「意気地なし」の続き。近妙でちょいえろあります。
かっこいい漢前近藤さんはいません。男に二言がある勲です。
はっきり言ってお妙さんに悪いと思ってないです。なんやかんや言いながら結局はオレに惚れてんだろ?勲です。
そんな勲は殴られてもいいはずなのにお妙さんは殴ってません(アクシデントはあります)
水着回やらキャバクラ遊び回やら近妙出会い近銀決闘回やらスキー回やらにオマージュでインスパイアしてます。

君の笑顔

 昨日のことは覚えている。優しく頭を撫でられた。太腿に、頬に、触れた手がとても温かかった。そして、こちらがどう出ようとも、冷静な声と無表情での返答。以前の近藤からすれば、とても考えられないことである。
 私、近藤さんに振られたのね……。
 昨夜は泣きながら床に就いた。妙が、そっと瞼に触れると、瞼は分厚く腫れている。
 夕方には腫れが引いてるかしら。今日は出勤日なのに……。
 妙は、のそりと布団から出ると洗面所へ向かった。朝日が差し込む洗面所に入り、鏡で自分の顔を見る。
「あらあら、これはひどいわ。まるで眼鏡を外した小池さんじゃないの」
 指で瞼に触れる。改めて見ると酷い有り様だ。
 お酒も飲んでたせいかしら。でも、二日酔いって感じでもないんだけど、なんだか体がぽーっとして、ぽーっと……。
 前触れなく視界が上下する。妙は洗面所の床に倒れ込んだ。
 あら、冷たい床が気持ちいい……というか、起きないと。こんなところで寝てたら、新ちゃんに叱られちゃうわ……。
***
 妙が目を覚ますと、新八と近藤が心配そうに、こちらを見ていた。
 あ、あれ?
 妙は、布団に包まれたまま瞬きを繰り返した。何度、瞬いて見直してみても、そこにいるのは新八と近藤である。
 なんでゴリラがここにいるの?ビームサーベ流のお稽古?でも、昨日の今日よ?
「あ、姉上、大丈夫ですか?気持ち悪いとかないですか?」
「ええ……」
と、新八に答えながら横目で近藤を見やる。
 やっぱり間違いなくゴリラがいるわ。
 近藤は新たなタオルを絞り、それを新八へと渡す。渡されたタオルは妙の額の上のものと取り換えられた。
「医者に診てもらったら、風邪だろうって。店には休むって連絡しときました。とにかく今日は寝ていてくださいね」
 目を覚ましたことで少し安心した新八は、近藤のほうを見て念を押した。
「いいですか、近藤さん。姉上に少しでもおかしなことしたらブッ殺しますからね」
 ぎろりと睨みを利かせた新八に、その気はないと両方の手の平を向けて、うんうんと笑顔で頷く近藤は、平常と変わらない様子である。昨日の出来事など、まるでなかったように感じられる。
 昨日のって夢だったとか?
「じゃあ、お願いします。迷い犬、見つかり次第、即戻ってきますからね。おかしなことしたらマジでブッ殺しますよ!」
 再三、念を押して行く新八を笑顔で見送ると、近藤が向き直る前に、妙は布団を頭まで被った。
「お妙さん、お邪魔してます!」
 近藤は頭を下げるが、布団で視界を遮っている妙からの返答はない。昨日の今日で無理もないと自嘲した近藤は、妙が布団を被った時に落ちたタオルを拾った。桶にタオルをかけて、布団を被ったままの妙を見つめる。
「……お稽古でいらしたんですよね……?」
 布団から籠った妙の声がして近藤は否定した。
「いいえ」
「……すみません、私ったら風邪引いちゃったみたいで。道場なら、どうぞお使いください……」
 妙は近藤の返事に構うことなく自分の言いたいことを言った。が、それは近藤も同じであった。
「いいえ」
 迷いのない真っ直ぐな近藤の声に、妙は舌打ちする。
「あなた、一体何がしたいんです?昨日の今日で、どんなツラしてうちの敷居を跨げるっていうんです?」
「どんなツラしてるか見てもらえますか」
 妙は、かっとして布団を捲った。布団の傍で正座していた近藤は、背を正し、真剣な面持ちでこちらを見ていた。視線が合った妙は、気まずそうに顔を逸らす。
「あなたがここにいる理由がわかりません。お稽古でないなら、何をしに来たんですか」
と、近藤に背を向ける。
「あなたをさらいにきました」
 なっ……!
「よくもそんなことが言えますね。どうかしてるわ」
「はい、お妙さんの仰るとおりです。あなたのことを好きじゃないなんて、天地がひっくり返ってもありえねェのに、よくもまァあんな大嘘をつけたもんだと我ながら感心しました」
「はァ?!」
 何言ってるの、この人。
「お妙さん、すみません。心にもないことを言ってあなたを傷つけたことを、どうか許してください」
 近藤は、再び妙に頭を下げた。その無言の間に耐えられなくなった妙は、近藤へ振り向き、怒りを露わにする。
「大の男が、それも泣く子も黙る真選組、その局長のあなたが、女に向かって言ったことを簡単に覆すんですか!」
「はい」
 あっけらかんと言った近藤は、妙の手を取り、自分の股間へと導いていた。そこに触れた妙は、その感触に驚く。昨日触れたそれとはまるで別物だ。
「何してるんです、近藤さん」
 近藤の態度に、自分の怒り度は最高値を振り切っていると自覚しながら、敢えて静かに訊ねた。
「昨日の積極的なお妙さんを思い出したら、すぐにこうなります。実は昨日から何回抜いてもこんなんです」
 恥ずかしげもなくぶちまける近藤に、妙は開いた口が塞がらなかった。
「だから、今からでも昨日の続きをしてもいいですかお妙さん!」
「ダメです。私、風邪引いてますから」
 妙の言葉に近藤は、口の片端を上げた。
「風邪を引いてなければ、いいんですねお妙さん!」
 揚げ足を取られた妙は、はっとした。
「そんなわけないじゃないですか!私がどんなに傷ついたと思ってるんです?!あんなに嫌っていたはずのあなたに告白して、あっさり振られたんですよ?!しかも、女のプライドをことごとく粉々にされて!それを、一晩でなかったことになんて、できるわけないじゃない……」
 そうよ。いくら私のことを好きじゃなくなったっていうのが嘘だったとしても、あなたの口から聞きたくないことをいっぱい聞かされたのよ。簡単に許せるものですか。昨日のフニャフニャが、こんなに硬くなってるからって……。
 ふと、妙は近藤に握らされたそれに力を入れた。
「んんっ、ちょっ」
 近藤の苦しげな声が上がる。
 ああ、なんて憎い人なの。私は、あなたに振り回されてばかり。
「昨日とは全然違いますね……」
 袴の上から優しく撫でると、近藤の肩が揺れる。
「こんなになるのに、昨日はどうしてあんなにフニャフニャだったんですか?」
「アレは、その……」
「なんです?」
「その、俺と一緒になるということは、あちこちに気ィ遣ってばっかになるだろうし、命を狙われるかもしれねェ。俺はこう見えて結構忙しかったりするし、とか、お妙さんは遊びで抱いていい女じゃねェし、とか思って……」
「へえ、近藤さんって、遊びで女の人を抱いたりできるんですね」
 きゅっと握られ、近藤の肩がびくりとした。
「あ、いや、そ、それは、言葉のあやというか、はぁ、お妙さんっ、そんな、強くしなっ、んっ」
 抗議の声に妙は指の力を抜く。それをかたどるように優しく擦る。
「そ、その、決して遊んでたわけじゃないですよ、お妙さんと出会ってからは一切そういうのないですから」
「じゃあ、私と出会う前はいろいろとおありになったんですね」
と、妙はにこりと笑った。袴の下で硬くなっているそれを包んだ手で擦り、近藤の息が上がる。
「んっ、お妙さん、これ以上はダメです」
 近藤は妙の手を握り、そこから離した。
「どうしてです?昨日の続きをするんでしょう?」
 いつもの笑顔で言う妙に近藤は頭を掻いて笑った。
「意地悪だなァ、お妙さん。新八くんに殺されちゃいますよ」
「もう、すでに殺されるようなことしてると思いますけど」
「お妙さんが言わなきゃばれませんよ」
「言わないと思います?結婚するんでしょう?」
「え。す、するんですか?」
「まあ。嫁入り前の生娘に強制わいせつな行為をしておきながら、結婚しないおつもりなんですか?警察のお偉いさんなのに?」
「きょ、強制わいせつって」
「あら、だってそうじゃないですか。大きくなった男のものを一方的に握らせるんだもの」
 変わらずににこにこと笑う妙に近藤は訊ねた。
「あの、お妙さん、怒ってます?」
「ええ。そう言ったはずですけど?」
 近藤は内心、焦った。
 どどどどうしよう!昨日の続きしていいかって聞いたら風邪引いてるからダメだって、いやとは言わなかったから行けると思ったのにィ!こうなりゃ自棄だお妙さんんん!
 近藤は妙の布団を剥ぎ取り、妙に覆い被さった。妙を体を冷やさないようにと布団を被り、妙の瞳を間近で見つめる。
「好きです、お妙さん。あなたが好きだ」
 近藤の真っ直ぐな眼差しに、改めて顔が熱くなる。その気配を感じ取って妙は近藤の肩を押し離そうとするが、近藤はびくりともしなかった。
「近藤さん、やめてください。私、風邪ひいてるんですってば。あの、昨日も休みで、今日も休みなんですか?明日はお仕事ありますよね?ていうか、あなた風邪引いてる暇ないじゃないですか」
 早口で言う妙に、近藤は柔らかく笑う。
「昨日は休みでしたけど、今日は有休取りました。明日は確かに出勤です。まあ、風邪は引いたら引いたで気合で治しますから、お妙さんは気にしないでください」
と、唇を重ねてゆっくりと動かす。熱く柔らかい感触に近藤の胸が熱くなる。
「お妙さん、好きです……」
 呟き、再び口づける。啄むその優しさに妙の瞳が潤みだす。
「や、近藤さん、ダメ、ん……」
 ちゅっと音を鳴らす近藤の唇が離れると、妙は寂しさで胸を締めつけた。
 もっとひとつになりたいって、こういうことをいうんだわ。私は、この人が好きで、この人も私のことを……。
 切なげな妙の表情に、近藤は堪らなくなって深く口づけた。
「んぅっ、ふぅ?!」
 嘘、やだっ、近藤さんの舌、熱いっ……!
 舌を嬲られ、妙の体がびくりと揺れる。根元まで擽られ、唾液を絡めとられ、妙のくぐもった声が洩れる。
 ダメ、そんなに深くしたら、風邪、うつっちゃう。
「んん、……んっ……やっ」
 近藤の肩を掴む手に力が入る。絡みつこうとする舌に囚われ、思考に靄がかかる。
 九ちゃんとしたキスと、全然違う。九ちゃんのキスは、もっととてもかわいらしかった。なのに、近藤さんのキス、まるで食べられてるみたい。
「ふぁ、ん」
 私、このままじゃあ、近藤さんに食べられちゃう……。
 唇を離した近藤は、とろりとした表情の妙を見つめる。
「お妙さんの舌、すごく熱いですね。大丈夫ですか?」
「ムリ……、これ以上は、熱、上がっちゃいます、から……」
 潤んだ瞳に見上げられ、近藤は苦笑する。
「お妙さん、すごくかわいいです」
 汗で張りつく前髪を梳き、微笑む。
「もう、食っちまいたいくらい、かわいい……」
 再び口づけようとした近藤と自分の唇の間に、妙は両手を差し込んだ。立ち塞がった壁に、近藤はにこりと笑う。
「お妙さん、手ェどけて」
「いやです。もう食べられたくないです」
「食べる?何言ってるんですか、お妙さん。全然食ってないですよ。こんなのは、ただ舐めてるだけって言うんです」
と、近藤は妙の首の汗を舐めとった。
「やぁ、汗舐めちゃ、だめぇ」
 甘い声で抵抗され、近藤の思考回路が分岐した。
「そんなかわいい声出されたら、もう止まりませんよ」
 片端が上がった唇は、そのまま鎖骨に口づけられ、右手は左胸を覆われてしまう。
「ダメ、近藤さん、やっ、胸、触ったらダメっ」
 鎖骨を舌先がなぞり、胸を右手が優しく揉みしだく。
「昨日は、触れって言ったじゃないですか」
と、首に吸いつく。胸の先を指先で撫でられて、体がびくびくと揺れる。
「やぁ、近藤さん、やっぱり、慣れてる、んんっ」
 硬くなった胸の先を摘ままれたまま転がされ、妙の息が上がった。熱い吐息が髪にかかり、近藤は微笑む。
「慣れてませんよ。今、すごく緊張してますから」
 近藤は妙の手を取り、自分の左胸に触れさせる。互いに速く打つ鼓動に、顔を見合わせ微笑み合う。
「汗、すごいですね。寝間着、着替えましょうね」
と、近藤は妙の腰ひもを解き、襟元を開こうとする。が、妙は慌てて近藤の両手を掴んだ。
「着替えなら、自分でできますからっ」
 近藤の前で小さな胸を晒すのは恥ずかしくて堪らない。妙は、きょとんとした近藤をじっと見つめた。薄い布一枚越しに触れた胸は、確かに手の平にすっぽり収まったが、張りも柔らかさも申し分なかった。けれど、気にしているらしい妙に、近藤は言う。
「お妙さん、大丈夫ですって。俺は、どんな断崖絶壁だって登りきってみせますから。そこに乳首があるかぎり、俺はあなたのロッククライマーになってみせます!」
 すると、妙の口元がへの字に曲がった。妙が力を入れたような顔をしたかと思えば、分身に強烈な痛みを感じる。その衝撃に悲痛な叫びは声にはならず、妙の耳元で眉間に皺を寄せる。妙は、膝を立てて近藤を蹴り上げたのだ。
「失礼にも程がありますよ。断崖絶壁って、一度ならずも二度までも」

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