「誘惑」の続き。近藤さんのターンというかトシのターン。
お妙さんに誘惑されて屯所に逃げ帰ってきた勲はフォロ方十四フォロに恋愛相談。
勲とトシがふにゃちんとか普通に下品なこと言ってます。けども銀魂では通常運転でしたね(笑)
若干、土→ミツあります。
お妙さんに誘惑されて屯所に逃げ帰ってきた勲はフォロ方十四フォロに恋愛相談。
勲とトシがふにゃちんとか普通に下品なこと言ってます。けども銀魂では通常運転でしたね(笑)
若干、土→ミツあります。
意気地なし
遅い昼食後、屯所で休憩をとっていた土方は、縁側の先に近藤の姿を見た。帰宅の早い近藤に首を傾げる。
まだ4時過ぎだぞ?あのキャバ嬢と同伴出勤じゃなかったのか?あ。そういや、銀河剣聖(ギャラクシーソードマスター)の件でへこんだ志村姉弟の見舞いに行った日ぶりだったか?
中庭でバドミントンに興じる沖田と山崎を眺めながら土方は咥えていた煙草に火をつけ、自分の背後を通り過ぎようとした近藤に声をかけた。
「どーした近藤さん。えれー早ェじゃねーか。さては、また振られたな」
言ってから毎度のことだと土方は自嘲する。
「わりィ。いつものことだったな。それにしても同伴断るなんざ、近藤さんが店出向かなくても売り上げは上々ってことか。こりァいよいよ近藤さん離れが進むな」
「あ、うん。だよね。そのほうがいいに決まってる。あ、今日はお妙さん、休みだったみたい」
覇気のない近藤に土方は再度、首を傾げた。
「ん?何かあったのか?」
「ああ、うん。乗っかられてフニャチン舐められた」
「そうか、乗っかられてフニャ……」
あァ?今なんて?フニャチン舐めたれたっつった?!
「誰に」
「お妙さんに」
「そうか、お妙さんに……って、えええェェェ?!」
隊士たちの注目を一気に集めた土方は咳払いをひとつして、携帯灰皿に煙草を押し込めた。
「近藤さん、いいか?」
と、自室を指差し、土方は近藤を招き入れた。障子を閉めて、小声で話しても聞きとれる距離で胡坐を掻く。
「あのキャバ嬢が、マジでアンタのフニャチン舐めたのか?」
「あ、うん、咥えられる前に逃げたけどね。中出し拒んだら、結婚すればいいじゃないって言ってた」
な、中出しィィィ?!オイィィィ!マジで一体どんな展開ィィィ?!つーか、この感じ前にもなかったけ……?
「あの、近藤さん、それって、夢オチじゃ……」
「あ、うん、違う。さっきフニャチン舐められて、時間差で今ギンギンだから」
淡々と答える近藤に、土方は何かあるなと感じながら続けた。
「ちょっと待て。まずは、なんでそんな展開になってるかだ」
土方は、気を落ち着かせるように新しい煙草を取り出した。火を点けて煙を吸い込み。ふうっと煙を吐き出す。
そうそう、まずは落ち着こうか、十四郎。気を確かにして近藤さんから聞くんだ。
土方は、気を取り直して近藤に訊ねた。
「あの女、ようやく近藤さんに惚れてるって認めたのか?」
「あ、うん、そうみたい」
「そうみたいって、えれー他人事じゃねーか。嬉しくないのか?ただ、振り向かねー女のケツ追っかけ回したかっただけってのか?」
「いや、嬉しいよ。俺、お妙さんのこと好きだもん。大好きだもん。でも振ってきちゃった。勃たないって言って」
「なんでまたそんな思ってもいねーこと言ったんだよ」
「だって、お妙さん、待ってたんだもん。俺のこと待ってたんだもん」
「待ってたんならいいじゃねーか、何が不満なんだよ」
嬉しいのなら素直に喜べばいいものを、その様子が感じとれずに土方は苛立ちを露わにする。近藤は一度目を閉じ、改めて土方を見やった。
「俺は、いずれ尾美一塾頭と同じ道を行く。そうだろ、トシ」
射るような目で言われ、土方は言葉を失くした。
「これ以上、お妙さんを置いてけぼりにしちゃいけねェだろ。月命日に酒浴びるくらい飲んで、正気かどうかもわからねェのに、好きだっつってさァ。慰み者で構わねェからって、生娘のくせにいきなり男の汚ねーもん咥えようとしたんだぞ。抱けるわけねーだろ。あんな弱ってる女、抱けるわけねーだろッ」
不甲斐ない己を痛めつけるように、近藤は膝の上の拳を爪がくい込むほど強く握った。悔しさを滲ませた近藤に同情する余地はある。が、いい女を見るとすぐに惚れてしまう単純な性分の男にしては、あれこれ考えすぎてはいないだろうか。
「オイ、近藤さん。何を難しく考えてる」
低い声がして、近藤は顔を上げた。土方は吸っていた煙草を灰皿に押しつけ、火を消した。
「中出ししてください、結婚してください、どんだけ据え膳だよ。食ってやれよ男なら。女に恥かかすな。お山の大将のアンタがそんな甲斐性のねェ男だったって野郎どもに知られてみろ。面目ねェじゃねーか。とにかく、あの女の気が変わらねェうちに種づけしてくることだな。祝言なんざさっさとすませて、あとは立派な跡継ぎを産んでもらえ」
土方なりの応援と祝福を、否定するように近藤は首を横に振った。
「なんで」
土方の問いかけに近藤は再び、首を横に振る。
「お妙さんを置いてけぼりにしたままじゃァ、死ぬに死にきれん」
「オイオイ、いい加減にしろよ、近藤さん。なんで死ぬの前提なんだよ。アンタ、なんかフラグでも立ってたか?そういうわけじゃねーだろ。つーか、俺たちァそんなに信用ねーのかよ」
苛立ちを誤魔化すように、土方はまた新しい煙草を取り出した。それを指に挟んだまま、近藤の顔を見る。
「大将の首を易々と獲られてたまるかよ。アンタは真選組の魂で、俺たちはそれを護る剣なんだよ。よって、アンタは最後まで生き残る。そうだろ、近藤さん。だから、あの女は置いてけぼりなんざくらわねェ」
半ば意地を張って言う土方に、近藤は呟いた。
「トシ……」
確かに前にも言われた。自分でも大将は向いていないと思うのに、仲間たちは自分についてきてくれる。土方がこう言ってくれるのだ。他の隊士たちもきっと同じように言ってくれるだろう。これほど心強い後押しはない。
近藤は頷こうとしたが、再び首を横に振った。
「いや、やっぱムリ」
「だァァァ!アンタほんっとめんどくせーなマジで!一体、何が気になってるっつーんだッ!」
「そう言うなら訊くけどさァ」
堪忍袋の緒を切らした土方を見た近藤は訊きにくそうに、ちらちらと土方を見る。
「いいから訊けよ」
煮え切らない近藤の態度に土方は、胡坐を掻く膝をあからさまに揺すりだす。
「トシ、これしきのことでイライラしていると体に毒だぞ。マヨネーズばかり摂取してないでカルシウム摂りなさい、カルシウム」
胸の前で両腕を組む近藤につかさず突っ込む。
「イラつかせてる張本人が言うなよ」
「ハッ、まるであの時と同じじゃねーか、トシ」
「あァ?」
悪態をつく土方には気にも留めず、近藤は言った。
「武州にミツバ殿を置いて行く理由を聞いたら、てめーのイラつき度は今と同じように最高値を振り切ってたって話さ」
鼻で笑った近藤に目を見られ、土方は貧乏揺すりをぴたりと止めた。
「なァ、トシ。俺が据え膳から逃げてきたのは、それと同じ理由だ」
わざわざ説明されなくとも、土方には何を指して同じ理由だと近藤が言ったのかわかった。
ああ、だから死ぬ前提なわけか。
土方は指に挟んだままの煙草を咥えて火を点けた。
苦労をさせたくない。危ない目に遭わせたくない。構ってやれない。それならば他の男とでもいい。ただ、幸せになってほしい―その気持ちは痛いほどわかる。しかし、己は失敗したのだ。
煙を吐き出した土方は、愉快そうに笑った。
「近藤さん、いいこと教えてやるよ。心の底から惚れてる女なら置き去りにするな」
灰皿に煙草の灰を落として続ける。
「はっきり言って俺は後悔した。あんな太てェ野郎と一緒になるってんなら、苦労がどうとか四の五の言わずに連れてきゃよかったってな」
吸われていない煙草はただ煙を上げる。土方は、灰の角を落とすように灰皿の底でそれを転がした。
「後味わりぃってもんじゃねーぞ。いっその事、血反吐でも吐いたほうがましってもんだ」
土方は灰皿で弄んでいた煙草の先を押し潰した。
「経験者は語るってやつだ」
と、一息ついた土方は、そろそろ職務に戻ると告げ、腰を上げた。土方は近藤に背を向けたまま最後の助言をする。
「近藤さん、アンタは後悔するような道を選ぶなよ」
障子を開けると沖田をはじめ、他の隊士たちが聞き耳を立てていた。
「なんだてめーら、散れ散れ!」
「前から思ってはいましたが、土方さんって改めて超絶女々しい野郎だったんですねィ。男の風上にも置いとけねーや」
「っんだとコラァァ!てめーらも早く持ち場戻れや!いつまでも遊んでんじゃねェェ!」
遠ざかる剣幕に近藤は頷いた。
男が死んで詫びを入れたいほどの後悔か。そんなのしたくねーな。
近藤は立ち上がり、縁側で陽の光が遠ざかった中庭の空を見上げた。
お妙さん、許してくれるかな。
まだ4時過ぎだぞ?あのキャバ嬢と同伴出勤じゃなかったのか?あ。そういや、銀河剣聖(ギャラクシーソードマスター)の件でへこんだ志村姉弟の見舞いに行った日ぶりだったか?
中庭でバドミントンに興じる沖田と山崎を眺めながら土方は咥えていた煙草に火をつけ、自分の背後を通り過ぎようとした近藤に声をかけた。
「どーした近藤さん。えれー早ェじゃねーか。さては、また振られたな」
言ってから毎度のことだと土方は自嘲する。
「わりィ。いつものことだったな。それにしても同伴断るなんざ、近藤さんが店出向かなくても売り上げは上々ってことか。こりァいよいよ近藤さん離れが進むな」
「あ、うん。だよね。そのほうがいいに決まってる。あ、今日はお妙さん、休みだったみたい」
覇気のない近藤に土方は再度、首を傾げた。
「ん?何かあったのか?」
「ああ、うん。乗っかられてフニャチン舐められた」
「そうか、乗っかられてフニャ……」
あァ?今なんて?フニャチン舐めたれたっつった?!
「誰に」
「お妙さんに」
「そうか、お妙さんに……って、えええェェェ?!」
隊士たちの注目を一気に集めた土方は咳払いをひとつして、携帯灰皿に煙草を押し込めた。
「近藤さん、いいか?」
と、自室を指差し、土方は近藤を招き入れた。障子を閉めて、小声で話しても聞きとれる距離で胡坐を掻く。
「あのキャバ嬢が、マジでアンタのフニャチン舐めたのか?」
「あ、うん、咥えられる前に逃げたけどね。中出し拒んだら、結婚すればいいじゃないって言ってた」
な、中出しィィィ?!オイィィィ!マジで一体どんな展開ィィィ?!つーか、この感じ前にもなかったけ……?
「あの、近藤さん、それって、夢オチじゃ……」
「あ、うん、違う。さっきフニャチン舐められて、時間差で今ギンギンだから」
淡々と答える近藤に、土方は何かあるなと感じながら続けた。
「ちょっと待て。まずは、なんでそんな展開になってるかだ」
土方は、気を落ち着かせるように新しい煙草を取り出した。火を点けて煙を吸い込み。ふうっと煙を吐き出す。
そうそう、まずは落ち着こうか、十四郎。気を確かにして近藤さんから聞くんだ。
土方は、気を取り直して近藤に訊ねた。
「あの女、ようやく近藤さんに惚れてるって認めたのか?」
「あ、うん、そうみたい」
「そうみたいって、えれー他人事じゃねーか。嬉しくないのか?ただ、振り向かねー女のケツ追っかけ回したかっただけってのか?」
「いや、嬉しいよ。俺、お妙さんのこと好きだもん。大好きだもん。でも振ってきちゃった。勃たないって言って」
「なんでまたそんな思ってもいねーこと言ったんだよ」
「だって、お妙さん、待ってたんだもん。俺のこと待ってたんだもん」
「待ってたんならいいじゃねーか、何が不満なんだよ」
嬉しいのなら素直に喜べばいいものを、その様子が感じとれずに土方は苛立ちを露わにする。近藤は一度目を閉じ、改めて土方を見やった。
「俺は、いずれ尾美一塾頭と同じ道を行く。そうだろ、トシ」
射るような目で言われ、土方は言葉を失くした。
「これ以上、お妙さんを置いてけぼりにしちゃいけねェだろ。月命日に酒浴びるくらい飲んで、正気かどうかもわからねェのに、好きだっつってさァ。慰み者で構わねェからって、生娘のくせにいきなり男の汚ねーもん咥えようとしたんだぞ。抱けるわけねーだろ。あんな弱ってる女、抱けるわけねーだろッ」
不甲斐ない己を痛めつけるように、近藤は膝の上の拳を爪がくい込むほど強く握った。悔しさを滲ませた近藤に同情する余地はある。が、いい女を見るとすぐに惚れてしまう単純な性分の男にしては、あれこれ考えすぎてはいないだろうか。
「オイ、近藤さん。何を難しく考えてる」
低い声がして、近藤は顔を上げた。土方は吸っていた煙草を灰皿に押しつけ、火を消した。
「中出ししてください、結婚してください、どんだけ据え膳だよ。食ってやれよ男なら。女に恥かかすな。お山の大将のアンタがそんな甲斐性のねェ男だったって野郎どもに知られてみろ。面目ねェじゃねーか。とにかく、あの女の気が変わらねェうちに種づけしてくることだな。祝言なんざさっさとすませて、あとは立派な跡継ぎを産んでもらえ」
土方なりの応援と祝福を、否定するように近藤は首を横に振った。
「なんで」
土方の問いかけに近藤は再び、首を横に振る。
「お妙さんを置いてけぼりにしたままじゃァ、死ぬに死にきれん」
「オイオイ、いい加減にしろよ、近藤さん。なんで死ぬの前提なんだよ。アンタ、なんかフラグでも立ってたか?そういうわけじゃねーだろ。つーか、俺たちァそんなに信用ねーのかよ」
苛立ちを誤魔化すように、土方はまた新しい煙草を取り出した。それを指に挟んだまま、近藤の顔を見る。
「大将の首を易々と獲られてたまるかよ。アンタは真選組の魂で、俺たちはそれを護る剣なんだよ。よって、アンタは最後まで生き残る。そうだろ、近藤さん。だから、あの女は置いてけぼりなんざくらわねェ」
半ば意地を張って言う土方に、近藤は呟いた。
「トシ……」
確かに前にも言われた。自分でも大将は向いていないと思うのに、仲間たちは自分についてきてくれる。土方がこう言ってくれるのだ。他の隊士たちもきっと同じように言ってくれるだろう。これほど心強い後押しはない。
近藤は頷こうとしたが、再び首を横に振った。
「いや、やっぱムリ」
「だァァァ!アンタほんっとめんどくせーなマジで!一体、何が気になってるっつーんだッ!」
「そう言うなら訊くけどさァ」
堪忍袋の緒を切らした土方を見た近藤は訊きにくそうに、ちらちらと土方を見る。
「いいから訊けよ」
煮え切らない近藤の態度に土方は、胡坐を掻く膝をあからさまに揺すりだす。
「トシ、これしきのことでイライラしていると体に毒だぞ。マヨネーズばかり摂取してないでカルシウム摂りなさい、カルシウム」
胸の前で両腕を組む近藤につかさず突っ込む。
「イラつかせてる張本人が言うなよ」
「ハッ、まるであの時と同じじゃねーか、トシ」
「あァ?」
悪態をつく土方には気にも留めず、近藤は言った。
「武州にミツバ殿を置いて行く理由を聞いたら、てめーのイラつき度は今と同じように最高値を振り切ってたって話さ」
鼻で笑った近藤に目を見られ、土方は貧乏揺すりをぴたりと止めた。
「なァ、トシ。俺が据え膳から逃げてきたのは、それと同じ理由だ」
わざわざ説明されなくとも、土方には何を指して同じ理由だと近藤が言ったのかわかった。
ああ、だから死ぬ前提なわけか。
土方は指に挟んだままの煙草を咥えて火を点けた。
苦労をさせたくない。危ない目に遭わせたくない。構ってやれない。それならば他の男とでもいい。ただ、幸せになってほしい―その気持ちは痛いほどわかる。しかし、己は失敗したのだ。
煙を吐き出した土方は、愉快そうに笑った。
「近藤さん、いいこと教えてやるよ。心の底から惚れてる女なら置き去りにするな」
灰皿に煙草の灰を落として続ける。
「はっきり言って俺は後悔した。あんな太てェ野郎と一緒になるってんなら、苦労がどうとか四の五の言わずに連れてきゃよかったってな」
吸われていない煙草はただ煙を上げる。土方は、灰の角を落とすように灰皿の底でそれを転がした。
「後味わりぃってもんじゃねーぞ。いっその事、血反吐でも吐いたほうがましってもんだ」
土方は灰皿で弄んでいた煙草の先を押し潰した。
「経験者は語るってやつだ」
と、一息ついた土方は、そろそろ職務に戻ると告げ、腰を上げた。土方は近藤に背を向けたまま最後の助言をする。
「近藤さん、アンタは後悔するような道を選ぶなよ」
障子を開けると沖田をはじめ、他の隊士たちが聞き耳を立てていた。
「なんだてめーら、散れ散れ!」
「前から思ってはいましたが、土方さんって改めて超絶女々しい野郎だったんですねィ。男の風上にも置いとけねーや」
「っんだとコラァァ!てめーらも早く持ち場戻れや!いつまでも遊んでんじゃねェェ!」
遠ざかる剣幕に近藤は頷いた。
男が死んで詫びを入れたいほどの後悔か。そんなのしたくねーな。
近藤は立ち上がり、縁側で陽の光が遠ざかった中庭の空を見上げた。
お妙さん、許してくれるかな。
意気地なし
Text by mimiko.
2013/03/04