今日も朝から楽しくストーキング。
偶然
午前7時30分――。
「おい、あんた落としたぞ」
駅の改札前でパスケースを失くしてしまったと、周囲を見回していた私は声をかけられ、振り返る。
すらりと背が高く、どちらかといえば痩せている方。
だけど、ガリガリという訳でもなく、学生服の下の肢体は、きっとバランスのとれた肉付きなのだろう。
学生服のボタンを一つも留めていない、この制服の着崩し方……。
私はパスケースを差し出す彼の手元から視線を上げていく。
すっと通った鼻筋。
キリッとした眉毛。
澄んだ瞳。
長い睫毛。
桜色の唇。
頬にかかる柔らかそうな髪。
彼だ――。
「早くしろよ、後がつかえてるんだぞ」
改札を抜けようとする列に並ぶサラリーマンの声がすると、彼は私にパスケースを持たせ、改札を抜けていった。
先週、あなたを見かけてから、あなたのことが頭から離れなかった。
まさか同じ駅だったなんて思いもしなかったから、こうして会えて嬉しかった。
だけど、あなたはきっと次の日には私のことを忘れてる。
私は忘れない。
忘れるはずなんてない。
いつだってあなたのことばかり考えてる。
あの柔らかそうな髪、桜色の唇……。
――触れてみたい――
決めたわ。
彼の視界に入る。
私は、あなたのことをもっと知って、あなたに近づいていくの。
「おい、あんた落としたぞ」
駅の改札前でパスケースを失くしてしまったと、周囲を見回していた私は声をかけられ、振り返る。
すらりと背が高く、どちらかといえば痩せている方。
だけど、ガリガリという訳でもなく、学生服の下の肢体は、きっとバランスのとれた肉付きなのだろう。
学生服のボタンを一つも留めていない、この制服の着崩し方……。
私はパスケースを差し出す彼の手元から視線を上げていく。
すっと通った鼻筋。
キリッとした眉毛。
澄んだ瞳。
長い睫毛。
桜色の唇。
頬にかかる柔らかそうな髪。
彼だ――。
「早くしろよ、後がつかえてるんだぞ」
改札を抜けようとする列に並ぶサラリーマンの声がすると、彼は私にパスケースを持たせ、改札を抜けていった。
先週、あなたを見かけてから、あなたのことが頭から離れなかった。
まさか同じ駅だったなんて思いもしなかったから、こうして会えて嬉しかった。
だけど、あなたはきっと次の日には私のことを忘れてる。
私は忘れない。
忘れるはずなんてない。
いつだってあなたのことばかり考えてる。
あの柔らかそうな髪、桜色の唇……。
――触れてみたい――
決めたわ。
彼の視界に入る。
私は、あなたのことをもっと知って、あなたに近づいていくの。
偶然
Text by mimiko.
2007/06/29