「……まったく興味がないと言うほど、わたしは無垢じゃないです。ごめんなさい……」
「なんで謝るッスか。オレはちょっと安心した」
先程からずっとベッドの傍で両膝をついていたティーダは、その体を起こし、毛布を捲るとベッドへと上がった。ユウナの膝を跨ぎ、ユウナの二の腕の下へ腕を滑らせて肘を突く。
ティーダがこれほど接近してきたのは初めてのことであり、ユウナは顔を熱くする。この状況から、いよいよ関係を深める行為へと及ぶのだろうと覚悟を決める。とはいえ、緊張して体に力が入る。このままでは緊張のあまり思考が停止してしまいそうだ。この緊張をほぐすために何か話さなければと、ユウナは勢いをつけるように息を吸って訊ねた。
「あ、安心って?」
「ユウナって真面目だし、純情そうだし、エッチの仕方知らないんじゃないかなって。だから、キスより先になかなか行けないなーって思ってた」
明るく弾ませた語気に、ティーダなりの気遣いを感じたユウナは、体の力を少し緩める。
「買いかぶりっす。そういうキミは知ってたの?」
「何を?」
にやにやと口端を上げるティーダにユウナの頬がぷくりと膨らむ。
「意地悪……」
「ごめんごめん。エッチの仕方な。知ってたよ。オレのザナルカンドにもエロ本とかエロスフィアとかあったし。エイブスのチームメイトで貸し借りしてた」
さらりと暴露され、ユウナの目が丸くなる。
「軽蔑する?」
「う、ううん、全然っ」
「ほんとに?」
「うん、ほんとに」
「なら、よかった。単純に見てみたかったってのもあるけど、男の生理現象でもあるからさ。そういうのをネタにして定期的に出しとかないと、悶々とするっていうか。ブリッツの練習のときとか試合のときとか、焦って冷静な判断できなかったりするし。つっても、焦りとかイライラとかの原因の全部が溜ってるってだけじゃないけどな」
ユウナの視線に我に返ったティーダはユウナの目を見る。
「やっぱ軽蔑してる?」
「ううん。そうじゃなくて……。ちゃんとわかってたつもりだったけど、キミって男の人なんだなって改めて思って……」
ティーダは膝立ちのまま体を起こし、服を脱ぐ。ズボンをそのままに、再びユウナを見る。
「ユウナと違っておっぱいもないしな」
と、小首を傾げて笑う。
「なあ、ユウナ。胸のところのエイブスのマーク、嬉しいんだけどさ、やめない?」
「どうして?」
「ユウナは、堂々としてたら意外に見られてないみたいだし大丈夫とか言ってたけど、男ってさ、けっこう見てるよ」
胸元に視線を感じ、ユウナの体が火照りだす。
「あ、そっか……。だから、えっと、その、恥ずかしいってことなのかな」
「ふーん」
ユウナの唇からティーダの親指が離れると、今度は人差し指と中指が唇に浅く差し込まれた。
驚くユウナの表情とは裏腹に、ティーダはにこりと笑う。
「あんなにエッチなキスするようなユウナでも、恥ずかしいことってあるんだな」
唇が重なるだけの軽いものから始まる口づけは、毎回いつの間にか密度を上げている。最後は必ず、ユウナの呼吸を乱し、体の中心を熱くするくらいにはティーダの舌によって感度を上げられている。
その気にはならないようにと意識していても唇を重ねれば、毎度、体は疼く。そんないやらしい口づけをしているのはティーダのほうであって、こちらがいやらしいことをしているわけではない。なのに、エッチと言われては黙ってはいられない。これはひとこといってやらねば。
キスより先はしたことないのに、キスだけでわたしの体がおかしくなるなんて、キミのせいっす!
「んっ、ふっ、んぁっ」
ティーダの指先がユウナの舌を撫で回し、抗議は言葉にならない。自分のくぐもった声が頭に響き、呼吸もままならないユウナは陵辱されているように錯覚する。
こんなの、いや……。
「ユウナ、オレの指、舐めて」
眉を下げて熱のこもったティーダの溜息にユウナは、瞬間に感じた不快感は気のせいだったと思い直す。言われるまま、ティーダの二本の指に舌を這わせた。人差し指と中指の間を丁寧に往復し、ティーダの右手を両手で掴み、二本の指を口に含む。指の間、指の関節、指先を咥えながらも舌先で愛撫していると、ティーダの頬が赤らんでいた。呼吸も平常のものより若干乱れている。
「ユウナ、上手ッスね……。どこで覚えたの?」
訊かれて、ティーダの指を口内から引き抜く。
「覚えたわけじゃないよ。これは、昨日、ジャッシュさんとボッツさんが寺院の裏でコソコソしてたのが気になって、誰もいなくなってからなんだったのかなって見に行ったら、その、エッチな映像スフィアがあって、それで……」
「最後まで観たの?」
「最初はね、ほんっとびっくりしたんだよ。こういうのは昼間に観るものじゃないし、ダメだって思ったんだけど、その、気になって、えっと……」
はっきりとは言わないが、つまりは自分の指摘通りにその映像スフィアを最後まで観たのだろう。ティーダは、くすりと笑った。
「大召喚士様も、そういうの、興味あるんスね」
「……まったく興味がないと言うほど、わたしは無垢じゃないです。ごめんなさい……」
「なんで謝るッスか。オレはちょっと安心した」
先程からずっとベッドの傍で両膝をついていたティーダは、その体を起こし、毛布を捲るとベッドへと上がった。ユウナの膝を跨ぎ、ユウナの二の腕の下へ腕を滑らせて肘を突く。
ティーダがこれほど接近してきたのは初めてのことであり、ユウナは顔を熱くする。この状況から、いよいよ関係を深める行為へと及ぶのだろうと覚悟を決める。とはいえ、緊張して体に力が入る。このままでは緊張のあまり思考が停止してしまいそうだ。この緊張をほぐすために何か話さなければと、ユウナは勢いをつけるように息を吸って訊ねた。
「あ、安心って?」
「ユウナって真面目だし、純情そうだし、エッチの仕方知らないんじゃないかなって。だから、キスより先になかなか行けないなーって思ってた」
明るく弾ませた語気に、ティーダなりの気遣いを感じたユウナは、体の力を少し緩める。
「買いかぶりっす。そういうキミは知ってたの?」
「何を?」
にやにやと口端を上げるティーダにユウナの頬がぷくりと膨らむ。
「意地悪……」
「ごめんごめん。エッチの仕方な。知ってたよ。オレのザナルカンドにもエロ本とかエロスフィアとかあったし。エイブスのチームメイトで貸し借りしてた」
さらりと暴露され、ユウナの目が丸くなる。
「軽蔑する?」
「う、ううん、全然っ」
「ほんとに?」
「うん、ほんとに」
「なら、よかった。単純に見てみたかったってのもあるけど、男の生理現象でもあるからさ。そういうのをネタにして定期的に出しとかないと、悶々とするっていうか。ブリッツの練習のときとか試合のときとか、焦って冷静な判断できなかったりするし。つっても、焦りとかイライラとかの原因の全部が溜ってるってだけじゃないけどな」
ユウナの視線に我に返ったティーダはユウナの目を見る。
「やっぱ軽蔑してる?」
「ううん。そうじゃなくて……。ちゃんとわかってたつもりだったけど、キミって男の人なんだなって改めて思って……」
ティーダは膝立ちのまま体を起こし、服を脱ぐ。ズボンをそのままに、再びユウナを見る。
「ユウナと違っておっぱいもないしな」
と、小首を傾げて笑う。
「なあ、ユウナ。胸のところのエイブスのマーク、嬉しいんだけどさ、やめない?」
「どうして?」
「ユウナは、堂々としてたら意外に見られてないみたいだし大丈夫とか言ってたけど、男ってさ、けっこう見てるよ」
胸元に視線を感じ、ユウナの体が火照りだす。
「女の子本人に気づかれないように、ちら見するのって朝飯前でさ。胸が揺れるのとかも、何食わぬ顔で見てたりするんだよ。いくらドレスフィアにこもってる幻光虫がすぐに自動修復するからってさ、実際ずっと水に濡れっぱなしだったら、見えてただろ?」
じっと胸を見るティーダの視線を遮ろうと、ユウナは自分の両手で胸を覆う。
「こないだの、あれさ、オレやばかったよ。何も着てないのよりやらしく見えてやばかった」
ティーダはユウナの両手を掴んで頭上へ押さえつけた。
「で、でも、ピンク色の裏地があるから、見えてないってリュックとパインも言ってたよ」
「透けてなくても形がわかるくらい張りついてたらアウトッス。色なんて見えなくてもいくらでも想像できるから」
「あの、でも、形って行ってもリュックだって胸の形わかるくらいには露出してたよ?」
「ああ、まあ露出で言うとリュックのほうがあるけど、あれって、水着みたいな素材でできてるやつだよな」
「あ、うん」
「なら、やっぱユウナのほうがダメ。水着は透けなかったり張りつかないようにできてるけど、ユウナのはフツーの服だろ?濡れて張りついたら、乳首がどこにあるかわかるんだよ」
「えっ……!」
言われてユウナの鼓動は跳ねる。すぐに胸を隠したくなったが、ティーダに両手を掴まれたままで隠せない。
「一度そういうの見ちゃうと、ずっと記憶してるんだ。あわよくば何かのアクシデントで触れたりしないかな~て、男ならだいたい考えてる。だから、水に入るなら絶対水着を着ること。わかった?」
「は、はい……」
ほんとなのかな。ティーダが言うことが本当のことなら、これからはちゃんと気をつけないと。
「よろしい。じゃあ、当ててみよっか」
「へ……?」
すっかり気の抜けていたユウナの左胸の先をティーダが口に含む。
「あっ、ちょっと待って」
「やっぱ当たり?」
と、ユウナの手を放し、右胸の先を三本の指で摘まむ。優しく揉み解すような動きに、ユウナは体を揺らす。
そんな、いきなりこんな触り方するなんて。しかも、服着たままなのに。
襲われる羞恥にユウナは再び身を硬くした。不意に内腿をティーダの熱い手の平が這い上がり、更に身を硬くする。足の付け根まで上がり、このままではデニムのショートパンツに指が差し込まれてしまうと、目をぎゅっと瞑った。が、その手はそのまま腰へと上がり、ティーダが男の視点で問題を指摘したトップスを留めている紐を外そうと、腰の裏に両手が差し込まれた。
「あれ?これ、どうやって外すの?つうか、ゴム状?」
「あ、うん。脱ぐときは全部上から……て、あの、やっぱり、その……」
「ん?なに?」
ティーダはユウナの背を起こし、腰の紐を引き上げる。
「するの?」
「えっ、しないの?」
すっかり先へ進もうとしていたティーダの手が瞬間止まったが、にこりと微笑み、動き出す。
「まったく興味がないというわけじゃないっていうことはさ、ほんとはすごく興味があるってことだろ?」
図星を指されてユウナの顔が真っ赤になる。
「オレだけが興味あるんじゃなくて嬉しいよ」
弾む声の主に服を脱がされ、ユウナは両腕で胸を覆う。
「キミは、その……慣れてるね……」
ユウナの言葉にティーダは目を丸くした。恥ずかしそうに視線を落とすユウナの肩が微かに震えており、緊張しているのは己だけではないと一息つく。
「ごめん。全然、慣れてない。こういうエロいことするのってユウナが初めてだから、実はすごく緊張してる」
と、ティーダはユウナの右手を掴み、自分の左胸へとその手の平を当てさせた。
「な?すごく速いだろ?」
速く打つにもほどがある鼓動に、ユウナは思わず笑みをこぼした。
「ほんとだね」
小首を傾げながら、ひとりでに目頭が熱くなるのを感じ、胸を覆っていたうちの片方の手で涙を拭う。
「ごめん。わたしも、すごく緊張してて、キミもわたしと同じなんだって思ったら、気が弛んじゃって……」
こんな時に泣いちゃうなんてダメ。相手はティーダだし、怖いことなんてひとつもないのに。
目をきゅっと閉じて涙を止めようとするユウナの瞼に、ティーダの唇がそっと触れた。
「怖い?」
優しく落ち着いた声にユウナは頭を振る。
「キミだから……ティーダだから、大丈夫」
ユウナはティーダの右手を両手で掴み、それを自分の左胸へ触れさせた。まるで、生死を賭けた戦闘前の時のように脈打つ鼓動によって気が押し潰れされそうだ。だが、そのうるさいほどの心音へ立ち向かうように口を開く。
「わたしに触って。キミに触って欲しいの。わたしの全部をあげたいの。だから、消えたりしないで。消えるなら、死んでしまうなら、何十年も先にわたしと一緒に異界へ行こう?」
願いのようなユウナの言葉は、ティーダの頬に涙を伝わせる。流れ落ちた涙はユウナの胸に触れる右腕に落ちた。胸が熱くなり、切なさがこみ上げる。ティーダは、涙をあふれさせながら笑って頷いた。
「もちろん、そのつもりッス。けど、ユウナ、コワイ。それ、脅迫みたいッス。ははは、だよな、ユウナの一番大事なもの、もらうだけもらって逃げるなんて、卑怯だもんな」
「なんで謝るッスか。オレはちょっと安心した」
先程からずっとベッドの傍で両膝をついていたティーダは、その体を起こし、毛布を捲るとベッドへと上がった。ユウナの膝を跨ぎ、ユウナの二の腕の下へ腕を滑らせて肘を突く。
ティーダがこれほど接近してきたのは初めてのことであり、ユウナは顔を熱くする。この状況から、いよいよ関係を深める行為へと及ぶのだろうと覚悟を決める。とはいえ、緊張して体に力が入る。このままでは緊張のあまり思考が停止してしまいそうだ。この緊張をほぐすために何か話さなければと、ユウナは勢いをつけるように息を吸って訊ねた。
「あ、安心って?」
「ユウナって真面目だし、純情そうだし、エッチの仕方知らないんじゃないかなって。だから、キスより先になかなか行けないなーって思ってた」
明るく弾ませた語気に、ティーダなりの気遣いを感じたユウナは、体の力を少し緩める。
「買いかぶりっす。そういうキミは知ってたの?」
「何を?」
にやにやと口端を上げるティーダにユウナの頬がぷくりと膨らむ。
「意地悪……」
「ごめんごめん。エッチの仕方な。知ってたよ。オレのザナルカンドにもエロ本とかエロスフィアとかあったし。エイブスのチームメイトで貸し借りしてた」
さらりと暴露され、ユウナの目が丸くなる。
「軽蔑する?」
「う、ううん、全然っ」
「ほんとに?」
「うん、ほんとに」
「なら、よかった。単純に見てみたかったってのもあるけど、男の生理現象でもあるからさ。そういうのをネタにして定期的に出しとかないと、悶々とするっていうか。ブリッツの練習のときとか試合のときとか、焦って冷静な判断できなかったりするし。つっても、焦りとかイライラとかの原因の全部が溜ってるってだけじゃないけどな」
ユウナの視線に我に返ったティーダはユウナの目を見る。
「やっぱ軽蔑してる?」
「ううん。そうじゃなくて……。ちゃんとわかってたつもりだったけど、キミって男の人なんだなって改めて思って……」
ティーダは膝立ちのまま体を起こし、服を脱ぐ。ズボンをそのままに、再びユウナを見る。
「ユウナと違っておっぱいもないしな」
と、小首を傾げて笑う。
「なあ、ユウナ。胸のところのエイブスのマーク、嬉しいんだけどさ、やめない?」
「どうして?」
「ユウナは、堂々としてたら意外に見られてないみたいだし大丈夫とか言ってたけど、男ってさ、けっこう見てるよ」
胸元に視線を感じ、ユウナの体が火照りだす。
「あ、そっか……。だから、えっと、その、恥ずかしいってことなのかな」
「ふーん」
ユウナの唇からティーダの親指が離れると、今度は人差し指と中指が唇に浅く差し込まれた。
驚くユウナの表情とは裏腹に、ティーダはにこりと笑う。
「あんなにエッチなキスするようなユウナでも、恥ずかしいことってあるんだな」
唇が重なるだけの軽いものから始まる口づけは、毎回いつの間にか密度を上げている。最後は必ず、ユウナの呼吸を乱し、体の中心を熱くするくらいにはティーダの舌によって感度を上げられている。
その気にはならないようにと意識していても唇を重ねれば、毎度、体は疼く。そんないやらしい口づけをしているのはティーダのほうであって、こちらがいやらしいことをしているわけではない。なのに、エッチと言われては黙ってはいられない。これはひとこといってやらねば。
キスより先はしたことないのに、キスだけでわたしの体がおかしくなるなんて、キミのせいっす!
「んっ、ふっ、んぁっ」
ティーダの指先がユウナの舌を撫で回し、抗議は言葉にならない。自分のくぐもった声が頭に響き、呼吸もままならないユウナは陵辱されているように錯覚する。
こんなの、いや……。
「ユウナ、オレの指、舐めて」
眉を下げて熱のこもったティーダの溜息にユウナは、瞬間に感じた不快感は気のせいだったと思い直す。言われるまま、ティーダの二本の指に舌を這わせた。人差し指と中指の間を丁寧に往復し、ティーダの右手を両手で掴み、二本の指を口に含む。指の間、指の関節、指先を咥えながらも舌先で愛撫していると、ティーダの頬が赤らんでいた。呼吸も平常のものより若干乱れている。
「ユウナ、上手ッスね……。どこで覚えたの?」
訊かれて、ティーダの指を口内から引き抜く。
「覚えたわけじゃないよ。これは、昨日、ジャッシュさんとボッツさんが寺院の裏でコソコソしてたのが気になって、誰もいなくなってからなんだったのかなって見に行ったら、その、エッチな映像スフィアがあって、それで……」
「最後まで観たの?」
「最初はね、ほんっとびっくりしたんだよ。こういうのは昼間に観るものじゃないし、ダメだって思ったんだけど、その、気になって、えっと……」
はっきりとは言わないが、つまりは自分の指摘通りにその映像スフィアを最後まで観たのだろう。ティーダは、くすりと笑った。
「大召喚士様も、そういうの、興味あるんスね」
「……まったく興味がないと言うほど、わたしは無垢じゃないです。ごめんなさい……」
「なんで謝るッスか。オレはちょっと安心した」
先程からずっとベッドの傍で両膝をついていたティーダは、その体を起こし、毛布を捲るとベッドへと上がった。ユウナの膝を跨ぎ、ユウナの二の腕の下へ腕を滑らせて肘を突く。
ティーダがこれほど接近してきたのは初めてのことであり、ユウナは顔を熱くする。この状況から、いよいよ関係を深める行為へと及ぶのだろうと覚悟を決める。とはいえ、緊張して体に力が入る。このままでは緊張のあまり思考が停止してしまいそうだ。この緊張をほぐすために何か話さなければと、ユウナは勢いをつけるように息を吸って訊ねた。
「あ、安心って?」
「ユウナって真面目だし、純情そうだし、エッチの仕方知らないんじゃないかなって。だから、キスより先になかなか行けないなーって思ってた」
明るく弾ませた語気に、ティーダなりの気遣いを感じたユウナは、体の力を少し緩める。
「買いかぶりっす。そういうキミは知ってたの?」
「何を?」
にやにやと口端を上げるティーダにユウナの頬がぷくりと膨らむ。
「意地悪……」
「ごめんごめん。エッチの仕方な。知ってたよ。オレのザナルカンドにもエロ本とかエロスフィアとかあったし。エイブスのチームメイトで貸し借りしてた」
さらりと暴露され、ユウナの目が丸くなる。
「軽蔑する?」
「う、ううん、全然っ」
「ほんとに?」
「うん、ほんとに」
「なら、よかった。単純に見てみたかったってのもあるけど、男の生理現象でもあるからさ。そういうのをネタにして定期的に出しとかないと、悶々とするっていうか。ブリッツの練習のときとか試合のときとか、焦って冷静な判断できなかったりするし。つっても、焦りとかイライラとかの原因の全部が溜ってるってだけじゃないけどな」
ユウナの視線に我に返ったティーダはユウナの目を見る。
「やっぱ軽蔑してる?」
「ううん。そうじゃなくて……。ちゃんとわかってたつもりだったけど、キミって男の人なんだなって改めて思って……」
ティーダは膝立ちのまま体を起こし、服を脱ぐ。ズボンをそのままに、再びユウナを見る。
「ユウナと違っておっぱいもないしな」
と、小首を傾げて笑う。
「なあ、ユウナ。胸のところのエイブスのマーク、嬉しいんだけどさ、やめない?」
「どうして?」
「ユウナは、堂々としてたら意外に見られてないみたいだし大丈夫とか言ってたけど、男ってさ、けっこう見てるよ」
胸元に視線を感じ、ユウナの体が火照りだす。
「女の子本人に気づかれないように、ちら見するのって朝飯前でさ。胸が揺れるのとかも、何食わぬ顔で見てたりするんだよ。いくらドレスフィアにこもってる幻光虫がすぐに自動修復するからってさ、実際ずっと水に濡れっぱなしだったら、見えてただろ?」
じっと胸を見るティーダの視線を遮ろうと、ユウナは自分の両手で胸を覆う。
「こないだの、あれさ、オレやばかったよ。何も着てないのよりやらしく見えてやばかった」
ティーダはユウナの両手を掴んで頭上へ押さえつけた。
「で、でも、ピンク色の裏地があるから、見えてないってリュックとパインも言ってたよ」
「透けてなくても形がわかるくらい張りついてたらアウトッス。色なんて見えなくてもいくらでも想像できるから」
「あの、でも、形って行ってもリュックだって胸の形わかるくらいには露出してたよ?」
「ああ、まあ露出で言うとリュックのほうがあるけど、あれって、水着みたいな素材でできてるやつだよな」
「あ、うん」
「なら、やっぱユウナのほうがダメ。水着は透けなかったり張りつかないようにできてるけど、ユウナのはフツーの服だろ?濡れて張りついたら、乳首がどこにあるかわかるんだよ」
「えっ……!」
言われてユウナの鼓動は跳ねる。すぐに胸を隠したくなったが、ティーダに両手を掴まれたままで隠せない。
「一度そういうの見ちゃうと、ずっと記憶してるんだ。あわよくば何かのアクシデントで触れたりしないかな~て、男ならだいたい考えてる。だから、水に入るなら絶対水着を着ること。わかった?」
「は、はい……」
ほんとなのかな。ティーダが言うことが本当のことなら、これからはちゃんと気をつけないと。
「よろしい。じゃあ、当ててみよっか」
「へ……?」
すっかり気の抜けていたユウナの左胸の先をティーダが口に含む。
「あっ、ちょっと待って」
「やっぱ当たり?」
と、ユウナの手を放し、右胸の先を三本の指で摘まむ。優しく揉み解すような動きに、ユウナは体を揺らす。
そんな、いきなりこんな触り方するなんて。しかも、服着たままなのに。
襲われる羞恥にユウナは再び身を硬くした。不意に内腿をティーダの熱い手の平が這い上がり、更に身を硬くする。足の付け根まで上がり、このままではデニムのショートパンツに指が差し込まれてしまうと、目をぎゅっと瞑った。が、その手はそのまま腰へと上がり、ティーダが男の視点で問題を指摘したトップスを留めている紐を外そうと、腰の裏に両手が差し込まれた。
「あれ?これ、どうやって外すの?つうか、ゴム状?」
「あ、うん。脱ぐときは全部上から……て、あの、やっぱり、その……」
「ん?なに?」
ティーダはユウナの背を起こし、腰の紐を引き上げる。
「するの?」
「えっ、しないの?」
すっかり先へ進もうとしていたティーダの手が瞬間止まったが、にこりと微笑み、動き出す。
「まったく興味がないというわけじゃないっていうことはさ、ほんとはすごく興味があるってことだろ?」
図星を指されてユウナの顔が真っ赤になる。
「オレだけが興味あるんじゃなくて嬉しいよ」
弾む声の主に服を脱がされ、ユウナは両腕で胸を覆う。
「キミは、その……慣れてるね……」
ユウナの言葉にティーダは目を丸くした。恥ずかしそうに視線を落とすユウナの肩が微かに震えており、緊張しているのは己だけではないと一息つく。
「ごめん。全然、慣れてない。こういうエロいことするのってユウナが初めてだから、実はすごく緊張してる」
と、ティーダはユウナの右手を掴み、自分の左胸へとその手の平を当てさせた。
「な?すごく速いだろ?」
速く打つにもほどがある鼓動に、ユウナは思わず笑みをこぼした。
「ほんとだね」
小首を傾げながら、ひとりでに目頭が熱くなるのを感じ、胸を覆っていたうちの片方の手で涙を拭う。
「ごめん。わたしも、すごく緊張してて、キミもわたしと同じなんだって思ったら、気が弛んじゃって……」
こんな時に泣いちゃうなんてダメ。相手はティーダだし、怖いことなんてひとつもないのに。
目をきゅっと閉じて涙を止めようとするユウナの瞼に、ティーダの唇がそっと触れた。
「怖い?」
優しく落ち着いた声にユウナは頭を振る。
「キミだから……ティーダだから、大丈夫」
ユウナはティーダの右手を両手で掴み、それを自分の左胸へ触れさせた。まるで、生死を賭けた戦闘前の時のように脈打つ鼓動によって気が押し潰れされそうだ。だが、そのうるさいほどの心音へ立ち向かうように口を開く。
「わたしに触って。キミに触って欲しいの。わたしの全部をあげたいの。だから、消えたりしないで。消えるなら、死んでしまうなら、何十年も先にわたしと一緒に異界へ行こう?」
願いのようなユウナの言葉は、ティーダの頬に涙を伝わせる。流れ落ちた涙はユウナの胸に触れる右腕に落ちた。胸が熱くなり、切なさがこみ上げる。ティーダは、涙をあふれさせながら笑って頷いた。
「もちろん、そのつもりッス。けど、ユウナ、コワイ。それ、脅迫みたいッス。ははは、だよな、ユウナの一番大事なもの、もらうだけもらって逃げるなんて、卑怯だもんな」
女の子だって想像したりするんです