキスするんですよね?」
「あ、はい……」
「それなら、濃いキスした後で首に行きたいじゃないですか。首に行ったら胸触りたくなるじゃないですか」
「え、そ、そうなんですかっ?」
「そりゃあそうですよ」
「あ、あの私、胸、ありませんよっ?」
「ありますよ。男にはない柔らかさで気持ちよくてずっと触ってたくなるような胸ありますって」
「え、そ、そんなのありませんよっ?」
「いやいや、あります。だって、お妙さん、女なんだから」
「え、わ、私、女じゃありませんよっ?」
 極度の緊張で目を回しすぎた妙は混乱している。近藤は溜息をついた。思っていた通りだ。
「あのねェ、お妙さん。軽率に男に首を舐めろなんて言うもんじゃないですよ。男なんてね、ちょっとでも女が気ィ許したらすぐにやれると思ってしまう生き物なんですから」
と、近藤は妙の首の傷跡に舌を這わせた。
「んっ……ぁっ……」
 女の声が小さく上がった。肩を揺らし、声を我慢しようと唇を噛む。ぴちゃりと水音が鳴り、妙の腰が揺れた。甘い溜息がもれる。
「こら、そんなやらしい声、こんなところで出しちゃダメですよ。あなたのいい声を他の野郎に聞かせたくないですからね、俺は」
 耳元で掠れた低い声に囁かれ、妙は鼓動を跳ねさせた。心がぞくりとして近藤にしがみつく。
「近藤さん……」
「はい」
「あの、私……」
 戸惑いながらも潤んだ瞳に見上げられ、近藤は微笑み小首を傾げた。
「だから、こんな往来でしたくなかったんですよ。こんなところで欲情されちまったらたまったもんじゃねェ……」
と、口づけた。
目は心の鏡(おまけ)
Text by mimiko.
2015/02/24

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