「やだ、近藤さん、こんな時に、ふふっ」
 緊張のほぐれた妙の表情と声に近藤は微笑み、唇で胸のそれを挟んだ。
「あんっ」
 出てしまった声に、はっとして口を手で覆った。が、歯を軽く立てられ、再び声が上がる。そして、もう片方の胸が疼くのを実感する。
 感じるって、こういうことなのね。どうしよう、近藤さん、きっと上手。私、どうなっちゃうの……?
 捏ねるように揉まれた胸からぞわりとしたものが体に広がる。胸の先を舌や指で弄られて体の力がすっかり抜けると、近藤はようやく妙の襦袢を脱がせた。隠すものがなくなった肌に近藤の視線が刺さる。引け目である胸を両手で隠してはいるが、落ち着かない。
「きれいです」
と、妙の肩に右手で触れる。
「白くて、滑らかで、でも、吸いつくようにしっとりしてて、柔らかい……」
 肩から腕、腕から腹部へと撫でていく。
「すごく、美味そうです」
と、近藤は腹部に口づけを落とす。口づける度に、ちゅっと鳴る。くすぐったさで身を捩ると臍を舐められ、びくりとする。
「や、くすぐったい、ですっ」
「じゃあ、両手をどけてください」
「そんなっ、んっ、ふふっ」
「じゃないと、脇も舐めますよ」
 舌が脇を擽るのを想像して、また体を捩る。
「やだっ、ダメですっ」
「わかりました」
と、近藤は舌を離した。妙の腕を掴んで頭上へやった。まとめた妙の手首を直接掴まないように左手で枷をつくる。
「あ、やっ」
 小さなものであるがために、できることなら見られたくなかった。その胸を隠すものがなくなり、羞恥で顔を真っ赤にする。再び身を捩る妙の尖った胸の先に近藤の目が奪われた。
 うん、エロいです、お妙さん。恥ずかしいとか言いながら、ちゃんと反応してるんだもんな。うん、堪らねェ。けど、落ち着こうか勲。一旦落ち着こう。お妙さん、こういうことするの初めてだから、絶対ガッツいちゃダメだ。うん、大丈夫、俺は落ち着いてる。今すぐにでも足広げて突っ込みたいのをちゃんと我慢できてる。つか、今日はほんの小手調べだよ。うん、大丈夫、勲はやればできる子なんだから、ゴリラの生殺し状態でも全然平気なんだから。
 温かい手の平が胸の脇、腹部へと這う。腰から太腿へ下がると、腰へ戻り、腹部、腕、肩、首へと上がる。先ほどのように敏感に反応する箇所には一切触れない近藤の手に視線をやり、訊ねる。
「あの……?」
「お妙さん、本当は怖いでしょう」
「え……」
 どきりとした。無駄のない近藤の動きと、それに反応する自分。あっという間に事が終了して、近藤が言っていたように、自分の知りたかった答えを得ることなく、ただ経験を済ませただけになるのではないかという不安。それらは、すべて見透かされていた事実。
「男は、そりゃァやりたくてやりたくて仕方がねェ。けど、こういうことはね、心から欲しがられてのもんだと、俺は思ってます。お妙さんは今、俺のことを欲しいって心から思ってますか?」
 うんと頷けばいい。そうすれば、自分が知りたかったことを知れる。してもらえる。けれど、頷くことも首を横に振ることもできない。妙の心にはその気持ちが半々にある。
「近藤さんのことが知りたいです。でも、怖くないと言ったら嘘になります」
 妙の肌を撫でていた近藤の右手が止まり、妙はぎくりとした。離れようとした近藤の手に自分の両手を重ねる。
「けど、こんなところで終わりたくないです。お願い、近藤さん。私に、あなたのことを教えてください」
 切なげに眉を寄せる妙に、近藤は堪らなくなって口づけた。強く熱い口づけに、妙の体から力が抜ける。擽られ、吸われて離された妙の唇と近藤の唇に透明の糸が引いた。
 私の知りたい気持ちに近藤さんが応えてくれてる。嬉しい……。
 潤んだ瞳に見つめられ、近藤の目が細くなる。
 まずいな。突っ込みてェ。好きって言われたわけじゃねェのに、云われてるみてェ。欲しいって言われたわけでもないのに、云われてるみてェだ。お妙さん、やっぱ俺のこと好きなの?
 再び、口づけながら小振りの両胸をやんわりと掴む。温かい手の平に捏ねられ、くぐもった声が近藤の舌に伝う。びくびくと揺れる妙の肩に近藤の右手が触れ、指で肩の輪郭をなぞりながら首へと上がる。愛おしそうにうなじ触れてくる近藤の太い指に、妙の首筋がぞくりとした。
 こんな、優しく触ってくるなんて……、あっ、胸弄っちゃだめっ!
「はぁあんっ」
 胸の先を転がされ、こぼれてしまった甘い声に頬を熱くする。
「ん、だめ、近藤さんっ」
「そうですか?もう片方も勃ってますよ」
 指摘され、赤面した顔を逸らす。
 そんなこと、わざわざ言わなくてもいいじゃない。恥ずかしいのに、男の人に、近藤さんに、こんなふうにされて、すごく恥ずかしいのに。
 横を向いたままの妙に面白くなくなり、近藤は触れていなかった方の胸の先を指先で軽く弾いた。
「んんっ」
 自分を見上げた妙に笑顔を向ける。
「んっ、遊ばないでくださいっ」
 眉が釣り上った妙に、近藤は顔を綻ばせた。
「すみません、お妙さんがかわいくて。確かに、俺ァ、あなたの反応が面白くてからかっていたのかもしれない」
と、両方の胸の先を弄ぶ。揺れる妙の体を愉しそうに眺めて口端を上げる。
「でも、あなたの後をつけまわして良かったと思ってる。いろんな顔のお妙さんを見れましたから」
 やっとここまでこの人を引きずり降ろせた。どんなに蹴散らそうが何度も私の元へやってきては適当に受け流されて、それまでと同じように繰り返してずるずるとやってきた。私がこうやって心も裸になるまで本音をこぼさなかったのは何故?こちらの手の内を見せない限りはそちらも見せられない?それなのに、どうして私のことをずっと好きなの?
「近藤さん、私のどこが、んっ、好きなんですか、あっ」
 聞かれて妙の乳房から視線を上げた。
「全部です。お妙さんの髪も、目も、肌も、乳首も、臍も……」
と、妙の膝を割った。下着の腰ひもの片側を解き、妙のそこへ顔を寄せた。呆気なく大事なところを晒されて妙の顔は火が出るかと思われるほどの熱を上げる。鼻を寄せた近藤は、たちこめる雌の匂いに、猛っているものを服の下で揺らす。いやらしく濡れ光る襞の上の可愛らしい芽に口づけ、にこりと笑う。
「お妙さんの恥ずかしいここも、全部好きです」
 涙が浮かべた瞳が恨めしそうに近藤を見下ろす。
「怒らないでくださいよ。どこが好きかって聞かれたから、正直に答えたんです。あと、ここも」
と、開いた足の付け根に口づける。びくりとした妙の腰が浮いた。
 かわいいな。豆を舐められるの期待してるな、お妙さん。
 近藤は内腿、膝、ふくらはぎへと口づけを落としていき、足袋を脱がせる。片足を抱えてくるぶし、足の甲へと口づけ、足の指に口づけた。唇は指から離れたが、舌は指の間を丁寧に這う。
「やだ、近藤さん、んっ」
と、妙はもう一方の膝を震えさせた。
「どうしました?いつも俺の顔、思いっきり踏んでるじゃないですか。これくらいで恥ずかしがってるんですか?」
 近藤は親指を口に含み、吸っては舌で嬲った。水音を鳴らしながらしゃぶられ、羞恥にまみれた妙の心が折れる。
 この人、私の凶暴性に屈したように見せかけておいて、いつかこうやって反撃するために甘んじて受け入れてただけだったの?ああ、なんて人なの、本当に最悪。
 口元を手で覆って声を出すのを我慢する妙の腰に、近藤の片手が伸びた。下着のひもが解かれ、そこが完全に露わになる。冷やっとしたそこに妙の手が伸びたが遅かった。妙の秘裂に太い中指があてがわれている。
「やっ」
「やじゃないでしょう、お妙さん。ああ、足の指をしゃぶられてさっきよりも濡れてることに気づかれたくなかったとかですか?」
 意地悪く指摘する近藤が恨めしい。柔らかい襞を指で圧迫され、ぷちゅっと小さく音が鳴る。
「あ、いやっ」
 恥ずかしくて堪らないらしい妙は顔を両手で覆った。近藤は愉しそうにもう片方の足袋を脱がせ、先程と同じように足の指を舐める。指を順番に舐められ、再びそこへ戻った中指に優しく擦られ、妙の腰が跳ねた。
「ん、あっ、やぁ、近藤さん、やめっ」
 やめてとか言いながらもさっきより濡れてるし。説得力ないし。
 内心笑みをこぼしながら近藤は妙の足の指から唇を離した。
「お妙さんの汗、美味かったですよ」
「んっ、や、近藤さんの、変態ぃ」
 かわいい声で罵られ、秘裂を撫でる指を足す。
「男はみんな変態ですよ」
「あぁっ、ふっ」
 眉を寄せた切なげな表情に提案する。
「辛そうですね、指減らしましょうか」
 足された人差し指が浮き、中指だけが襞を撫でると妙の膝が揺れた。
「んんっ」
 物欲しそうな視線を受け、近藤は笑った。
「指、減らしたのまずかったですか?腰が浮いてますよ」
 睨まれ、笑みをこぼす。
「指が欲しいですか?それともお妙さんが好きなところを舐めましょうか?」
「え……好きなところって……?」
 近藤の中指は秘裂から離れ、今度は人差し指の先が優しく襞をなぞる。
「さっき期待しましたよね?」
「え?」
 近藤は背を屈めた。足の付け根に口づけ、そのまま舌を這わせて中心へと頭をやる。
「あっ、えっ、こ、近藤さんっ」
 固く閉じてはいるものの蜜であふれかえっている。下から上へと舐めると嬌声が上がった。
「はぁっ、ダメっ、そんなところ、あんっ」
「ん、はい、わかりました。じゃあ、きれいに舐めとりますね」
 こぼれてくる蜜を吸うと上がる甘い声が堪らない。近藤は舌を浅く差し込み、熱い粘膜から蜜を味わった。
 ああ、熱い。ここに入れてェなオイ。けど、今日は無理だろうな。てか、そもそも俺、お妙さんになんてことしてんだよ。あのお妙さんのまんこに舌突っ込んだりして、ってやばい、小童でもねェのにこれだけでいきそう。けど、もっとお妙さんの深いところ突きてーなァ。
「はぁ、お妙さん」
 じゅっと音を立てながら吸われて腰がびくりと揺れた。強い快感に背が反る。声にならない嬌声に近藤は我に返って唇を離す。
「す、すみません、お妙さん。強くしちまって」
「んっ、だいじょうぶ、です……」
 大丈夫。だって、きっとそんなに強くない。近藤さん、きっと加減してくれてる。
 まだ心配そうにこちらを窺う近藤を見つめながら呼吸を整える。
 私に触れる手も、舌も、唇も、全部が優しい。いつも私の様子を窺って、受け止めて、こちらの出方でどうとでも転ぼうとする。それは、すべて私のことを大切に思っていてくれてるから。一番ではなくても、とても大切に思っていてくれてる。ああ、この人の愛情はとても深い。
 込みあがる切なさが目尻から畳へとこぼれ落ちた。
「もっと、あなたのことを教えてください」
 何かがわかったらしい口振りに近藤はどきりとする。
 え。お妙さんわかったの?何を?俺、お妙さんに勲突入させてェェェ!としか思ってなかったんだけど、それってやばくね?改めて振られフラグ?何ソレこんなにいい感じなのに?!
 動きを止めた己の頭に妙の視線がチクチクと刺さるのを感じた。
 いやいやいや待てまァ待て勲。何かをわかったらしいお妙さんはそれでも俺のことを教えてくれって言ったんだ。この流れでそうくるってことはつまり……。
 待っている妙を見やり、何度も夢見た妙の大事なところを見やる。
 わからん。皆目見当つかん。よし、腹をくくれ勲。今後、入れられるような機会が巡ってこなくとも、今日いかせておけば下半身事情的には当分困らん。とりあえずお妙さんをいかせてからだ。それから潔く振られてやろう、うん。すんげェ嫌だけど!聞きたくねェけど!
 近藤は自分の中指を咥えて唾液で濡らすと、その指を妙のそこへ差し込んだ。
「んんっ」
「力、抜いてください」
 妙の中の指はそのままに隣りへ体を横たえる。
「お妙さん、舌、絡めましょう。出してください」
 従順に舌を覗かせる妙にときめく。
 ああ、かわいいなァお妙さん。すっげェかわいい。マジで夢みたいだ。
 優しく嬲る近藤の舌先の感触に妙の肩が揺れる。だが、指が進む感触に妙の舌が強張った。
「大丈夫ですよ、まだ爪くらいしか入ってません。今日は第一関節くらいいってみましょうか」
 近藤の気遣いを嬉しく感じた妙は素直に頷く。
「んっ、お妙、さん、ちゅっ」
 切なげな声で名を呼ばれ、妙の腰が震えた。
「はぁ、あっ、んんっ」
 応えるように舌を絡ませてくる妙に愛おしさを感じ、近藤は舌を離した。
「お妙さん、無駄に動いたらダメですよ、第二関節まで入っちゃったし」
「だって……」
 妙は恥ずかしそうに視線を逸らして続ける。
「……近藤さんが優しいから……」
 尻つぼみになる声がまた愛おしい。
 はは、ホントかわいいなァコンチクショー!
「じゃあ、いきましょうか」
「え、いくって?」
「気持ちいいところにいくってことですよ、我慢しないでいってくださいね」
と、近藤の頭が再びそこへ埋まった。襞を行き来する唇と舌に妙の甘い声が止まない。舌先は小さな突起へ上がった。そっと剥き出され、妙は近藤の頭を押し出そうと手を伸ばす。
「ダメ、近藤さんっ」
 力のない抵抗を額に受ながら近藤は両手を乳房へやった。柔らかい小さな膨らみを捏ね、胸の先を指で転がす。急激に全身を這う快感が堪らない。
「あ、や、はあっ、んぁっ」
 敏感な突起を近藤の舌が優しく、しかし執拗に嬲られ、体も心もざわつく。
――なァ、あのゴリラと互角に渡り合えると思ってんのか?――
 脳裏によぎった銀時の質問に改めて答える。
 無理よ、そんなの。本当はわかってた。十も年上のこの人と対等に渡り合えるなんて最初から思ってなかった。馬鹿なくせに警察の管理職なんかやってる大人の男性に、ただの小娘が敵うわけないじゃない。なのに、この人、今、私のこんなところを……。
 妙は近藤に視線をやった。淫らな行為を目の当たりにし、ぞくりとする。不意に視線が合うと入口を舌で撫でられた。
「あんっ」
 一際甘い声がこぼれ、下腹部が上下する。硬くなった胸の先を指に揉まれ、再び小さな突起を吸われると妙の背が弓なりになった。
「あっ、やぁ、ふぁああっ……!」
 近藤に触れられているところから快感が広がり、倦怠感が妙の全身を襲う。近藤は妙のそこの蜜を舐めとり、襦袢と着物を妙に掛けると添い寝する。妙の額に口づけ、優しく頭を撫でる。
「……しないんですか?」
「はい、しません」
 迷いのない声に妙は我が耳を疑った。
 あの万年発情ゴリラがここまでしておきながら、最後まではしない?
――あなた、それでもお侍さんなんですか?あ、そういえば泣く子も黙る真選組もその局長でしたっけ?小娘ひとり満足に抱けないだなんて、それでもタマついてるんですか?ああ、それともご自分の得物に自信がないんですか?――
って、私、近藤さんを煽ったわよね?
「あの、私、それでもタマついてるのかって言いましたよね?」
「ああ、言いましたね。覚えてますよ」
「だったら」
「次にしませんか」
「え?」
「お妙さんの初めての男になれるのは嬉しいんですけど、いきなり突っ込んでも痛いだけですから。てかぶっちゃけ初体験をさっさと俺で済ませて月9のイケメン俳優張りの男のところへ行かれると流石にへこむっていうか」
「ちょっと、近藤さん、私、そんなに尻軽じゃないですよ」
 怒りを露わにする妙に近藤は確認する。
「ホントですか?じゃあ、このあと俺に雁が首を仕込まれてマスターして、俺より権力持ってて俺より稼げるイケメンにナンパされたらどうします?」
「えっと、それは……」
「ほーら、迷った!お妙さん、あなたって人はね、そういう女なんですよ」
「なっ、それ、どういうことですか!私のこと好きなんですよね!?本人に向かってそんなこと普通言います!?
「俺ァお妙さんのことならよく知ってるし、わかってるし。それに俺、プロポーズ断られて片思いこじらせてストーカーしてるし、普通じゃないし」
 いくら近藤の本音を聞きたかったとは言え、これではあんまりではないか。妙は近藤に背を向けた。
「だったらなんでそんな尻軽女のこと好きなのよ」
 いじけた声で吐き捨てる妙に近藤は笑みをこぼした。背を向けたままの妙を抱き締める。
「わかりません。けど、俺はお妙さんに心底惚れてる。あなたが好きだ。あなたのことが好きで好きで堪らねェ」
 低い声で、しかも耳元で愛を告げられ、妙の歯が浮いた。
――ゴリラがストーカーを続ける限りは私のほうが優勢だと思いますけど――
 なんて言ったの誰よ。こんなの深いどころか底なしの泥沼じゃない。
 一歩踏み出したことを後悔する妙の背後で近藤はにやりと笑った。その眼は鈍く光っている。
 この娘やっとかかりやがったな!ごめんね、お妙さん!かわいいお妙さん見たら振られる腹なんざどっか遠くに行っちゃった!俺、陰険で陰湿な狩人なんだ!フハハハッこうなったらこちらに分がある!出し惜しみしで外堀埋めて必ずやお妙本丸を落としてやるぞ!ブハハハハッ!
切なさと深さと
Text by mimiko.
2014/02/13

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