カボチャの魔法使い7

「ん、オタエさんの全身を舐めまくりたいです」
 臆面もなく言われ、恥ずかしくなる。
「舐めまくるっていうか、しゃぶりつくしたいっていうか」
 思わず想像してしまったオタエは目をぎゅっとつむる。
「だから、なんでそういうことを言うんですか」
「んー、だって、マジで喰っちまいたいですから」
と、速い鼓動で揺れる左胸の突起に誘われるまま口に含む。吸いながら舌で転がし、右胸の突起を指で挟んで転がす。
「っんん……!」
 はっきりとした刺激に驚き、オタエの目が開く。背が反り、体の芯がぎゅっと締まった。左胸が解放されたかと思えば、今度は右胸に吸いつかれ、イサオの口内で硬くされていた左胸の突起が指で転がされる。短く嬌声を上げるオタエの腰をイサオの右腕が絡みつき、ピンクの下着に黒いズボンの下で膨らんだ分身が押しつけられる。
「やぁっ」
 いやらしさが恥ずかしくて堪らないのに、上げてしまった声はとても甘いものだった。そこへ押しつけられる度に下着の中が濡れているのを実感させられる。それも恥ずかしいのに、更に体の芯が熱くなり、きゅんきゅんと締まる。
「んっ、んっ」
 眉を下げ、唇を引いて声を我慢するオタエが色っぽく、イサオは軽く口づけてからオタエの唇に舌を差し込んだ。イサオのもので下着を更に濡らされ、素肌にはイサオの衣服が触れ、双丘は押しつぶされてその頂は彼のシャツの薄い生地に擦られ、より敏感になる。繋がった口内では舌先を擽られ、オタエの視界がぼやける。体が熱い。その熱さの中に欲情を感じた。もっと彼を感じたい。ぬるついた下着と彼の服を取っ払って、彼を直に感じたい。
「ふぅう……んぅ……」
「ん?オタエさん……?」
 オタエは、唇を離したイサオの首元に手を伸ばした。
「え」
 黒いネクタイが外され、シャツのボタンを外されるのを見たイサオはオタエを窺う。
「あの?」
「……」
 無言でボタンを外すと開いたシャツの中に両手を差し込み両肩へと滑らせた。シャツとスーツを脱がせようとしたが、ズボンの中に入れられているシャツの裾がつかえて脱がせられない。オタエはズボンのベルトに手を伸ばした。が、その手をイサオが掴む。
「オタエさん?あの、ひょっとして、もっとしてくれ的なソレだったりします?」
 口に出されてオタエは赤面した。ぎこちなく首を縦に振り、イサオは表情を緩める。
「じゃ、遠慮なく」
と、言った声は弾んでおり、完全にデレデレと顔が緩んでいる。オタエの顔に後悔の色が出る。折角、大人で男らしく格好いい彼だったのに。
 イサオは服をすべて脱ぎ、オタエに抵抗される余地を作らないように素早く下着を脱がせた。
 いよいよ観念する時が来たのだと目を閉じる。が、足が高く上げられ、膝裏が彼の肩らしきものにかけられ、まさかとオタエの目が開く。
「ちょっ、やっ」
 尻を高く上げられ、イサオの顔を見上げれば、その近くに自分の恥ずかしい所があるではないか。オタエは手を伸ばして隠す。顔から火が噴きそうだ。
「こんなかっこダメですっ!恥ずかしすぎます!」
「そうですかァ?俺はもっとオタエさんのすべてを見たかったんですけど……」
と、オタエを支えていた両手の親指を秘裂の後ろの窪みにずらす。びくりとしたオタエは目を見合張った。そこに舌先が加わり、気のせいではなかったと実感する。
「あっ、いやっ、そんなところ、汚いですから、舐めちゃっダメっ」
「いやですか?でも、俺が舐めたかったところ、オタエさんが隠してるし……」
「だって、見られるのはずかしい……」
と、視線を逸らす。
「オタエさんの大事なところ、俺に見せてください」
 尻でも充分恥ずかしいが、初めてなのに濡れすぎていることを自覚しているのだ。でも、これ以上、後ろを刺激されたくはない。もういっぱいいっぱいだ。
 オタエは、覆っていたそこの手をおずおずと退けた。見られていると意識し、余計に濡れてしまうような気がしてならない。
「そんなに、見ないで……」
 弱々しい懇願に、イサオは苦笑する。
「すみません、つい。でも、すごく嬉しいです」
 イサオの言葉にオタエは彼を見た。が、やはり恥ずかしくて視線が泳ぐ。
「あなたが、俺のことをすごく欲しがってくれてるから、嬉しすぎて泣きそうです」
と、そこへ唇を寄せた。
「はあぁっ」
 揺れる腰を捕らえるように支え、透明の蜜をゆっくりと啜る。新たに蜜が湧いてくると舌で掻き出し、そこを食べるように舐めとる。あられもないオタエの高い声は止むことなく発せられる。ようやく腰が下ろされ、解放されたと思いきや、イサオが自分で舐めた指を一本、差し込まれてしまった。途中まで入る中指に探られ、水音が鳴る。
「はぁ、やぁ」
 目をつむって眉根を寄せ、いやいやをするオタエにイサオの中指の動きが止まる。
「痛いですか?」
 またいやいやをされ、イサオはオタエが言うのを待った。中に入ったままの中指は動かず、不思議に思ったオタエはおそるおそる目蓋を上げる。心配そうにこちらを見下ろすイサオに胸がきゅんとし、指が入れられているその奥まできゅんとした。先ほどまであやふやに体の芯が締まっていた感覚が何度もあったが、これはそういうことなのだと理解する。
「痛く、ないです……その……動かして、ください……」
 流石に奥まで触れてくれとは言えないと、頬を熱くする。
「わかりました」
と、粘膜を指の腹がゆっくりと撫でまわる。不意にオタエの眉根が寄り、そこをゆるゆると刺激する。
「や、んっ」
 内壁を撫でながら小さな突起を舌で擽られ、甘い声が上がる。
「あぁ、やめ、イサオさぁ、んっ、そこ、はぁあっ」
 イサオの中指を締めつけ、足を震わせる。突起への愛撫が止むと、薬指が足された。
「んんっ」
 こじ開けられるような感覚に歯を食いしばるが、また小さな突起を舌で優しく愛撫され、声が出る。
「ふぁっ、ん、あっ、やんっ」
 先ほど中指で刺激されていた所に薬指も加わり、鮮烈な快感に襲われる。
「いや、あぁ、んんっ、はぁ、やっ、んっ!」
 抵抗の声が混ざり、二本の指が止まる。突起を柔らかい唇が優しく愛撫する。時折、舌先で擽り、唾液で滑りをよくしては舌で弾く。
「はぁぅ、んっ、ぁん」
 甘い声がオタエの唇に戻ると、休めていた指が二本、オタエの感じる所をそっと撫で始めた。口での愛撫を交え、徐々に指の刺激を強くしていく。先ほど辛いと感じた手前まで感覚が持っていかれ、突如、指が引き抜かれた。
 不思議に思いつつ、息を切らしながらイサオを見ると、そこへ分身を押しつけていた。裏側に蜜を塗りつけようと腰を揺らしている。服を脱ぐ前に同じことをされていたのを思い出す。実際に入れられながら口づけられたら、自分はどうなってしまうのだろう。
「いいですか、入れますよ」
「はい……」
 不安はなかった。興味と期待が入り交じる。なのに、進入は途中で止まった。
「あの……?」
 オタエが窺うとイサオは穏やかに笑い、オタエの額の髪を梳いた。顔を寄せ、唇の先が触れ合いそうな距離で言う。
「オタエさん、あんま感じすぎないでくださいね」
「え?」
 どういうことだろう。普通は俺のことだけ考えてだとか、集中してだとか、痛みを紛らわせるようとするような言葉をかけてくれるものではないのだろうか。
「一気に魔力が移らないように我慢しますけど、あなたが最初から感じすぎていたら、俺がいくら我慢してても、魔力の多量摂取は避けられませんから」
と、軽く口づけて続ける。どきりとした。
「はぁ、まだ途中までしか入ってないのに、気持ちいいです」
 切なげな溜息をつくイサオに深く口づけられながらオタエは、彼が言っていたことを思い出していた。
――不自然に作為的なものを摂取あるいは、自然のものでも悪い摂りいれ方をすれば、力は不自然に増大する。減少もする。また、暴れ出しもする――。
 すべての魔族の長、魔王。その魔力は膨大だろう。混血風情が易々と受け止められるものではないのは考えるまでもない。
――魔力をちょっと拝借って、気軽なもんじゃないのはわかってんのか――。
 トシーニョの忠告が心に重くのしかかる。目を開いたまま戸惑っているオタエに気づき、イサオは唇を離す。
「怖いですか」
 オタエは呆然とイサオの茶の瞳を見つめる。
「すみません、おどかすようなこと言って。でも大丈夫ですよ。俺があなたにのめり込んで、あなたが感じすぎて俺から魔力を貪っても、気持ちの結びつきが強ければ強いほど、俺があなたの中の魔力を察知しやすくなるし、魔の者としての必要な魔力だけを残して余分な魔力は俺が回収できますから」
と、オタエの頬を撫でて微笑む。
「そんなこと、できるんですか……?」
 イサオは頷く。
「できますよ。初めて繋がる今日でも。体だけじゃなくて、心もひとつにするんです。気持ちいいのも、痛いのも、恥ずかしいのも、すべて俺にさらけ出してください。俺は、あなたのすべてを受け止める」
 真っ直ぐな眼差しに心を撫でられ、涙がぽろりとこぼれ落ちた。心が感じて切なくなる。
「はい」
と、涙交じりにイサオの首に手を巻きつけた。
「さっきから……奥が、熱いんです。イサオさんに奥まで触れて欲しくて、切ないの……」
「わかりました、じゃあもう根元まで入れますね」
 腰が押し進められ、ぎくりとする。止めようと口を開いたオタエだったが、声にならない悲鳴を上げながら体を硬くした。ぎゅうっとイサオにしがみつき、懸命に呼吸をする。
「オタエさん?」
「……初めてなのに、ん、そんな大きいの、一気に入れられたら、っく、痛いに決まってるじゃないですか、ひっく……」
 涙ながらに訴えられ、イサオの眉尻が下がった。
「すみません。けど、ゆっくり膜破るほうがもっと痛いらしいですから許してください、ね?」
と、言う声は弾んでいる。
「楽しそうですね」
 オタエの声は低く、機嫌が悪い。
「だって、俺がオタエさんの初めてもらったなんて嬉しすぎるじゃないですか」
 ちゅっと音を立てて頬に口づけられる。
「てか、オタエさん、やっと俺とセックスしてんのに、嬉しくないの?」
 能天気なものだ。そして悪気がないだけあって性質が悪い。というか、そもそも、自分より十も年上の大人の男性とは思えないはしゃぎっぷりだ。ましてや魔王様とも思い難い。
「まだ出会って六日しか経ってないのに、やっとじゃありません。早いくらいです」
 むすっとして目を伏せると鼻先をぺろりと舐められ、オタエは照れを誤魔化そうと頬を膨らませる。
「もうッ!」
と、厚い肩を叩く。
「てへ☆」
 てへっと笑う大人の男性なんて初めて見たとオタエは目を丸くした。自分の反応を面白がっていたイサオの茶の瞳が細くなる。穏やかな表情に胸がきゅっとなった。本当はわかっている。自分の初めての痛みを少しでも和らげようとしてくれているのだと。
 オタエはイサオの首を引き寄せ、抱き締める。心の底から湧き出てくる気持ちを素直に告げた。
「イサオさんのバカ……好き……大好き……」

 オタエ・シームラ、二十歳。ゴリラ血族の父、ゴリラ血族と人間の混血で後に人間となった母から生まれたオタエは、魔族の王からの寵愛を受け、真のゴリラ血族となりつつある。正式な魔王妃となるのはまだ先の話であるが、婚約者として魔王の城に住み、日々、妃修行に励んでいる。
「ご指導、ありがとうございました、ヤギュー先生」
 稽古用の剣を納めたオタエは剣術指南役のキューベエ・デ・ヤギューに一礼した。キューベエは町の警備隊総隊長の傍ら、城まで出張してもらい剣術の稽古をつけてもらっている。
「だから、先生はよしてくれよ、オタエちゃん」
 困り顔のキューベエにオタエはタオルを差し出す。
「教えてもらうんだから、キュウちゃんは私の先生でしょう?稽古の時は先生と呼ばせてもらいます、ヤギュー先生」
「う、うん……」
 差し出されたタオルを受け取るキューベエは照れくさそうに笑った。妙なぎこちなさがかわいらしい。オタエが微笑むと、ふたりがいる中庭に親衛隊のカーモ・ウ・イトーがやってきた。明るい色の短髪に眼鏡をかけた歴史の先生だ。古代から現代までの魔族と人間の歴史を学んでいる。
「シムーラさん、訓練場にいないと思ったらこんなところにいたんですか」
「あ、はい。天気が良かったから中庭で稽古をつけてもらっていたんです」
「あら、イトーさん?次は歴史じゃなくてお花ですよ」
と、やって来たのはミツバ・ヒジカタだ。亜麻色のショットカットの女性で親衛隊総隊長トシーニョ・ヒジカタと先日、結婚した。ソウ・オキータの姉で、王の身の回りの世話の仕方や教養の先生である。
「そうだったか……。ならば出直しましょう」
 カーモは眼鏡のブリッジを指で軽く押し上げると会釈して立ち去った。一見、爽やかな好青年風だが、その実、なかなかの食わせ者であったとソウから聞いた。以前、何かあったらしい。
「ミツバ殿、申し訳ない」
と、キューベエはミツバに頭を下げた。
「うちのオタキが腰をぎっくりさせてしまったばかりにあなたの授業が増えてしまった。新婚ホヤホヤのご婦人は何かとお忙しいだろうに、本当に申し訳ない」
「顔をお上げください、キューベエ様」
 ミツバは淑やかに微笑んだ。
「あの人、結婚しようがしまいが、仕事ばかりで私のことなんてほったらかしなんですよ。私としては似た境遇のオタエさんとお話しできる機会が沢山持てて、毎日がとても充実しているんです。だから、どうか気に病まれませんように」
 にこっと微笑む彼女は、自分やキューベエよりも年上だがとてもかわいらしい女性だ。いつも笑みを絶やさない優しい人だが、怒っている時でさえ微笑んでいるだけに、その怖さが倍増する実は恐ろしい人でもある。ドSと自称するソウが彼女に従順であるのが頷けるほどだ。
 薔薇の手入れについての授業だが、キューベエも一緒にどうだと誘うミツバに警備隊の仕事があると丁寧に断わり、キューベエは帰っていった。次の稽古日までの数日間は会えなくなるが、また会える時のことを思うと、寂しさより楽しみのほうが勝っている。
 妃修行に剣術は必要ではない。寧ろやめろとヤギュー家の女中であるオタキに注意された。何度教えてもひとりきりで作るオタエの料理が黒炭になるのにやきもきしたオタキの足がつるりと滑って腰を捻挫したのだ。気の毒ではあるが、彼女の気の短さもいかがなものか。
 びしばししごいてくるオタキにくらべてミツバの指導は優しい。褒めて伸ばすタイプだ。教えてもらう料理は美しく繊細だが、毎回、仕上がりが赤い。真っ赤なタバスコ一色だ。毎回、黒くしてしまう自分が人のことを言えたものではないが、若干、トシーニョが気の毒で不憫に思える。
「はっ」
 オタエは気合を入れて剣を振っていた。が、それをイサオにかわされ続け、剣を構えたまま息を切らせる。こちらは額に汗を掻いているのに、あちらは涼しい顔だ。そもそも、丸腰である。オタエは、ふうっと息を吐いて剣を納めた。
「前よりも切れがよくなってきてますね」
 訓練場の石造りの壁面に使用していた稽古用の剣を掛ける。
 こちらは本気で剣を向けているのに掠りもしていない。なのに、よくもそんなことが言えたものだ。溜息をついてイサオに振り返ると口を塞がれた。冷たい水が注がれ、飲みきれなかった水はオタエの口端から流れる。口移しで飲ませようとする量ではない。首元の白いスカーフと白いブラウスを濡らし、こげ茶のタイトパンツにまで滴った。反射的に手を上げるが、イサオに掴まれ、腰を引き寄せられる。
「んっ」
 オタエの眉間に皺が寄り、口内で弄ばれる舌が甘く蕩けだす。
 勝てなくて悔しいのに、虐げられて嬉しいだなんて。
「ふぅ、ん……はぁ」
 水で冷やされた口内が熱くなり、合わさった唾液の音がぴちゃぴちゃと鳴る。唇が離され、ゆっくりと彼の目が開くと、オタエはぎくりとしてその場にしゃがんだ。イサオから逃げようと低い姿勢から訓練場の出入り口へ駆けようとする。が、それより先にイサオの右腕がオタエの首元すれすれに突かれた。地面の固い土に右の拳が打たれている。
 こういう時だけ本気になるなんてずるい。いや、本当に本気なわけではないのはわかっている。ほんの少しゴリラ血族の能力を使っただけである。
 ばさりと布が広がる音がするが、そちらは見れない。見れば一瞬にして仕留められるだろう。布が動くのを視界の外で感じながら契機を窺う。次に動く時が、逃げられるか押し倒されるかの分かれ道だ。
「ひどいなァ、オタエさん。俺の顔見て逃げようとするなんて」
 右の手は地面を突いたまま呟くイサオに鼓動を速くさせられる。
「だ、だって、目が紅いじゃないですか……牙だってあるし……それに、角だって……」
「目が紅いのは、オタエさんが俺を仕留めようとする鋭い視線を見たからですよ。牙が出てきたのは、オタエさんが俺の舌をベロベロに舐めるからですし。角まで出てきたのは、オタエさんが逃げようとするからです」
「私の相手をしますよって言ってくださったのは、あなたのほうでしょう?というか、私の剣術稽古を快諾したのも、むしろ勧めたのだってあなたのほうだし!というか、角は、お相手してくださる前から出てましたッ!」
「剣術、ストレス発散になりません?」
「なりますけど、あなたがお相手だと逆にストレスたまります。おちょくられているだけに感じます!」
「そんなつもりないんですが……すみません。でもね、俺が剣握って万が一オタエさんに怪我でも負わせちゃったらいやだもん。稽古用でもいやだもん」
 オタエは疑いの眼差しを向ける。
「あら、私如きに剣を振ってくださるんですか?」
「いや、振りません」
 嫌味を込めて聞いたのに真顔で返された。
「てか、振れるわけないじゃないですか。俺がオタエさんに?ないない。んなことできませんって。ゆうべ、俺のすべてを愛してくれるって言ってくれたあなたにそんなことできるわけないじゃないですか」
 イサオは頬を赤く染め、満面の笑顔で言う。今のうちにとオタエはそろりと動いた。が、進む方向を変えた先に左の拳が撃ち込まれた。高速だ。容赦はない。びくりとしたオタエは、ゴリラのゆったりとした動きに誘導され、魔王のマントにころんと押し倒されてしまった。
「あんなに良さそうに、すごいって褒めてくれたのに、なんで逃げるんですか?」
 耳元で囁かれ、オタエは肩を竦ませる。
「今日こそは角ありでも出させてください」
と、耳を舌で嬲られる。
「あん、そんなの、いやですって、絶対ダメ……っ」
「なんで?」
 オオカミくせに、ゴリラのくせに、猫撫で声で聞いてくる。ますます恨めしい。
「なんでって、だから、すごいんですって。目が、紅い時のイサオさんの魔力、すごく熱くて、いっぱい入ってくるのに、いっぱい抜かれて、ぞくぞく、しちゃうんです」
 昨夜の感覚を体に思い起こし、オタエの肌が泡立つ。堪らなくなって自分自身を抱き締める。頬は上気し、膝はすり寄り、熱い溜息をつく。
「気持ちいいんだったらいいじゃないですか」
「そういうことじゃないんですって。角がなくても魔力の量がすごいのに、魔王の魔力全部なんて絶対ダメ、おかしくなっちゃう……」
 この人は自分のことを信用しすぎだ。繋がっている時に持っている魔力すべてを自分に預けるのだ。しかも、熱に浮かされて自分の名前と、快感による感想をうわ言のように囁き続ける。そして、こちらもつられて快感に酔いしれてしまう。どこまでも堕ちて戻ってこれないような危険で甘い誘惑。愛が深く、魔力が膨大なほど絶頂の快楽が凄まじい。血族や魔王の魔力を圧縮して彼の体内にとどまらせていても、非常に気持ちがいいのに、毎回、しかも一度に複数回そんなことをされたら堪ったものではない。
「おかしくなってください、俺の前でだけ」
と、口づけられ、首元のスカーフを解かれる。ブラウスのボタンを外すと、唇から顎、首、鎖骨へと彼の唇が下りて行く。胸元に口づけるとブラウスから微かに花の香りがした。
「薔薇ですか……?」
「はい。午後は、ミツバさんに薔薇の手入れの仕方を教えてもらって……」
「そうでしたか」
 イサオはブラウスに鼻を埋めた。鼻腔いっぱいに薔薇の香りを吸い込む。
「あの晩……、赤いずきんを被ったあなたに誘惑されて、俺は本能のままにあなたを貪りたかった……」
と、オタエの胸のピンク色の頂を口に含む。きつく吸って唇を離すと、ピンク色だった頂は赤く染まっていた。もう片方の頂も赤く染めてやる。
「月明りに照らされた美しいあなたの白い肌に歯を立てて俺の跡をつけたかった……」
 大きく口を開いて寄せた膨らみを口に含む。胸に軽く歯を立てて硬い突起を舌で擽る。胸を解放すると、歯を当てた箇所は跡になっておらず、代わりに口づけてきつく吸う。今度は唇を離しても元の綺麗な肌に戻らず、口づけの赤い跡が残った。
「オタエさん、わかりますか。俺がどんなにあなたに触れたかったか。どんなにしゃぶりつくして俺だけのものにしたかったか。ああ、このなめらかで俺の手に吸いついてくる綺麗な肌、堪らねェ……」
 胸の下から臍まで来て肌を這っていた舌が止まる。黒のロングブーツが脱がされ、こげ茶のタイトパンツと下着も脱がされる。マントの上で膝を割られ、彼の舌が再び臍へと降りた。波打つ下腹部を這い、足の付け根に回って両方の内腿を熱い舌が行ったり来たりする。オタエの上げる声に期待が混じると、突起として現れた小さな白いそれに口づけをひとつ落として口端を上げる。
「すごいですね。赤く充血して、いっぱい濡らして、粘膜が開いたり閉じたりしてる」
 言われてオタエは左腕で顔を覆った。わざと羞恥を煽られているが、悔しいとも思わず、ただただ恥ずかしさに身を縮こまらせたいだけだ。イサオはじっとそこを眺めている。
「や、そんなに、見ちゃ、いや……」
 恥ずかしすぎて泣きそうだ。辱しめを受けるなら、いっそのこと滅茶苦茶にされたい。
「じゃあ、吸いますね」
と、いやらしくひくつく襞を唇で塞ぐ。
「はぁんんんっ!」
 甘い声を上げながら身を捩る。浮いた腰は逃げられないようにと、白い太腿は浅黒い腕に巻き取られる。背を逸らせても腰は動かず、足も動かない。触れてほしいところまで響く愛撫はオタエの理性までを吸い取る。
「ああっ、イサオさぁ、んっ、いく、もういっちゃうぅ……!」
 イサオは、体をわなかかせるオタエに休みを与えることなく、敏感な突起を尖らせた唇で優しく挟む。
「っふあ、ぁん、はあぁ、あん」
 優しい刺激に粘膜をひくつかせ、艶めかしい声を発してしまう。固定されているのに腰は揺れようとし、イサオを誘うようにそこは開閉を繰り返す。
 もうひと押しすれば、入れてもらえるはずだ。オタエは甘く名前を呼ぶ。切なげに息をつき、呼吸を整える。待っていると入れられたのは二本の指だった。いい所を撫でられ、小さな突起を啄まれる。
「んんっ……!」
 また達しているのに内壁への愛撫は止まず、快感の高みに連れて行かれる。
「や、だめぇ、はぁあ、だめえぇぇ……!」
 強い快感に視界がちかちかとした後、ぼやけた。喘いで開きっぱなしになっている乾いた口内にイサオの熱くぬめった舌が入ってきた。突き出していた舌が愛撫され、ぼやけていた視界が鮮明になる。我に返ると同時に太く硬いものが体内に進入してくる。
「あぅ、イサオさん、いってるのに、入れちゃいやぁ」
 最奥はきゅっと締まっているに蜜がしどどにあふれ出ているのを意識する。膣はイサオの精を飲みたそうに蠢動し、根元まで吸い込む。
「すみません。もう、癖になってて。いってるオタエさんの中、すごくいいんです。はあぁ……」
と、眉根を寄せ、溜息をつく。オタエに覆いかぶさり、彼女の耳元で言う。
「ああ、すごい、です……。入れてるだけなのに、気持ちよすぎる……」
 イサオの熱い吐息がオタエの最奥を震わせ、オタエの意図なく膣は蠢く。
「んうぅ、や、奥、だめ、今、奥したら、だめ、です、はぁ」
「してませんよ。オタエさんがひくひくしてるから、俺のが、反応してびくびくしてるだけです。奥するって、これのことですか?」
と、イサオは腰に力を入れ、かすかに進入させた。オタエの最奥に届いていた先端が更に奥に入り込み、強い快感がオタエを襲う。体ががくがくと震え、声を発することなく嬌声を上げる。何度目かわからない絶頂がオタエの本能を剥き出しにする。
「深いの、らめっ、んあ、すごいよぉ、ふぅ、イサオさん、気持ちいぃ、もっと、深いのして、んっ」
 甘えた声でしがみつかれ、イサオは苦笑する。
「どっちですか、オタエさん」
「ほんとはだめだけど、イサオさんに気持ちいいの、してほしいの、すごいの、してほしいの」
 急に切なさが込み上がり、涙を滲ませる。するとイサオはとても嬉しそうににこにこしていた。
「やっぱ、オタエさん、かわいいな」
と、額に口づけを落とし、唇に口づける。ちゅっとかわいらし音を鳴らして唇を離し、満面の笑みを浮かべる。なのに、最奥は抉じ開けるように小突き続け、オタエの息があがる。上半身と下半身がまるで別物だ。
「やぁ、そんなのしたら、すぐにまた、あぁあんっ」
「んっ、オタエさんッ!もう出るッ!」
 中のイサオが急に波打ち、オタエは体を震わせた。最奥を貫かれたまま快感に酔う。放たれた精はやはり膨大な魔力を含んでおり、オタエの体の隅々まで魔力で満ち、すぐ魔力はイサオの分身に擦り取られる。オタエの頭のてっぺんから爪先までがざわめき、喪失感に全身を痙攣させる。繋がったまま体を横に回転させられ、片足をイサオに引き上げられた。深く繋がり直され、腰がびくんと震える。先ほどよりも深い。熱を持ったままの最奥を再び硬いもので小突かれ始め、涙をあふれさせる。
「やぁん、イサオさん、急に、いったらだめぇっ」
 甘い声で咎められ、イサオは恍惚とした表情で呟く。
「すみま、せん、っはぁ……、オタエさんの中、熱くてトロトロで、絡みつきがすごくて……、ひくひくが、くっ、すげぇ、よくて、ぁあ、またすぐいきそ……っん、ちゅ、んむ、じゅるっ」
 音を立てながら舌を吸われて、オタエは胸を熱くする。また自分もすぐに達しそうだ。
「ん、わたひも、んぅ、いさ、おさ、んちゅっ、ぁふうぅぅ……!」
 間が持つことなく再び絶頂を味わう。
 身も心もひとつになった時、強い生命力である魔力が互いの体中を行き来する。それは、一度味わえば忘れることができない魅惑的な快楽だ。魔力を持つ魔族、その中で最も強い魔力を持つイサオ。彼の深い愛と膨大な魔力に魅了されたオタエは心の中で微笑む。
 これだから魔王様との秘め事はやめられない♡
カボチャの魔法使い7
Text by mimiko.
2015/11/25

乙女ゲーム仕様を意識しておきながらラブラブグッドエンドなのにキメセクまがいなえっちをさせてしまって申し訳ございませんでした。
どうやっても近藤さんに勝てないお妙さんが、近藤さんに恋しちゃってめろめろーん♡になっているのがやりたかったこともあり、ファンタジーな設定を盛り込み、どうせやるんだしこの設定でギリギリなえっちやったんぜ!と張り切りすぎて際っきわの怪しいものができあがってしまいました。
楽しかったです。そして愛憎ルートだった場合を想像するとにやつきます。
愛憎コンディルートはコンディがドS陰湿ストーカーとしてどえらい病み方をします。トシーニョルートでもソウルートでもミツバさんが登場したり、キュウちゃんルートもコンディがしゃしゃりでてきて百合百合してながらもコンディと義務えっちとか。キュウちゃんが一番になってる義務なんでね、すんごい気まずいえっちになるという。あとコンディとキュウちゃんとシンパチーノとの姉弟エンドクリアしたらオビワンルート出現とか。全キャラクリアしたら逆ハーレム魔王女ルートも出現してオタエ最強!など夢は膨らみますが、コンディラブラブグッドエンドへまっしぐらするために盛りに盛った設定ばかりなので、すべての辻褄を合わせるのは至難の業すぎるし、そもそも私の知識も文章力も足らなさすぎるので、そんなイメージたったということで。ちなみにイトー先生は攻略対象外キャラで、トシーニョとソウのルートでこんなことあった回想登場するサブキャライメージでした。
1話から最終話まで7万1千弱という字数で自分の創作物としては最長記録となりました。盛った設定から一次創作色もパロディ色も濃いというか普段の銀魂創作とは違う毛色だったと思われますが、自分に足りないものをいっぱい発見したこともあってとりあえず完走できて良かったです。最後には近藤さんとお妙さんをいちゃいちゃさせられたし、お妙さんにらめぇって言わせられたし☆
少しでも何かの足しになれれば幸いです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。

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